介護したくない親が要介護になった時の話 1

私は高校を卒業してから家を出て、新聞配達をしながら大学に通っていました。一番大きな理由は親が頼れるレベルになかったからです。特に父は小学校すら卒業しておらず、せっかくゲット出来たサラリーマンの立場を捨てて居酒屋を開業し、なおかつそれがまったく儲かっていませんでした。

高校生でもわかります。「この親と一緒にいたらあかん、、、、」と(実際に数年後につぶれました。数百万の借金を抱えて、実家も無くなって住み込みで借金を返していたので、私の帰る家は消えました)。

父は毒親か?と聞かれれば違うかもしれません。でも父親でもなかった。私は一度も理解しあえた事はなかったし、気持ちを聞いてもらった覚えもありません。中学生になるころには「自分には父親はいないものと考えるべきだ」と思うようになりました。

それから25年以上経って自分も家庭を持つようになり、もう親と暮らしていた時より嫁と暮らしている時間の方が長くなり、お互いそこそこ適度な距離感で暮らしていました。

私はそれまで親を介護するつもりがなかったので一切考えていませんでしたが、介護というのはある日突然やってきます。「こうなってしまったら親を引き取るしかない」と考えてしまう前に、知ってもらいたい事があります。

この記事は「親の介護についてそろそろ考えなくてはならない人」に向けてのものです。特に「親 介護 したくない」で検索するような方に対してのものです。私の体験談からなので厳密に正しいかどうかはわかりません(行政サービスの決まりや、居住区域による違い)が、すくなくともこういうものがあるよ、という参考になればと思います。

親に対して恩を感じて、老後は自分が面倒を見るよ、という「普通の感性をお持ちの方」が読むと気分を害すると思いますので、必ず引き返すことをお勧めします。

ケガ、事故から始まる介護

母が他界して7年。足が弱くなってきた父から「ベランダで転んだ」と電話がありました。「気をつけんとあかんで。」と言ってましたが、痛みが引かないので病院に行ってレントゲンを撮ると、腰椎の何番目かに亀裂が入っているという事で入院。

ここまではよく聞くような話ですが、今はコロナ禍です。病院に行っても面会が出来ません。歩けるのであれば待合場所に来ることは出来るのですが、歩けないので看護婦さんを通してしか話が出来ません。コロナの影響で新しい入院患者は個室に行かされる決まりだったので、最初は携帯電話を使っていましたが、大部屋に移ると部屋の中では携帯電話禁止。こそこそ話程度なら見逃してもらえると思いますが、耳も遠いのでそれも出来ません。

正直な話、認知症とまではいかなくても80を超えると会話が成立しなくなります。それを、看護婦さんを通して会話するしかなく、現状を把握するのが困難でした。

お金の問題

常々、父は「俺は好き勝手にやってきた」と言っていたし、実際その通りで私の為に何かを我慢したこともなく、話を聞いてもらった事もありません。私は父を親だと思ってもいませんでした。

母が残されたのであれば私が面倒を見るつもりでしたし、若いころから成人病の展示サンプルみたいな病気のオンパレード。長生きなんてするわけもないと思っていたのに、実際に残ったのは父でした。

家を出てからは就職も結婚も事後報告のみで何一つ相談せず生きてきました。それでよかったと思ってたのですが、このような事が起きてはじめて問題になるのはお金です。

平均程度の年金はもらっているらしいとは知っていましたが、父が幾らくらいの貯金があるか把握していませんでした。ベッドから動けないので私が貯金通帳や保険の手続きをしてわかったのは

貯金はほとんど無し

結局、入院費は私が立て替えて退院。すべての保険手続きをやっても若干足が出ました。

やっておかなければならなかった事1
金銭状況の把握

介護保険

入院前には「要支援2」という介護度でした。ちょっと買い出しや掃除のお手伝いをしにくる人がいる程度です。

まず理解していなかったのが、どのように介護保険を使用しているか?という事です。介護サービスは「地域包括支援センター」という高齢者の相談に乗ってくれるところがあり、そこを介してデイケア等のサービス業者と契約を結んで介護サービスを受けるのです。

重要なのは「ケアマネージャー」さんです。もし、自分の親が「要支援」等の介護度が認定されていたのであれば、どこかのケアマネージャーさんが担当しているはずです。この方の連絡先は必ず交換しておいた方がいいです。

実際に介護認定を行うのは市の担当者が状況を確認し、それをコンピュータに入力させて自動判断で介護度が認定されます。そして介護度に応じて受けれるサービスや金額が変わってきます。そういった市の担当者を呼んでくれたりするのもケアマネージャーさんです。

親の介護は必ずしも子供が行わなければならないものではありません。まずは利用できる行政サービスを正しく理解する事が必要です。

やっておかなければならなかった事2
ケアマネージャーさんとの連絡

どのように生活しているか?

あなたの親の家はバリアフリーですか?うちの親の家はバリアフリーとはとてもいえない状態で、物もたくさんありました。もちろん「ちゃんと片付けて、いらない物は捨てなよ。」と言ってきましたが、はっきり言ってそんなことがちゃんと考えられる親なら、こんな状況になってないんです。

父は市営住宅に住んでいて2DK程度の部屋でしたが結構多くの物がありました。ノートパソコン、テレビ、ブルーレイレコーダー、本、、、、、、、、、そして仏壇(母の位牌と祖父母の位牌が入っている)。

退院したからといってまともに歩けるわけではありません。コルセットをしながら、なんとか痛みに耐えて生活を送る必要があります。

さらに

「わしはもうこんな体になって動けんから、、、、、」

とか言うんです。簡単に言えば

「(自分の面倒を見てくれ、、、、、、)」

って事なんでしょう。はっきり言ってお断りです。好き勝手に生きてきた人間の責任の取り方ってものがあります。私は嫁にも「あいつを家で看るのだけは絶対に嫌だ」と言っていました。

しかしまともに歩く事も出来なくなった父をどうするのか、、、、、、?
こうなった場合に、大事なのは

「現在出来る事」と「痛みが引いたら出来るであろう事」を把握して
「どこまで出来るか?」「何が必要か?」を判断する事です。

そこでまず部屋を何とか動ける空間にする事です。「歩行器があれば何とか部屋の中で移動が出来る」事はわかりましたが、「歩行器で歩くには隙間が狭い」という点を解決しなければならなかったのです。

そこで家を隅から隅まで点検し、いる物は残し、いらない物は捨てて、売れるものは全て売り払う。元気なうちは抵抗したと思いますが、弱っているのを絶好の機会として、処分しまくりました。置き布団も使わないPCデスクも歩行器用のスペースを作る為に捨てました。冷蔵庫の配置も変えて、期限の切れた食材も捨てて、全ての所持品をチェックしました。

気づいた事は

もし死んでしまったら、それを一気にやらなければならなかった

という事です。結局、介護が始まったら自分の思った通りの生活は出来ません。この片付けも亡くなる前に事前にやっているだけです。ある意味、これは良かった事なのかもしれません、、、、、(夏休みを全部費やしたけど、、、)。

やっておかなければならなかった事3
体が不自由になる前の準備

出費の把握

自分の親が毎月どれくらいの年金収入があって、何にお金を使っているか把握していますか?私は全くしていませんでした。そもそも家族以外にお金を使える余裕もなかったので、考えていなかったのです。

骨折で入院する少し前に、父から「金を貸してくれ」という事がありました。ここでもう少しちゃんと把握するべきだった。実は骨折の前にも栄養状況が偏って体調を崩して入院していて、それが原因で出費がかさんでしまったとの事です。

実はその数年前、父は日本全国いろんなところに旅行に行っていました。それどころか海外にも行っていました。多分、ある程度の貯金はあるのだろうと思っていたのです。しかし、金を貸してくれと言われたので聞いてみると「あまり貯金は残っていない」と言われ驚きました。

そこでもうあまり使っていないインターネットやケーブルテレビを解約させて出費を減らすようには言いました。今回の入院で状況を把握すると、母が亡くなった時に残っていた貯金を全て旅行に使ってしまっていたのです。

そういえば母は生前「お父さんはあるだけ使っちゃうから、、、、」と、自分の欲しいものは我慢して、なんとか父をコントロールしながらやりくりしていました。私はそこで思いました、、、、

「ダメだ、こいつ」

私の学費も出さず、母を旅行に連れていく事もなく、切り詰めていた貯金を使い切って、私に世話になろうとしているコイツに対して怒りが溢れてきたのです。

「もう我慢する事はやめよう。好きに生きたなら、その責任も取らせないといけない」

そこで不要なサービスもすべてやめて最低限の生活に戻し、自分の状況をきちんと理解させ、自分の人生を自分の責任の範囲で終わらせてもらう。そう誓ったのです。

やっておかなければならなかった事4
自分の人生で必要な資金を理解させる事

理解させる事の難しさ

「自分の状況をちゃんと理解してるの!?」と聞くと「わからない。俺は小学校も出てないし、もう体も動かないんだから。」と返してくる。

甘えてんじゃねーよ、、、、、甘えていいのは子供か、誰かの世話をした人間だけだ。お前にその資格は無い。

家計簿をつけさせる事
貯金の把握
毎月使ってよい金額をしる事

これをやりなさいと伝えたのですが、結局まったく出来ませんでした。でも、年金が入っても下ろしに行く事も出来ないし、今後どのようにしていけばわからなかったのでケアマネージャーさんに相談すると

「みまもりサービスというものがありますよ」と言われました。簡単に言うと「高齢者の貯金を管理したり、そこから下して渡したりする事を代行してくれるサービス」です。

私は単に、「記帳と出金」に行ってくれるだけかと思ったら、「通帳も印鑑も預かってくれて、どれだけ使っていいかを管理してくれる」のです。

はっきり言って頭の悪い親は子供のいう事なんて真面目に聞こうとしません。どれだけ必要な事であっても出来ないんです。

つまりこのサービスを使うと月1000円で老人がアホな使い方をしないように管理できるのです。頭の回転の悪くなった老人にお金を持たせておいても良い事はありません。通販のカタログやTVショッピングで割高なものを買ったり、意味の無い健康食品を買ったりして困っているなら、こういう機関に預けてしまう方が良いかもしれません。(ただし要介護認定が必要で、要支援では無理でした)

誰かを自分ひとりで管理するのは非常に難しいですが、このように自分では出来ない事を、行政サービスが代行してくれるものもあるのです。

なぜ?それは、お金の無い高齢者がいると行政側が困るからでしょう。現在、国では「介護離職0」を目指しています。つまり親の介護で自分の家族を犠牲にしなくてもよい体制を作っているのです。これを利用しない手はありません。

長くなったので次回に続きます、、、、

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