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【応援団】Grizzlyのチャントが示した野球における応援の可能性

埼玉武蔵HB応援団・Grizzly(グリズリー)。
前年限りで解散となった埼武連の後継団体として、24年1月1日に発足された。
体制や指針について一部変更がなされ、今シーズンからの活動が予定されている。

そのちょうど1ヶ月後となる2月1日0時。
X上のアカウントにて行われた画像投稿を皮切りに、新しい”チャント”が投稿され続けた。


投稿は1時間に渡って続き、合計15曲ものチャントが追加された。
白文字の個人チャントに赤縁青文字のチームチャントの2種類に分けられ、個人チャントは全て投手のものだった。


Grizzlyとなって初めての行動。
私はこのチャントは応援において新たな可能性を示していると感じ、強く感動した。


チャントは主にサッカー応援などで用いられる方法の一つである。
選手名やチーム名の連呼や歌われる歌のことを指し、一定のリズムで繰り返し唱えられる特徴を持っている。
サッカー日本代表でも使用されている「バモ日本」や「エンターテイナー」が代表的だといえよう。


サッカーは野球と違いオモテ裏の概念ではなく45分-ハーフ-45分(+延長)であるため、攻守がめまぐるしく転換する。
その中で一定のリズムを刻み繰り返すチャントは、スタジアムに大きな波を呼び起こす。
その熱波・影響は今までのJリーグでの試合やW杯などを見返せば明らかだ。


埼玉武蔵HBは昨年途中より「エンターテイナー」をマルチテーマとして使用したり、先立って芦田選手に個人チャント「バモ日本」を使用したりしており、この頃からサッカー応援の要素が少しずつ濃ゆくなってきていると感じる。
野球におけるサッカー応援といえばロッテだが、埼玉武蔵HBの応援はそれとは全く異なる、新たな側面を切り開いたとサク来は考える。


サッカー応援と野球応援の融合による新たなスタイル


ロッテファンは例え少人数だったとしても、相手に大きな圧を与える。
ほとんどのファンがホームなら白、ビジターなら黒のユニフォームに袖を通し、スタンドは真っ白or真っ黒に染め上がる。


サク来は昨年9月、ロッテファンの友人と一緒にPayPayドームのビジター席で初めてロッテの応援を経験した。
色々な色のユニフォームが見られるライトスタンドに対し、真っ黒に染め上げるレフトスタンド。
応援では皆がイメージしている通りのコールメインでの応援が繰り広げられた。
ライトスタンドよりも大きな声でエールを送り続けていたことは間違いない。



埼玉武蔵HBの応援については以前noteで書いた通りだ。
ロッテと埼玉武蔵HB、全く異なる団体だがエスプリは同じほど熱いものを感じた。

今回Grizzlyが発表したチャントは、他球団にとって埼玉武蔵HBの応援がさらに脅威となるのではないか考える。
昨年参加した応援とグラチャンでの様子を見る限り、ファンたちは脅威を与えうる熱気と統一感を生み出している。
投手のチャントはこの脅威を相手攻撃中にも与えられることになる。
ほとんどの応援団が投手に行なっている「頑張れコール」と比べて、このチャントは埼玉武蔵HBの色をより濃ゆく表している。

さらにファンの熱狂性が埼玉武蔵HBの応援をより脅威に仕立て上げていると考える。
以前からお世話になっているぎっこさんに話を伺った際、以前のスタンドについてこう語っていた。

「武蔵HB」時代から球団を見ていたぎっこさんの語ったのは、以前の武蔵のスタイルについてだった。

コロナ禍以前の応援スタンドは熱気と殺気が織り交ざった席だったという。
不可解な判定があったら怒号が飛び交い、相手攻撃中でも興奮冷めやらぬ状態が続いていたという。
今では和気あいあいとした雰囲気となっており、どこか懐かしむ様子も見えた。

熱狂性は良くも悪くも影響を与える。
特に悪いものだと、とことんその方向へと暴走してしまう。
サッカーではフーリガンなどと呼ばれる熱狂的なサポーターが存在するらしい。
ぎっこさんは「和気あいあいとした雰囲気」と表現したスタンドだが、私はサッカー応援の使用により、ファンの無意識的なフーリガン的一面に触れるのではないかと考える。

野球で例えるなら、日本一をかけた阪神や下剋上に挑むロッテのように、熱狂が良い方向に転じると凄まじいものになる。
これらは野球応援とサッカー応援の運命的な出会いによるものであり、チャントの使用は埼玉武蔵HBにおける新たなスタイルを示すものだと考える。


投手への応援に関する答え


さらにこの試みは投手への応援に関する一つの答えになりうると考えた。


投手への応援は非常に難しいものである。
以前サク来はそのうち応援歌に絞って語ったnoteを投稿した。
主な欠点として実用性に欠けることを挙げた:投手は打席に立たず演奏機会が限られる。

SBの投手応援歌で和田選手のもの以外を歌っている人は滅多に見られない。
高校2年の頃だろうか、ホークスファンの友人とヤフオクドームのライトスタンドで応援していた時のことを思い出した。
私は登板した岡本健選手の応援歌を歌ったのだが、その友人を含む周りから白い目で見られた。
この経験があったからこそ、誰も歌わないのに応援歌を作成するのは理にかなっていないと考えるようになった。

しかし応援団に入って野手だけ応援歌を作り、投手はほったらかしにするのもどうかと感じるようになった。
昨年旧Twitterにて、BLACK CAMP代表のやもさんが菅原選手とのやり取りの中で、「菅原選手に投手テーマの作成、よろしくお願いします」とサラマン隊に声かけした場面があった。
菅原選手は自身にも応援歌が欲しいといった旨を投稿した流れでの投稿だった。
やもさんも「投手陣に申し訳ない」と感じながら滋賀Bの応援に励んでいたことが伺えた。

もしここで「はい」と答えて応援歌を作ると実用性がなく誰も覚えられない応援歌が生まれ、選手が本来望んでいたスタイルから大きく外れてしまう。
しかし「いいえ」というのは違う。
改めて投手の応援について難しさを感じた時だった。



それがこのチャントひとつで解決してしまう。
チャントは単純な構成が繰り返されるものが多い。
投手にチャントを使用すれば、応援歌のように使用が限られることなく応援を容易に実践できる。
以上のことから、チャントは投手応援における一つの解を示していると考える。


昨年のグラチャンを現地で見た人ならわかるだろうが、埼玉武蔵HBの応援は一般的なものとは異なる。
他の応援団では出すことができないスタイルからファンを燃え盛らせて、坊ちゃんスタジアムに熱を轟かせた。
あの応援は埼武連が長年培ってきた経験があったからこそ生み出すことができた。
それ今年からGrizzlyとなり、脅威はさらに増し、果てには計り知れないものになるだろう。


サッカー応援と野球応援の融合で生まれた新たな応援方法により、埼玉武蔵HBの枠にはまらない応援の可能性を見せるだろう。
その新しいスタイルは応援の新たな可能性を広げる。

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