どうしてスモールビジネス起業がうまく行かないのか?よくある失敗と成功するためにやるべきこと。
山田敏明32歳、最近スモールビジネスオーナーになりたいと考えている。だけどカネもコネもない。唯一あるのは自分の体と知識だけ。
そんな自分でもできる事業かぁ。コーチングかコンサルみたいな労働集約型の事業かな。属人性は高いけど、文句を言えるような立場じゃない。とにかく、気合を入れて頑張ろう。
ーー数日後。
沢山のノウハウをインプットしてきたから知ってるぞ。とにかく見込み顧客を集めて商品を売ればいいんだよな。
あーでも、どんな商品を作ればいいか分かんないな……。そうだ、noteでメンバーシップを始めよう。月額500円くらいなら安いから購入のハードルも低いはず。しかもサブスクで安定収益につながる。
よし、そうと決まったら早速メンバーシップの設計をするぞ!
商品コンセプト、PoX分析、5C分析、ビジネスモデル、集客の導線、その他もろもろ設計していこう!
ーー数週間後。
できた!これで完璧だ。Xのフォロワーが800人いるし月額500円のサブスクだったら結構な人数が参加してくれるんじゃないかな。
noteのメンバーシップ申請も通ったし、いよいよスモールビジネスオーナーとしての第一歩がスタートだ!
夢を抱いてスタートした事業。儲かるといいですよね。
しかし私の経験から言わせていただくと月に50万円以上売り上げる事業ができる確率は1%未満だと思います。まぁ、ほぼうまく行かないということ。それがリアルです。
こんな短い架空のエピソードですが、起業においてほぼ確実に失敗する要素が含まれていたのです。
今回は冒頭のエピソードからどこがいけなかったのか?を解説したあとにどうすれば成功させることができたのか?ということを考えていきます。
地雷ポイント1. 参入する場所を間違える
ココが最初の地雷ポイント。noteメンバーシップは素晴らしい機能なのですが、参加者を集めるのが相当難しいです。
実態はこんな感じ
スモールビジネス大全ではメンバーシップ機能リリースとほぼ同時期に生データ(各メンバーシップの参加者数、価格、内容など)を集め続けてきました。
スモビジ大全購読者である、あなたには特典として収集している生データを公開しています(以下は2024年2月分)。
これらの生データを見れば分かりますが、参加者が1000人を超えているメンバーシップは片手で数えられるほど(人数非公表のメンバーシップもありますから実際にはもう少し多い)。
しかし、1000人以上を集められるメンバーシップは本当にごくわずか。私の感覚ですがnote全体でみても30個も存在しないんじゃないかなと思っています。
そして、人数の多いメンバーシップの主催者は基本的に別SNSで既に大量のフォロワーを抱えている人たちです。
つまり、noteのメンバーシップで一旗揚げるのはほぼ無理ゲーということ。
それがメンバーシップ機能リリースとほぼ同時に生データを集め続けてきた私の結論です。
目的を達成するためには、どのくらいのフォロワー数が必要か?
noteメンバーシップで恐らくTOPの人数を集めている後藤達也さん。Xフォロワー約65万人に対して、メンバーシップ参加者約3万人。フォロワーの約4.6%が購読。
左ききのエレンのメンバーシップ。作者のXフォロワー約7万人に対して、参加者約3300人。フォロワーの約4.7%が購読。
配当太郎のメンバーシップ。Xフォロワー約15万人に対して、参加者約1300人。フォロワーの約0.9%が購読。
山口周さんのメンバーシップ。Xフォロワー約18万人に対して、参加者約1200人。フォロワーの約0.7%が購読。
まぁ、めちゃくちゃ甘く見積もってフォロワーの約5%が購読してくれるとしても1000人の購読者を獲得するためには2万人以上のXフォロワーが必要。
勘違いしないでくださいね。甘く見積もって、ですからね。
例外:○○を利用すれば話は変わる。
自分の作るコンテンツに自信がある人限定ですが、定期購読マガジンであればメンバーシップよりも伸ばしやすいイメージがあります。
ただし一定水準以上のコンテンツを定期的に更新し続けるのは普通の人には無理。メンバーシップであればオフ会やコミュニケーションでカバーできますが、定期購読マガジンはそれができません。
なので、メンバーシップも定期購読マガジンも普通の人にはかなり難易度が高いってことですね。後半で説明しますがインターシップや定期購読マガジン自体で売り上げを狙うのでなければ、かなり良い選択肢になることもあります。
地雷ポイント2. 安いから購入のハードルが低いと思っている
これはめちゃくちゃよくある失敗です。
スモールビジネス大全読者である賢明なあなたは「安くしたら売れるってもんでもないやろ、むしろ高くした方が利益には好インパクトあるぞ」と思っているかもしれません。
しかし未だにほとんどの起業家・経営者はそんなこと知りません。「価格を下げればみんな嬉しいし、もっと売れるはず」と本気で思っています。
売れない理由を価格に転嫁するのは簡単ですからね。ただ、価格が安いから購入してもらえるはずというのは、幻想にすぎません。
顧客は安いから買うのではない。
顧客は欲しいモノを買うのであって、安いものを買うわけではないんです。
「全く興味のない商品だけど、安いから買っちゃおうかな!」なんて行動をとっている人を回りで見たことがありますか?モノが増えて家がゴミ屋敷になりませんか?
正しい理解は「もともと欲しかったけど、1万円で売られていてなかなか手が出せなかった。今回セールで安くなっているから買おう」なんです。
元々欲しかったのです。「安くなっているから買おう」ではありません。お客様に欲しいと思っていただけない商品は500円でも売れません。
一体いくらにすればよかったのか?
価格についてのことはプライシング大全で解説しているのであまり踏み込みませんがプラットフォームを利用する場合は相場観が非常に重要になってきます。
相場観を理解したうえで上限ぎりぎりの金額を設定するのが正しい行動。
noteのメンバーシップで言えば500円~1000円がボリュームゾーン。ここで安いからと500円を選ぶようではいけないのです。
あなたが想定する顧客を考えてみましょう。月額500円と月額1000円の商品を購入するときに2倍悩む人がどのくらいいるでしょうか?成約率に大きな影響が出るでしょうか?
私の感覚で行くとnoteメンバーシップに課金する人は500円でも1000円でも大きく成約率は変わりません。つまり、単純に考えると月額500円にした場合、同じ売上を立てるためには月額1000円のときよりも集客数が2倍必要になるということ。
これはかなりハードモードです。安くすればいいわけじゃないことを体に覚えこませてください。
地雷ポイント3. サブスクが安定収益につながると思っている
大幻想。サブスクリプションモデルで安定収益につながるなんて大嘘。業務プロセスにがっちり入り込んで数年以上解約されないツールの話。
デジタルコンテンツやメンバーシップだとそこまで甘くありません。次のグラフが現実。
教育系のサブスクリプションサービスの月次解約率中央値は6.7%。これでもよくなった方です。2018年1~12月で算出した時は月次解約率の中央値は10%を超えていましたからね。
このリアルなデータからLTVを算出してみると?
月次解約率中央値6.7%を採用して、月額500円のメンバーシップのLTVを計算してみましょう。解約率をrとしたときユーザーの平均継続期間は$${\frac{1}{r}}$$で求められるので平均継続期間は$${\frac{1}{0.067}=14.9か月}$$。
$${500円/月×14.9か月=7450円}$$。つまりユーザー一人当たりのLTVは7450円となります。ここからさらに決済手数料(5%~15%)とメンバーシップ手数料10%を差し引いたものがLTV(粗利益)になります。
全てクレジットカード決済(手数料5%)で購読されたと仮定した場合、LTV(粗利益)は6369円。
14.9か月役務提供をしてやっと得られるLTV(粗利益)6369円
ユーザーを一人獲得すると平均14.9か月継続してくれる。そして一人当たりのLTV(粗利益)は6369円。こう聞くと「お、なかなかいいじゃん」と思うかもしれませんね。
しかしよく考えてください。noteのメンバーシップは売って終わりの商品ではありません。むしろ売ってからがスタート。
定期的にコンテンツを更新する、メンバーとコミュニケーションをとる。それを繰り返してやっと月次解約率の中央値が狙えるんです。14.9か月役務提供をしてやっと得られるのが6369円の粗利益。
「で、でもコンテンツは1:n構造で伝えることができるから人が増えるほどに旨味が増すでしょ?」
密なコミュニケーションを売りにせず、"コンテンツをメインとするモデルの場合であれば"人が増えるほどに旨味は増えていきます。間違いありません。
ここで問題になるのが最初の地雷ポイントで説明した厳しい現実。メンバーシップで人を増やすのが難しい、につながります。人を増やせば旨味がある事業だけど、人を増やすのがハードモード。厳しいですね。
もっと厳しいことを言いましょう。
売上を一瞬で飛躍させるビジネスモデル変更
サブスクリプションモデルを採用せずとも売上を一瞬で飛躍させるビジネスモデルがあります。それがコンテンツの単品販売。
仮に1万円で渾身のコンテンツを販売したとしましょう。粗利益は8550円です。一瞬でサブスクリプションモデルのLTVを凌駕しました。
しかも、コレはLTVではなくただ一つ商品を買ってもらっただけ。コンテンツの質が高くリピートしていただければLTVは更に跳ね上がります。
言いたいことは分かりますよ。
「情報商材屋感がでて嫌だ」って思うんですよね。
別に必ずそうしなければいけないと言っているわけではありません。はるかに儲かる可能性が高い道があるよ、と現実を伝えているだけです。
14.9か月間コンテンツを定期更新し続ける。メンバーとコミュニケーションをとり続ける。この労力をコンテンツ作成に費やせば、情報商材屋感を前面に押し出すことなく1万円で売れるレベルのものが完成するとは思いますけどね。
もし興味が湧いた人が居れば炎上しない商材のつくり方の記事なども読んでみてください。定期購読している人であれば追加課金なしで読めます(2024年3月時点)
他にもコンテンツをクリーンに販売する方法について参考になる記事がいくつかあるので興味がある人はぜひ読んでください。
99%の人は継続できない
スモールビジネス大全は2021年7月からスタートして2年半以上が経過しました。この2年半の間に、「なんか儲かってそうやな」と嗅覚の良い人たちが何人も参入してきました。
しかし、続いているのはこのスモールビジネス大全だけ。あとから参入してきた人たちは1年もたたないうちに撤退していきました。
一本や二本良いコンテンツを作ることは難しくありません。ただ、一年以上継続するとなるとそれだけで難易度が跳ね上がります。
一つ断言できることは「コンテンツ販売で稼ぎたい」と思っているような人には無理ってこと。
ここまで言われてもまだ「サブスクリプションモデルをやってみたい」と思う人は止めません。「正攻法でボロ儲けできるサブスク型スクール事業のつくり方~相性の悪い業態で客単価を6.4倍にするビジネス設計」を参考にして少しでも成功する確率をアップさせてください。
「儲からないよ」と言っているサブスク事業を続けている理由については過去に書いたので気になる方はぜひ読んでください。
地雷ポイント4. 見込みが甘すぎる
見込みが甘い。パイン缶の汁くらいあまい。
ただ、実際に稼働させてみればすぐに「見込みが甘かった……」と理解できますし、初期コストが莫大にかかる事業でもないので致命的なミスではないですね。
地雷ポイント1でも解説した通り、Xフォロワーの0.5%~5%がメンバーシップに参加するのが妥当な数値。これは人数が公開されているメンバーシップをいくつかリサーチすればすぐに分かることです。
つまり800人のフォロワーが居るなら4人~40人が想定される範囲。月額500円なら2000円から2万円が月間売上。これを最初から理解しておくべきでしたね。
自分の事業なのに他人事な人が多すぎる
極論を言ってしまえば「売らなければ分からない」は事実なんです。ただし、それはあくまでもできることをやったうえでの話。
今回のようにリスクがない取り組みならそれでもいいかもしれません。しかし、物販のようにある程度のお金がかかる事業でも数値に他人事な人が多い。
自分が事業のオーナーだということがまだ身に染みてないんですよね。
例えばAmazonでOEM商品を販売しようとするときセラースプライトなどのツールを使ってキーワード選定や競合リサーチをするんですよね。その中でツールに表示されている販売個数をそのまま信じちゃう人とかがまぁまぁいるんです。
「カネを払っているツールだから正しい数値だろう」と思う気持ちは分かるのですが、その数値が算出されたロジックが何か?まで意識しないとダメです。
実際、セラースプライトに表示されている販売個数にはしょっちゅう乖離があります。下手したら1/3くらいしか売れてないこともありますからね。
算入前に月商100万円、利益30万円を想定してたら月商33万円、利益10万円になるってことですからね。3倍の差が出るんですよ、3倍。
自分が事業オーナーだという自覚を持てば本当にいろんなことが気になるはずです。スモビジ起業をするうえで最も大切なことですよ。
良かったところもある
冒頭の短い文章の中で4つも地雷を踏んでいた主人公だったわけですが、良かったところもあります。
例えば持たざる者であることを自覚して文句を言わず算入できる事業を探したところ。コーチングやアドバイザー系の事業はどうしても労働集約型になるので避けたがる人が多いんですよね。
しかし、主人公の山田さんはキチンと割り切ってました。これは結構素晴らしいことです。
他にも、事業開始前にキチンと設計をしようという意志があったのもナイスですよね。価格を月額500円にしちゃうとか、noteメンバーシップを選んじゃうとか色々見込みは甘かったですが設計したこと自体が素晴しい。
というのも、事前に設計しておくとチャレンジが失敗したときに改善しやすいんです。新規事業が一発でうまく行くことなんてなかなかありません。だからこそ、挑戦がうまく行かなかったときも積みあがるナニカを持っておくべきなんです。
事業設計というのはそのナニカに当たります。
「設計のこの部分がダメだったのか、もっとこうしよう」と改善につながりますよね。
コレが何も考えずに挑戦→失敗。だと改善も行き当たりばったりになりますし、下手したら何も積みあがりません。うまく行かなかったときの学習効率を上げている人が最後に勝つんです。
検証しようとしている仮説は何なのか?も理解しないまま挑戦しても成功は運任せ。かなり効率が悪い。
その点、主人公の山田さんは粗くとも設計をしておりナイスでした。
さて、ここからが本題。主人公の山田さんはどうすればこの事業を成功させることができたのでしょうか?
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