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「カトリック学校における教育の宗教的次元 ―評価と刷新のためのガイドライン-」③「第三部 学校生活と勉強における宗教的次元」

 こんにちは、Salt運営員会委員の小林由加です。第三部はカトリック学校における生活と勉学における宗教的次元がテーマです。有馬会員が書かれた記事「カトリック学校の風土を考える」について、さらに深めて参りましょう。

(一)  学校生活における宗教的次元
 カトリック学校は福音から精神と力を汲む点で他校と異なります。その教育プロセスは単なる人間の活動ではなく、人間の完成に向かう真のキリスト者として成長することを目指します。それは、人間としての人格を土台に、超自然の恵みと徳と価値、さらに超自然的な呼びかけで豊かになる成長モデルです。
 特に知的活動は大切にされます。なぜなら、表面的な知識や判断では満足しない、真理への愛を駆り立てるからです。宗教的次元を大切にするとは、真の批判精神を育てることにつながっているのです。
 
(二)学校文化の宗教的次元
 人間の文化と信仰の結びつきを発見するために、宗教科の教員だけでなく、すべての教科の教員が協働する必要があります。文化の中に人間の尊厳を脅かす価値があることを見極め、それを救いのメッセージに照らしたものへと秩序づけるのが、カトリック学校の教育の特徴です。とは言え、これは諸学問の独自性と自律性を否定するものではありません。なぜならカトリック学校は次のように人間を理解するからです。

「人間とは、知性と意志、自由と感情を持ち、能動的かつ創造的に行為することのできる主体として、権利と義務の双方を授けられた存在であり、相互関係を築く能力を持ち、現実の世界にあって特別な使命を担っている」                        

 カトリック学校は、科学を宗教と対立するものとはせず、その源泉に神を見出そうとします。同じように、哲学、歴史、文学、芸術などの遺産から宗教的次元を見いだします。教員は、本物の教育哲学が人間の本性に基づくことを忘れてはなりません。それは、生徒一人ひとりの身体的精神的な能力を考慮し、彼らが社会に奉仕する主体となるよう招かれていること、宗教的次元に開かれていることを意識することです。

 具体的には、複数の教科にまたがる学習を行うことが有効です。宗教の授業で他教科の宗教的問題を扱うこと、反対に宗教の授業に他の教科の教師を招くことも良い方法です。そして、このような授業を行うと次のような生徒への影響もあります。

「このような授業があるたびに、生徒たちは教師間の協力の精神に好ましい印象を抱くにちがいない。教師全員が共有する一つの目的は、生徒たちが知識においても人との関わり合いにおいても成長していくのを援助することにある。」                

 つまり、教科を越えて、先生たちが協力している姿に、カトリック学校の宗教的次元に開かれた学校文化がありそうです。「仲良くしなさい!」ではなく、教員がまずお互いに仲良く!ですね。

参考文献
・「カトリック学校における教育の宗教的次元―評価と刷新のためのガイドライン-」(1988年公布カトリック教育省文書)解説・翻訳 浦善考、『神学ダイジェクト112号』上智大学神学会神学ダイジェスト編集委員会、2011年。
・『キリスト教的教育に関する宣言』(『第2バチカン公会議公文書全集』)サンパウロ、2001年。

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