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「カトリック学校における教育の宗教的次元―評価と刷新のためのガイドラインー」①

 こんにちは、Salt運営員会委員の小林由加です。そろそろ2学期の準備にとりかかる時期が近づいていますね。有馬委員と同じく「カトリック学校とは何か?」について考えたいと思います。

 今回は「カトリック学校における教育の宗教的次元」(1988)の第1部をご紹介します。この文章は、世界的規模で転機を迎えていたカトリック学校に向け、バチカンのカトリック教育省から出されたものです。34年前の文章ですが、色あせることなく、私たちが学校で出会う児童・生徒たちの姿を浮き彫りにしています。

 冒頭では第二バチカン公会議の『キリスト教的教育に関する宣言』(1965)から、カトリック学校の特徴は宗教的次元にあると宣言し、   以下の4つのポイントが挙げられています。
(a)教育的な雰囲気
(b)生徒一人ひとりの人格的成長
(c)文化と福音をつなげること
(d)すべての知識を信仰の光によって照らすこと

 次に、変化し続ける社会にいる若者たちの姿を次のように述べています。
・幼児期からメディアに慣れ、あらゆる話題に触れているが、知識を整理 
 し、判断する能力をまだ身に着けていない。
・真理や美・善という概念が漠然となっているので、どこに拠り所を求めて 
 良いのか、分からない。

 続いて、今日の若者は共通する特徴を持っていると指摘します。
・自分がきわめて不安定な状況の中にいると感じている。
・真の人間関係を欠いた環境の中で、愛情の欠如と孤独を経験している。
・諸価値が神に根差さず、恐れによって集団になると暴力に走ってしまう。
・人生に意味を見出せず、アルコール、ドラック、性的刺激にのめり込む。
・漠然とした連帯性を持ち、人気のある主義主張に流されてしまう。
・信仰を捨てることで、道徳的諸価値に関する良心の危機に陥る。
・宗教的空虚から、異教的カルトや薬物、若者イベントなどに逃避する。

最後に、若者たちにどのように接すれば良いかが示されています。
・若者の行動パターンを観察するだけでなく、その原因がどこにあるのかを 
 調査すること。
・肯定的なしるしを見逃さず、深い宗教的感覚を育てること。
・キリスト者としての生活を表現する(祈り・ミサなど)を否定する風潮が
 生徒にあるなら、宗教教育の内容と方法だけでなく、学校全体についての
 刷新をすること。
・青少年が持つ宗教、科学技術、文明社会、格差への疑念を理解すること。
・人のために何か価値あることをしたいとの願いに応えること。
・勉強を教えるだけでなく、若者の求めに心を向けること。

第1部は、まず生徒一人ひとりの置かれた状況を深く理解すること、その求めに真剣に向き合うようにと呼びかけています。2学期は何かを言う前に、目の前の若者たちを良く見て、新しいスタートを切りたいですね。
次回は第2部をご紹介したいと思います。

参考文献
・「カトリック学校における教育の宗教的次元―評価と刷新のためのガイドラインー」(1988年公布カトリック教育省文書)解説・翻訳 浦善考、『神学ダイジェクト110号』上智大学神学会神学ダイジェスト編集委員会、2011年。
・『キリスト教的教育に関する宣言』(『第2バチカン公会議公文書全集』)サンパウロ、2001年。


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