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Leina「未開封の恋」とフラットファイブの魔法

崎山蒼志、長谷川白紙、君島大空、折坂悠太、Official髭男dism、あいみょん、カネコアヤノ。あくまで一例にすぎませんが2019年を彩った若手、こうして並べてみますとなかなかに壮観ですよね。特に興味深い点として「フォークソング」の再発見が近年めざましい。定期的にやってくるムーブメントではありますが、古来から続く日本ならではの文化。

その一角にLeinaがいます。彼女の歌声を初めて耳にしたのは某ショッピングモールのフードコート。有線から流れてきたのですよ。飲み食いの手を一旦止めてしばし聞き入りました。サビ。カノン進行からクリシェ進行を経由し着地した先に待つのはフラットファイブ。おじさんおもわず声が出ました。弱冠15歳、中学生SSWが見せた恐るべき情感。

C G/B Am F C/E G F#m7♭5

正確には、マイナーセブンのフラットファイブ。ハーフディミニッシュとも呼ばれる「泣き」進行の代名詞です。いっちょまえに語っていますが、主宰はピアノの才能が枯れ果て、流れ流れてドラムの道を志した若輩者ですので威厳もへったくれもありません。しかしながらそんな浅瀬の人間にもわかる確かな音楽知識とテクニックに裏打ちされた感性。

「私を君のものに/してくれたっていいんだよ/その一瞬だけ/一瞬だけ」

メロディが先か歌詞が先か、それとも同時発生的か。想像が無限に膨らんでしまうほどシンクロ率の高い世界観。繰り返しになりますが、中学生SSWが見せる恐るべき情感。メディアへの露出も非常に控えめでYouTubeライブもひっそり行う彼女ですが、謎めいたまま突き進んでいくことを老婆心ながら期待してやみません。

細かな節回し、アーティキュレーションから察するに「未開封の恋」は脆く儚い終わりを予感させますね。サビ中盤に向けて力強く発せられる歌声と、終盤でそれが抑制され尻切れトンボになっていく対比が、実に見事。好意を寄せる相手に正面切って伝えるなら「してくれたっていいんだよ」ではなく「あなたのものになりたい」と歌うはずですから。

曲冒頭。薄もやがかったイントロから読み解くに彼女の頭の中、空想あるいは夢に出てきた意中の相手を思い書かれた曲ではないかと。「一瞬だけ」の一節にもなるほど合点がいくはずです。言葉にしたくてもできない、いっそLINEで済ませてしまいたい。一回り年を食ったおじさんには中高生のリアルがわかりかねますが、しかし非常に青くさく甘酸っぱくほろ苦い。

「それはマンガの中で」ややもすると二次元世界の住人が恋の相手か。

Cコードで始まるAメロが、2番の歌い出しはAmに変わっている。マイナーコードを上乗せすることで募る主人公の不安、心模様まで表現してみせたか。Amを県境とし一人称が「私」から「僕」に変化。両想いと断言できない、別々の相手に思いを寄せている可能性もある。ここも奥深い。自身の恋愛を投影したのか、家族友人の実体験がモチーフか、それとも架空の物語か。

リリースから1周年。もうこの曲ばかり何周聞いたことでしょう。

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2020年11月13日

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