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T-SQUAREと私とフュージョン

先日、JAZZ-FUSION SUMMIT 2023という、ブルーノート東京35周年企画のライブへ足を運んだ。
出演アーティストは、CASIOPEA-P4、DIMENSION、T-SQUARE、ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラ。
J-Fusionを代表するバンドが一堂に会している。
CASIOPEA-P4、 T-SQUAREに挟まれたDIMENSIONが、MCで「中間管理職」を名乗ってしまうほどのことだ。

私はフュージョン、特に日本のフュージョンが大好きだ。
しかし、私は平成13年度の生まれ。全く世代ではない。ではなぜフュージョンが好きなのか。きっかけは母が持っていたCDだった。

初めて聴いたフュージョンのCDは、THE SQUAREのS・P・O・R・T・Sだった。宝島が収録されている、1986年発売のアルバムだ。時代は、彼らが"T"-SQUAREになる前。私が生まれる16年前。
幼少期の母の車内では、長い間このCDが再生され続けていた。殆ど全ての収録曲のメロディラインを口ずさめるくらいには。

加えて、私は小さい頃から今まで、エレクトーンという楽器をやっている。エレクトーンとフュージョンの親和性は高く、昔から今まで、エレクトーンの定番曲の中にはフュージョンも数多い。
その中でも特に、私より4、5歳上のお兄さん、お姉さんは、ちょうどJフュージョンを弾きまくった世代ではないだろうか。小学生の頃、発表会では幾度となく、スクエアのTRUTHや、DIMENSIONのBeat #5あたりを聴いた記憶がある。

私がエレクトーンで初めて弾いたフュージョンも、スクエアの宝島であった。
その頃は、私の16年間のエレクトーン人生の中で2度ほどあった、「エレクトーン嫌期」だったので、この曲を演奏しようと思ったきっかけや、どんな気持ちで演奏していたのか、そのあたりの記憶はさっぱりと抜け落ちているが。

それから、中高6年間吹奏楽部に所属していたから、宝島やOMENS OF LOVEは定番中の定番。特に私はアルトサックスを担当していたので、やはり宝島には思い入れや憧れがあるものだ。

改めて振り返ってみると、音楽に於ける私の軸は、ずっと宝島に支えられていたのかもしれない。


しかし、最初に聴いたフュージョンこそスクエアだったものの、正直なところ、特段熱狂的なスクエアファン、というわけでもないのだ。
もちろん、総じてスクエアの楽曲の雰囲気は好きだし、聴いていたアルバムの収録曲以外にも、知っている曲や好きな曲は何曲かある。しかし、あくまで何曲か、だ。

そういえばフュージョンのライブに行ったことがないな…という気づきと、出演者欄に連なるビッグネーム。それだけのことで、JAZZ-FUSION SUMMIT 2023 に行くことを決意した。
1番の目当ては、勝田さんの力強いサックスの音色や、パワフルな楽曲で私を魅了する、DIMENSIONだった。だから、DIMENSIONの出番が終わった時の私は、完全に油断していたのだ。

T-SQUAREが舞台に現れ、少し経った頃に演奏されたとある一曲が、私の心を掴んで離さない。ライブが終わって1週間が経とうとする今でも、気を抜くとすぐにこの曲が頭をジャックしてくるのだ。

その曲は、「CLIMAX」。今年発売されたアルバム、『VENTO DE FELICIDADE 〜しあわせの風〜』の中の一曲だ。新旧メンバー&スペシャルゲスト&若手サポート参加の特別盤ということで、この曲の作曲者も、旧メンバーの河野啓三さん。

ライブに行くまでこの曲を知らなかったのに、昔からずっと知っていたような、切なさすら感じるほどの愛おしさ。楽しさを感じながら、それと同時に胸の奥がぎゅっと締め付けられるような感覚にも陥る。しかし、全く不快感はない。寧ろ心地良い。

今まで気づいていなかっただけで、ずっと、私の根底の部分を築き上げたのは、彼らの音楽だった。
彼らの音楽は、私のこころの宝島に、ずっと、ずっと、存在し続けていたのだ。

T-SQUAREは、自分が想像していたよりも、自分にとって大切な存在であった。
あのライブを見た時間は、間違いなく、私の人生に何度か訪れるであろう"クライマックス"の一節になるだろうなあ。

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