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2022.8.24 フランス王室が1000年以上男系を維持できたカラクリ

皇室関連の記事を書くのは1ヶ月ぶりとなり、前回は『男系継承を維持する「血のスペア」』を公開しました。

さて、現在の皇室は、男系継承者の維持が難しいのは、側室が置かれなくなったからだとする見解があります。

明治天皇の時代まで側室が置かれましたが、それ以降は置かれていません。

この見解は正しいのですが、それだけが理由で、継承者維持の困難さが生じているわけではありません。

というのは、側室がいなくとも、男系男子の継承が長期間続いた例があるからです。

それが、フランス王室です。

ヨーロッパの王候貴族は、側室を持たない代わりに公妾を持ちました。

側室と公妾が決定的に違う点は、その子が地位や財産などの継承権を持つか持たないかです。

側室の生んだ子は継承権を与えられるのに対し、公妾の生んだ子は継承権を与えられません。

アジアでは、王の種でありさえすれば、誰の腹から生まれた子であれ王の子として扱われました。

しかし、ヨーロッパでは、妾の子は王の正式な子として扱われず、王位継承権や財産相続権も認められませんでした。

妾の子は王から爵位を授かって、一貴族となるのが通例でした。

アジアでは、側室制のあるお陰で、皇帝や王に何十人も子供がいるのは普通でした。

皇帝や王自身が健康でありさえすれば、男系子孫をいくらでも残すことができ、継承者が途絶えることはありませんでした。

側室制によって、男系子孫を絶やさないようにしたことは、貴族や武家も同じです。

一方、ヨーロッパの王室は、公妾に子をたくさん生ませたとしても、その子には王位継承権はないため、皇后と王后の出産にのみ、王統の継承が掛かっていました。
ちなみに、現在、側室を持たない日本皇室も条件は同じです。

当然、后によっては子供が無かったり、女子しかいないということが度々起こりました。

夫婦の不仲などで、子ができないこともありました。

そういう状況で、男系継承にこだわると王統が断絶してしまうため、女系継承を認めざるを得ず、王統の継承の安定を図ったのです。

その結果、ハプスブルク家の婚姻政策による、王位乗っ取りのようなことが頻発しました。

それでもフランス王室は、男系男子の王位継承を800年以上維持しました。

987年にユーグ・カペーがフランス王位に就いてから、フランス革命でルイ16世が1793年に処刑されるまでの期間です。

その後の王政復古を経て、国王ルイ・フィリップが、1848年の二月革命によって廃位されて、フランス王政が終わってからも、フランス王統の男系男子の血筋は今日まで続いています。

つまり、1000年以上続いていることになります。

現在、フランス旧王家オルレアン家の当主ジャン・ドルレアンが、名目上のフランス国王ジャン4世となっています。

フランス王室が男系継承を維持できた最大の理由は、直系子孫にこだわらず、遠縁の男系子孫にも王位継承権を拡げたからです。

フランス王室も嫡出の男子が途絶えることがあり、その度に王家の血を引く遠縁の男系子孫を連れて来て、王位を継がせました。

この例からも、側室制がない場合、現在の日本皇室もそうですが、男系継承の維持のためには世代を遡り、分家から男系子孫を継承者に据えるという方式が有効であることが分かります。

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