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イグアスの滝を確認した日

2月18日

早朝、私と友人はサンパウロの空港に着いた。お世話になった現地在住の知人に別れを告げて、イグアスの空港へ飛ぶ。フライトは1時間半程度であっという間だったが、空港を出て感じる空気はサンパウロとは違った。

暑い。サンパウロも暑かったが、イグアスは桁違いに暑い。太陽がなりふり構わず照り付けてきて、街を歩くとすぐに汗が滴った。そしてホテルのフロントいわく、これくらいの天気はいつも通りのイグアスだというからさらに驚いた。もちろんこの太陽の下を歩く人は少なく商店街は閑散としている。これでは路面店の売り上げもなかろうと勝手に心配をする。

暑い暑いと文句を垂れながらもしばらく歩き回ると、果物を量り売りするお兄さんがいた。私が写真を撮っていいか聞くと大振りのブドウを取り上げて笑ってくれた。買おうかと迷ったが彼は何をすすめるでもなくあっさり去っていき、この街の商売の謎が一層深まった。

容赦ない熱量に根負けしてショッピングモールに逃げ込む。冷たい空気に迎え入れられ、人工的な空間でしか生きられない己が貧弱さを笑う。モールの中にはそれなりに人がいた。そんなこんなで一日が終わった。

2月19日

「確認する旅」というフレーズを知ったのはどこだっただろう。旅行とカメラの普及によって旅は写真で見たものの実在を確認する時間になった、というような文章をどこかで読んだ。そしてイグアスの滝での私の経験は、それだったと思う。

この日はツアーだったので、車がホテルまで迎えに来てくれた。国内旅行のブラジル人が半数、他が半数。ポルトガル語や英語の飛び交う車で私たちはイグアス国立公園に向かった。ゲートを越えて車を降りた先では、木々の中で白い糸が垂れるように滝が流れている。奥まで広がる森もまた壮観だ。

さらに歩くとさらに滝は太く多くなっていった。そして30分以上歩いただろうか。それまでは聞こえなかった音が聞こえた。

文字にしたら「ごー」だろうか、とにかく濁点がつく音だ。ついにメインの滝に来た。写真で見たのと同じ光景が目の前に広がった。

もちろん現実は写真よりも遥かに情報が多い。水しぶきを感じ、滝の轟音を聞いた。それから多様な言語が飛び交っていた。しかし目の前に広がるのはやはり有名な光景であり、そこで写真を撮ってもやはり見たことのある写真にしかならなかった。自分は何をしに来たのか、わからなくなった。ただ、写真に見た光景が現実にあることを確認した。あまり心は踊らなかった。

ちなみにこの日の思い出として記憶に残っているのは、一緒に行った駆け出しYouTuberの友だちの撮影に付き合ったこと。こっちの方がよほど新鮮だった。私のどうやら新しいもの好きらしい。



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