「漕ぐ漕ぐ漕ぐ漕ぐ」
「漕ぐ漕ぐ漕ぐ漕ぐ」
園田汐
ニンゲンってマジでよくわかんない。
わたしは自転車を漕いでいる。小雨に降られながら漕いでいる。なんかよくわからないが、最近よくニンゲンに怒られている。なんで?わからない。だってわたしって海だし。ニンゲンがなんで怒るのかなんて本当にわからない。社会とかいう狭い箱も海には狭せすぎるし。
でも、わたしは都合がいいから自転車は好き。それに関してはニンゲンの発明で許してあげてる数少ないうちのひとつ。
自転車はわたしをスピードとひとつにしてくれる。漕ぐ、ぐんっと漕ぐ、スピードが上がる、ああ、気持ちがいい、信号?無視に決まってる勝手に決めやがって止まれるわけがないだろう、クラクション?聞こえない、黙ってろ、わたしは置き去りにする。
顔に当たる雨が気持ちいい、雨のことは無視しない、わたしに当たって溶けていけ溶けていけ、ぱちぱち、とろり、さらさら、ゆらり。
漕ぐ、どうでもいい事ばかりが大事にされてるこの小さな箱から飛び出すために、わたしは漕ぐ。
ニンゲンって全員死んじゃっていいと思う。本当に。赤い信号が目に一瞬過ぎていく、漕ぐ、ぐんぐんぐんぐん、わたしは飛び出していく!
了
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