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こんなに早くやってくるとは思わなくて


今朝、母の電話に着信があり代わりにかけてとお願いされたので
電話をかけお話をし、非常に残念なお話を聞くことになりました。


電話をしたのは、十年近く宿泊している宿。
1年に一度、晩秋のころに必ず利用していました。
新潟の温泉で、生前の父が見つけたことがきっかけです。

ひなびた温泉の中のお宿なので、そこまで建物は新しくありません。
でも、温泉が温かくなにしろ料理が秀逸なのです。
お野菜も新鮮、海産物もうまい。おまけに米どころ新潟なのでピカピカのご飯。

いいところみつけてよかっただろう?と父ハナタカダカでした。

宿のご主人も不器用だけど、こちらの話に合わせてお答えくださっているところや、奥さまが明るく元気に迎えてくださったり。
行くたびに元気をもらえる宿なのです。

父が亡くなってすぐ、迷いながらも父がすきだったから…と訪れた際も温かく迎えてくださり、お声がけいただいて本当救われました。

来年もよろしくおねがいします。

これが毎回のご挨拶だったのです。


今年も11月に予約をしており、スタッドレスタイヤいつ交換するかなぁと車検のタイミングと一緒にしようなんて考えていました。


「おかみ…が亡くなったので、宿を継続できなくなったので…すみません予約いただいたけども…」

というご主人の言葉でした。


電話を切った後に、ああもういけなくなってしまったのだなと
自分ではびっくりするほど悲しくなっています。
今も書きながら気持ちの整理がついていません。


何が悲しいのか?と考えたときに
その「場所」がもうなくなる、という悲しみもあるのですが


あの空間を作り上げてこられたおかみさんがもういらっしゃらないんだ
そしてご主人の気持ちを考えると・・・・と
なんだか悲しみが増してしまいました。


とても以後ごちのよい空間を作り上げていたのはお二人だったからこそ。
毎年「変わらず」は並大抵の事ではなかったのではないかと思います。
感染症や、大雪など。
なにより、毎年おかみさんと長く話すわけではないのですがほっとするのです。年に一度だけですがそこにいつもいてくれる安心感がありました。


もう、二度と会えないんだ。
一お客としてこんな思いになっているのですから、ご主人のことを考えると…

電話を切るときに「ご愁傷さまです」なんて定型のことをつたえるのはちがうなと思ったのと、なんて言ったらいいのかわからず
「長年本当にお世話になりました…」と伝えるのがやっとです。


いつもそこにいてくれる、と思った人がいなくなってしまう
父が亡くなったときにも同じことを考えましたが
いつもいる、は当たり前じゃないんだ
毎日当たり前に一日過ぎていくわけじゃないんだなぁ

そんなことを考えさせられました。
当たり前こそ、大事に生きていかなくてはとしんみりしたお休みでした。


宿をたたむのは本当に残念ですが、どうか安らかに。
そして悲しみが少しでもやわらいで、穏やかな日が訪れることを願います。

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