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カトノタタカイ。

蚊って本当にすさまじい生き物だ。いつからそういう生き方(他者の生き血を吸って生命を維持する)をしてきたのか知らないが、相当長いこと生き永らえながら、子々孫々「迷惑なやつ」と他の生物に忌み嫌われ続けてきたのだろう。

死に至らしめる伝染病を運んでくることもあるのに、「恐ろしい存在」というよりも「うっとおしい存在」と思われがちなのは、タイミングさえ合えば一発の平手打ちで死なせることができる弱弱しい体躯を持っているからだ。だけど彼らは単体の命で生きているのではない。一匹や二匹を殺しても退治したことにはならない。

このかん、人間はありとあらゆる蚊大量殺りく器を発明してきたけれど、いまだに「ウィ~ン」の呪いから解放されず、パチンパチンと原始的なやり方でてんてこ舞いさせられている。AIがこれだけ発達した現代においてもだ。

私は蚊に刺されやすく、かつ一度刺されると跡がずーっと残る体質なので、蚊は非常に困る。ただ、もちまえの鈍感さのおかげで、ウィ~ンの中でも割とすやすや眠っている性質だ(なので怒りは主に朝起きたときにくる)。

そんな私の眠りが妨げられるのは、たいてい、隣りで寝ている人間が真夜中にいきなりバチーンと自分の頬を叩くとか、「XXXX」と放送コードに引っかかるよろしくない言葉を吐く、という行動のせいだ。ある夜などは、大きなクッションをいきなり天井に投げつけたので、いらだちのあまり正気を失ったのかと思ったが、天井にはクッションアタックで殺られた蚊の残骸がくっついていた。

どうしてこんなに蚊との戦いは不毛なのだろう、といらだちつつも、蚊が撲滅されたら人間は、というか生物も終わりだよな、と思う。分かってはいるが、耐え切れずついに大型兵器に手をつけることになる。「UVランプ吸引式蚊撃退器」なるものを、さっきポチっとオンライン購入してしまった。冷静に考えたらあり得ないくらい高額だった。

軟弱なものほど最終兵器にたやすく手をつけるのだな…と妙な真理に至ってもやっとする。