オリンピックを想って

 とうとう今日(7/23)、開会式を迎える東京オリンピック。すでにソフトボール、サッカーの試合は始まったが、正直、この日を静かに、だが、熱い想いで待っていた。

 実は、5月初めにこのタイトルで書き始めたが、途中で止まってしまっていた。言いたい事がうまく書けず、その後もずっと自問自答していのだ。「開催してほしい」という素直な気持ちで意義みたいなものを並べてみたが、どうしても「本当にいいのだろうか?」と心によぎってしまう。その心配をねじ伏せてまで「開催賛成!」と書いたら、本心ではないような気がした。そんなことを葛藤している間に、開催は決まり、東京の感染者は再び増え始め、無観客という決定がくだされた。その後、選手や大会関係者が続々と世界中から来日してからは、毎日、彼らの感染が報道されている。

 オリンピック好きの私は、コロナで延期になった時からずっと、開催を熱望していた。正直、1年後では早すぎると思ったが、決まったからには実現に向けて頑張るしかない。私は一観戦者に過ぎない。でも2ヶ月前、開催反対の声が徐々に高まる中、湧き上がる想いがあった。「無理と諦めず、皆の力を結集し、最後まで感染を止める努力をしようよ!」その気持ちを伝えたかったのだが、コロナ禍で苦労されている人々の気持ちを考えると、単なるワガママにしか聞こえず筆が止まった。誰かの犠牲の上に「個人の好き」を貫くのは、いかがなものか?どんな事をしたって、コロナの感染対策には絶対安全なんてない。人命には変えられない。

 それでも、オリンピック開催を願う気持ちを変えることはできなかった。なぜそんなに開催したいのか?結局「好きだから」に尽きた。それ以上でもそれ以下でもなかった。人はそれぞれ一番大事にしているものが違う。自分の「大切なもの」は他の人にとっては「どうでもいいもの」でさえある。でも、どんな事をしても守りたいものがある。私にとっては、それがオリンピックだった。

 子供の頃からずっと、五輪が好きだった。4年に一度体験できるもの。(夏と冬が同じ年に開催されていた頃は、その一年にもっと特別感があった。)両親がオリンピック好きだった為か、とにかく家族で熱中して見ていた。何と言っても一番の醍醐味は、それぞれの国の代表として、様々な競技の選手達がその一瞬に力を注いでくる緊張感。どれだけのプレッシャーの中にいるのか、、、世界のトップアスリートの想像を絶する戦い、、、異国の地で戦っている大変さ。上には上がいる。いつも世界の中の日本を実感できる場だった。

 そして何よりも、困難に打ち勝つ彼らの姿がいつも勇気をくれたということだ。今よりも体格差でずっと劣勢にあった日本人が、人一倍の努力や粘り、戦略でメダルを獲得したこと。不可能を可能にする力を信じさせてくれた。つまり「最後の一瞬まで諦めずに、力と知力を出し切ること」の大切さを学んだ。「一瞬の隙」の恐ろしさや、「最後までやり切ること(グリット)」の力もそうだ。試合に敗れて泣き崩れたり、栄光を手にして輝く姿がどれだけ心に焼きついたことか。(コロナ禍のオリンピック、まさにその精神で開催を諦めたくなかった。)

 その後、病気や壁にぶちあたってもコロナ禍の自粛状況になっても、大人になって人生でくじけそうになった時、その勇姿が心に浮かんだ。オリンピックでの感動のドラマは、その後、何十年も人生に影響を及ぼすほどのもので、そうした子供は私だけではなかったはずだ。未だに、あの時の感動を覚えている人々と話ができるのだから。その感動は他では得難い。

 2日前、鹿島スタジアムに向かう茨城の子供たちの純粋な笑顔をニュースで見て、あらためて確信した。今の子供達に東京オリンピックを見せてあげるのは、大人の責任ではないかと。大人にとって1回のオリンピックがなくなるのは大したことではない。でも、自分もそうだったように、オリンピックは子供達の人格形成には、かなり影響するはずだ。将来、日本を支える子供達にも、この精神を学んで強くたくましく想像力のある人になって欲しいと願う。彼らのコロナ禍での忍耐と工夫、柔軟性は、それと合わさって人生に豊かな実りをもたらすに違いない。彼らがオリンピックを素直に喜んでくれている姿、、、本当に嬉しく思った。

 これから始まる2週間。競技者、関係者、観戦者、全ての人がコロナ禍で困難に直面する中、努力してきたものが形となって出てくることだろう。大げさな演出なんかなくても、純粋に競技に熱中し、原点に立ち返ってスポーツを楽しめば、それだけでオリンピックは素晴らしい。余計なものをそぎ落とす。本来それでいいのだ。アスリートにとっては声援がなくて盛り上がらないかもしれないが、画面の向こうで世界中の人が熱い想いで応援していることを思い出してほしい。

 とにかく感染者ができるだけ抑えられ、無事に東京オリンピックが進むよう、切に願う。

 



 


 

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