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泥酔したフィッシュマンズ=トミーザグレイト?

 千鳥足でふらつきながら家路へと向かうが、記憶は綺麗に残っている。ペースを全く考えずに走りすぎてヘロヘロになりながらも、狙った獲物をしっかりと仕留めている。目を閉じているのに一度もぶれることなく綱渡りを成功させ、なぜかヘラヘラと笑って転倒し続ける。

 そんな風に宙に浮いた、地に足がついていないような。でもダンスミュージックであり、ロックである。それがトミーザグレイト。

 これだけ読むとなんだかさっぱりわからないだろうし、むしろ余計に混乱を招くかも。だけど、これが正しくも思えたりするのです。

 彼らの音楽に初めて触れたのは定かではないけれど、フジテレビの深夜(というかもう早朝)の天気予報で流れていた「トレモロ」のMVだったはず。番組名は『サウンドウェザー』ったような気もしないでもない。夜が明けるか明けないかのタイミング(これ、かなり重要かも)で耳にした(目にした)この楽曲のインパクトはものすごいものだった。なんかわからないけど、とんでもないものに触れている感じがした。そして、思った。これはアルコールまみれのへべれけなフィッシュマンズだと。時はたぶん2002~3年頃。フィッシュマンズが今のように神格化されていない時期。

 といっても、このトミーザグレイトをフィッシュマンズフォロワーとして語るのはあまりに簡単すぎるというか、安直すぎると思ったりもするのです。確かにその空気感はばっちりとあるけれど。アルバムで言えば『オレンジ』の頃に近いかもしれない。ただ、このトミーザグレイトはポストパンクの匂いがものすごくするのです。鉄錆と少しの血の匂いがするというか。静かなる暴力性? 浮遊感よりささくれ具合が先立って見えてくる音楽。それは曲名のように。60%ガレージ、30%NO NEWYORK、10%トロージャン。

 インターネットの海を泳いでいたら、2007年のインタビュー記事も出てきたのでした。その冒頭に書かれた文言。フィッシュマンズmeetsゆらゆら帝国。この例えって、まさに2024年じゃない? 今の時代にまさに求められている音楽であり、RYMなどのサイトで語られるべき音楽なんじゃ。(自称)音楽マニアにとっては避けては通れないバンドなんじゃない? だって、フィッシュマンズとゆらゆら帝国ですよ。それに石橋英子が参加ですよ。

 2024年のいま、彼らが活動しているのか。正直、僕にはわかりません。インターネットという世界を通して調べてみても、なかなか情報は出てこない(単に探し方が下手すぎるだけかもしれん)。YouTubeにはいくつかライヴ映像などがあるけれど、それだってかなり前のものであって。今やアーカイブを辿ることでしか触れることのできないバンドなのかもしれない。だからこそ、過去に生み出された彼らの音楽にひたすらに溺れていく今日この頃だったりするのです。
 
 ほろ酔い気分の時に聴くトミーザグレイトの音楽は、簡単にトベる合法ドラッグですよ。


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