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マツリカ中谷氏が吠える!セールスイネーブルメントをはじめたければこれを読め!!

こんにちは。イノベーションの池上です。今回は、株式会社マツリカの中谷真史さんに『セールスイネーブルメントのはじめ方』について聞いてみました。

この記事で分かること
・セールスイネーブルメントをはじめる前に気を付けたいこと
・セールスイネーブルメントのはじめ方
・セールスイネーブルメントを成功させるポイント
・セールスイネーブルメントの可能性

中谷真史さんの紹介

中谷 真史(なかたに まさふみ)
株式会社マツリカ 執行役員
Sales Science Lab, Inc. CEO
法人営業デジタル化協会


慶應義塾大学経済学部卒業後、外資系製薬企業へ入社しMR約1,000名中トップセールスを経験。その後コンサルティングファーム2社にて、セールス分野のプロジェクトを中心としたコンサルティングに従事。 2018年、セールステックスタートアップのマツリカへ参画しカスタマーサクセスマネジメント統括、セールス統括を経て執行役員に至る。 『セールスというアートをサイエンスし、日本の営業をアップデートする』をモットーに活動し、年間約30回の講演のほか書籍も執筆中。また平行し、Sales Science Lab, Inc. を創業しCEOを務める。

セールスイネーブルメントをはじめる前に気を付けたいこと

みなさん、セールスイネーブルメントをはじめる前に「セールスイネーブルメントとは」などでWeb検索されるのではないでしょうか。
もちろん、それが自然な行為だと思います。
その何たるかを知らなければ、取り組むことはできません。

そんなときに気を付けてほしいことがあります。
残念ながら、サービス提供者等がポジショントークをしたいがため、自社に有利な偏った情報だけを発信していることをよく目にします。
まずは正しい情報を得ることが大切です。

僕から言えることは一つです。
セールスイネーブルメントとは『教育です』『資料共有です』『コンテンツ管理です』って言ってる情報を鵜呑みにしてはいけません!!

セールスイネーブルメントとはそんな狭い概念じゃないんです。営業組織をスケールするもっと広く、強い概念なのです。

ポジショントークなしの「セールスイネーブルメントとは何か」を知りたい方は、日米から計10の書籍やレポート(論文)等の文献から、共通して言われているポイントをまとめた記事がありますので、ぜひご覧ください。

それでも、ポジショントーク入ってるでしょ?と思う方は記事下の参考文献に飛んでいただければ大丈夫です!

今回の記事を読み進めるために必要なポイントだけこちらにまとめておきます。

◆セールスイネーブルメントとは
セールスイネーブルメントとは、「狙って営業成果を向上させ続ける仕組み」である。

◆セールスイネーブルメントの構成
セールスイネーブルメントは、2つの前提と6つの要素とPDCAの仕組みで構成されている。
【大前提】
1)営業活動のプロセスをバイヤージャーニーに最適化すること
2)会社全体、もしくは経営管理層が強くコミットすること
【各構成要素】
1)顧客の意思決定プロセスに合わせた営業プロセスの再構築
2)テクノロジーによるデータプラットフォーム構築(CRM等)
3)組織コレボレーション(分業と組織間連携)
4)マネージャー強化(コーチング等)
5)トレーニング(育成)
6)コンテンツ整備(営業資料等)

【図解】『Sales Enablementとはいったい何なのか』なかたに@Sales Science Lab

セールスイネーブルメントのはじめ方

さて、セールスイネーブルメントが何かを知ることができたら、はじめてみたいと思う方いらっしゃいますよね。

その前にやることがあります。営業活動の可視化はできていますか?
具体的に言うと、SFA(CRM)を使いこなせていますか?

断言します。
SFAすら使いこなせない営業組織にセールスイネーブルメントは無理!!

セールスイネーブルメントはデータを検証して、新しい施策を考えることが大前提になります。
そもそもSFAを使いこなせていないと、まともに検証できるデータが収集できないので、セールスイネーブルメントをはじめる前提に立てないんです。

ということを踏まえて、セールスイネーブルメントのはじめ方を解説していきます。

◆セールスイネーブルメントのはじめ方
Step1|セールスイネーブルメント推進者を決める
Step2|営業プロセスの「型」をつくる
Step3|仮説を立て、データを収集する
Step4|データを分析し、課題を特定する
Step5|施策を立案し、実行する
Step6|Step4とStep5を繰り返す

Step1|セールスイネーブルメント推進者を決める

セールスイネーブルメントが語られるとき、専任者が必要かどうかがよく議論されます。私としては、セールスイネーブルメント推進者は専任者もしくは、マネジメントに専任できている(いわゆるプレイングマネージャーではない)営業マネージャーを据えた方がよいと考えています。

経営者は10年後を、投資家は5年後を、マネージャー職は1~3年後を見て生きているとよく言われますが、営業パーソンは最も”現在”を生きている人種と言えるでしょう。そして、営業組織は”現在価値”主導型の組織です。

セールスイネーブルメントを進めるためには、営業活動全体を客観的に俯瞰することが必要となります。”現在”の成果を追いかける現場の営業パーソンやプレイングマネージャーがその役割も果たすのは、かなり難易度が高いと感じます。

そのため、セールスイネーブルメントのファーストステップとして、つぎのような特徴の人材を推進者に任命することをお勧めします。

◆セールスイネーブルメント推進者に向いている人の特徴
・営業に対する深い知見がある(プレイヤーとしての成果は必ずしも必要ない)
・客観的に事実を捉えられる
・データ分析や仮説立案ができる
・構造化して物事を考えられる
・学習意欲が高い
・営業マネージャーと対等に連携ができる
・自らの間違いに気付き、修正できる

Step2|営業プロセスの「型」をつくる

セールスイネーブルメントで一番重要なことは、顧客の購買行動に合わせた営業プロセスの「型」をつくることです。
つぎの図のように顧客の購買行動に合わせた営業プロセスを再構築し、具体的にどの営業フェーズ(アポ獲得、初回商談、2回目商談、クロージングなど)で何を伝え、何を把握し、何をアクションするかを決めて、「型」をつくりましょう。
※ここでは営業プロセスの話をする際、敢えてイメージしやすいよう営業から見たプロセス(初回商談、提案、など)でお伝えします

「型」のつくり方を詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

Step3|仮説を立て、データを収集する

営業プロセスの「型」ができたら、その定義された「型」の中でボトルネックになっている要因がどのプロセスにあるのか仮説を立てます。その上で仮説検証ができるよう、データを収集します。

例えば、以下の案件進捗において、提案率がボトルネックになっていると仮説を立てた場合、初回商談前~提案までの営業活動を検証できるようにデータを収集します。

◆仮説とデータ収集の例
【仮説】
提案率にボトルネックがある

【収集データ】
・初回商談時における決裁者同席有無(商談の属性情報)
・初回商談時ネクストアクション設定有無(活動の情報)
・その他、顧客や案件における基本情報(顧客の属性情報)

Step4|データを分析し、課題を特定する

収集したデータを分析し、課題を特定します。

例えば、提案率にボトルネックがあるという仮説の場合、以下のような分析と課題特定が考えられます。

◆データ分析と課題特定の例
【データ分析】
成果のよい人とその他の人で
・初回商談時における決裁者同席率に差がないか→差はない
・初回商談時ネクストアクション設定率に差がないか→差がある
・案件の金額に差がないか→差はない

【課題の特定】
分析により、成果のよい人とその他の人で差のある営業プロセス=初回商談時ネクストアクション設定率が課題

Step5|施策を立案し、実行する

課題が特定できたら、課題に対する施策を立案し、実行します。

例えば、初回商談時ネクストアクション設定率が課題の場合、以下のような施策が考えられます。

◆施策の立案・実行の例
【施策】
・営業パーソンに「初回商談時のネクストアクション設定有無」が提案率に寄与していることを説明
・今後は初回商談時にネクストアクションを設定するように促す
・初回商談時に使用する商談資料の最後のページに「次回に向けて」などの項目を作り、ネクストアクションの設定をしやすいように工夫する
・初回商談時に使用する商談資料の改訂内容、目的、利用方法をトレーニングする

Step6|Step4とStep5を繰り返す

とにかくデータに基づき、PDCA繰り返すことに尽きます。

セールスイネーブルメントを成功させるポイント

セールスイネーブルメントでよくつまずくポイントがありますので、事前に把握しておきましょう。

◆セールスイネーブルメントをはじめた時によくつまずくポイント
1.ツールを使えばなんとかなると思っている
2.集めたいデータがちゃんと集まらない
3.やろうと思ったけど優先順位が上がらない

ツールを使えばなんとかなると思っている

とりあえずCRMやSFAを導入した。だからなんとかなるだろうと思っているとうまくいきません。ツールは手段なので、使う目的とルールを決める必要があります。

厳しいことを言います。
仮説のないデータに価値はない!それはゴミだ!!

集めたデータを活かすためには、まずは「型」と「仮説」が必要です。つまり、特定の「型」に当てはまった状態で、データを集める必要があるのです。

「型」によって「データ」を有効化するということを肝に銘じる必要があります。

集めたいデータがちゃんと集まらない

営業活動のデータを集めるためには、営業パーソンにデータを集める目的ときちんと納得してもらい、行動してもらう必要があります。
集めたいデータがちゃんと集まらない、営業パーソンがSFAにデータを入力してくれないといった状態になったら、つぎのことをもう一度見直しましょう。

◆集めたいデータがちゃんと集まらないときに見直すポイント
1.集めるデータと集めないデータの取捨選択ができていますか?
→解決したい課題を分析するために必要な最低限のデータを定義しましょう。目的のないデータを集めることはゴミを集めているのと同じです。まずは5項目くらいからはじめるとよいと思います。

2.データを集める目的と必要性を現場の営業パーソンに理解してもらっていますか?
→営業マネージャーから現場の営業パーソンに説明をしてもらうことをお勧めします。

もう一度言います。
SFAすら使いこなせない営業組織にセールスイネーブルメントは無理!!
肝に銘じてください。

やろうと思ったけど優先順位が上がらない

セールスイネーブルメントをはじめよう!じゃあ営業マネージャーお願いね。となった時、営業マネージャーがプライヤーもする、マネージャーもする、イネーブルメントもするっていうのは、普通に考えてムリです。

なので、本気でセールスイネーブルメントをやろうと思うなら、専任を置きましょう。専任が難しければ、イネーブルメント業務の時間を確保できるように、まずはリソースの分配を実施しましょう。

言いたくないけど、言います。
「セールスイネーブルメントをはじめたい。」それ本気ですか?何のためにはじめますか?じゃあどうやりますか?本気でコミットできますか?
取組むと決めたのなら、本気でやる覚悟なしでは、頓挫しますよ!!

セールスイネーブルメントの可能性

僕はセールスイネーブルメント、セールステックの業界に並々ならぬ熱い想いがあって、少々尖った発言をしたりしてしまいます。
今回もちょっと吠えちゃいましたが、良心に従って正しい情報を発信したいという想いからだということをご理解ください。

そして、セールスイネーブルメントは今後さらに可能性が広がっていくと思います。
セールスイネーブルメントは営業パーソンひとりの成果だけではなく、営業組織の成果を上げ続ける仕組みです。
すごくスケーラビリティがある、拡張性が高いものです。

自分が1行ったことに対して、成果が10になって返ってくる…そんなスキームが作れたら、すごくないですか?

そんな売れる仕組みを作り上げ、テクノロジーの力を駆使して効率的に成果を上げていくことができる営業パーソンは、市場価値が高まっていくと考えています。

最後に言っておきたいことがあります。
セールスイネーブルメントとは、顧客のニーズに応え続けるために経営努力として必要な取組みなのです!!

営業はものを売るだけの仕事ではありません、顧客の課題を解決することがミッションです。顧客のニーズが変化していく時代だからこそ、変化に対応できる仕組みづくりをしていきましょう。

この記事のまとめ

今回、中谷真史さんに伺ったポイントをまとめます。

中谷さんの吠えのまとめ
セールスイネーブルメントとは『教育です』『資料共有です』『コンテンツ管理です』って言ってる情報を鵜呑みにしてはいけません!!
SFAすら使いこなせない営業組織にセールスイネーブルメントは無理!!
仮説のないデータに価値はない!それはゴミだ!!
「セールスイネーブルメントをはじめたい。」それ本気ですか?何のためにはじめますか?じゃあどうやりますか?本気でコミットできますか?取組むと決めたのなら、本気でやる覚悟なしでは、頓挫しますよ!!
セールスイネーブルメントとは、顧客のニーズに応え続けるために経営努力として必要な取組みなのです!!

この記事のまとめ
・セールスイネーブルメントをはじめる前に気を付けたいこと
セールスイネーブルメントに関する正確な情報を入手しましょう。

・セールスイネーブルメントのはじめ方

Step1|セールスイネーブルメント推進者を決める
Step2|営業プロセスの「型」をつくる
Step3|仮説を立て、データを収集する
Step4|データを分析し、課題を特定する
Step5|施策を立案し、実行する
Step6|Step4とStep5を繰り返す

・セールスイネーブルメントを成功させるポイント
つぎのようなセールスイネーブルメントをはじめる営業組織がよくつまずくポイントを理解し、対策を打ちましょう。
1.ツールを使えばなんとかなると思っている
2.集めたいデータがちゃんと集まらない
3.やろうと思ったけど優先順位が上がらない

・セールスイネーブルメントの可能性

顧客のニーズが変化していく時代だからこそ、変化に対応できる仕組みづくりが必要。セールスイネーブルメントは営業パーソンひとりの成果だけではなく、営業組織の成果を上げ続ける仕組みである。

資料を活用する営業プロセスのイネーブルメントを支援するセールステック『Sales Doc(セールスドック)』をご存じでしょうか。お客さまが営業資料を見ているのか、どこを見ているのかを分析し、顧客ニーズに沿った営業活動を実現したい方はこちらをご覧ください。

インタビュアー自己紹介

池上 朋子
2021年7月、株式会社イノベーション入社。
セールスイネーブルメントツール「Sales Doc(セールスドック)」のマーケティング担当。
セールステック業界ド新人の視点で「法人営業ってかっこいいな」を伝えていきたいと思っています。
Twitter|@tomoko_ikegami