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漁村にある本屋さん「トンガ坂文庫」

 うちら夫婦は本が好きだ。とは言ってもそこには本屋も含まれる。とくに店主さんが個人的に選書された本屋が好きだ。個人的に選ばれた本棚の背表紙なんかを眺めているだけでその人の頭の中を少しだけのぞかせてもらっているようで楽しい。

 先日は嫁が見つけてきたトンガ坂文庫に行ってきた。そこは三重県尾鷲市九鬼町の漁村にポツンと存在している。大阪からだと車で3時間半ほどだ。日帰りだとなんともせわしないので、津市で一泊しながらいくことにした。

 ホテルから1時間半ほどかけて、奥には山、手前には瑪瑙色した海を前にした九鬼町の漁港に着いて、トンガ坂文庫さんから事前に教えてもらっていた郵便局に車を置いた。そこから道路脇にある狭い路地を入っていく。

「こんなとこにほんまに本屋があるんかな?」
 なんて訝しげに歩いていたら突きあたりにトンガ坂文庫の小さな案内看板を見つけた。その先にある石の階段を上がった先にその本屋さんはあった。

「なんで、こんなところに本屋を作ったんだろう?」
 目線の先にポツンと佇んでいるトンガ坂文庫の扉を開いたら、改装した一軒家の中に、興味のありそうな本がたくさん並んでいた。

 パッと見るだけでも、菌の本や、哲学の本など気になる物ばかり。普通の本屋ではあまりないセレクト。眺めているだけでも楽しい。そんな本をセレクトしている店主さんにも興味がわいたので話かけてみた。女性の店主さんは優しい受け答えで、出身地や選書のこと、近所のおすすめスポットなんかを教えてくれた。

 ほしかった本は売り切れていたりしたものもあったが、それでもそこで新たに出会った本たちをたくさん買うことができた。
「また夏にも楽しいイベントがあるので、ぜひきてください」
 と見送られ、登ってきた石の階段をおりた。

 電子書籍でも本は読んだりするんだが、ある人がある考えを持って選ばれた本を実際に手にとって買うという一手間もいいもんだ。

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