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「不思議な薬箱を開く時」

こんにちは!
「不思議な薬箱を開く時」です。
歴史に埋もれていた処方箋は、たくさんあります。
発見されたとしても、実際に調剤する人は、
滅多にいないでしょうが、
かなり詳しく、調剤料や調剤法が書き記されていることが、
多々あるのです。
では、今日も、お薬箱を開けてみましょう。

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お薬番号・22
「兎になる薬」

兎は、豊かな繁殖力、家庭平和、子孫繁栄のシンボルです。
魔女は、よく変身する動物として、兎を選びます。
足の速さ、機転が良く利くなど、理由はさまざまですが、
古代から、兎は、肉も皮も重宝されていましたから、
豊穣の儀式や、子授けの儀式、恋愛の儀式にも、
よく使用されたものです。
この兎になる薬は、ドイツの地方都市で発見された、
「マダム・ホッレの薬帳」に記されていたものです。
マダム・ホッレは、田舎町の賢女、
いわゆる魔女であったのですが、
彼女の薬草知識は、とても深く、
人々に信頼されていたようです。
しかし、御他聞に洩れず、魔女狩りの嵐の犠牲者となり、
彼女が生涯かけて書き記した薬草の記録だけは、
あっさりと教会側が取り上げて、利用していたというわけです。
司教や司祭が兎になって、夜遊びをしていたという記録も、
無きにしも非ずですが。
では、調剤料をご紹介しましょう。

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「兎になる薬」処方

ナルドの香油・・・・・・・・・・・・・・・・10㏄
ガルゲンメンライン・・・・・・・・・・・・・1本
アップフェルヴァイン・・・・・・・・・・・・20㏄
カモマイルの煎じ汁・・・・・・・・・・・・・20㏄
イヌバラの花弁・・・・・・・・・・・・・・・8枚
妊娠している兎の乳・・・・・・・・・・・・・5㏄

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用法
ガルゲンメンラインは、入手がなかなか困難と思われます。
現代においては、絞首刑が野外で行われるなんて、
どこかのお国にでも行かないと、無理ですからね。
人工的に、栽培するという手もありますが、
そうなりますと、調剤料製作のための方法として、
罪人(男性)、約一名、首吊に適した人気のない場所、
丈夫なロープ一本を付け加えなくてはなりません。
それさえ揃えば、あとは、なんとかなりそうですね。
あと、出来上がった薬は、純金の杯かコップで飲んでください。
効果が長持ちします。

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備考欄
下手をすると、ガルゲンメンラインのために、
手が後ろに回りかねない危険を冒してまで、
兎になりたいか?
実は、この薬には、もうひとつの効果が隠されています。
兎は、幸運を左右する力があるとのこと。
運命の女神を翻弄させる力があるのです。
兎に変身して、野原を駆け巡る爽快さや、
可愛い家族を野生に持ってみるという経験など、
現実的な快感もあるのですが、
一番は、この幸運に対する効果でしょう。
精力も若者のように溢れ返り、
子宝にも恵まれ、財産も増える!
子々孫々、繁栄を約束されるとしたら?
これは、罪人の一人や二人、吊るしたくなりますか!

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