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ジャック・アタリ氏「利他主義は最善の合理的利己主義」~NHK「緊急対談 パンデミックが変える世界」内容まとめ

NHK「緊急対談 パンデミックが変える世界 〜海外の知性が語る展望〜」の再放送を見ました。見逃し配信おすすめです。
https://www.nhk.jp/p/etv21c/ts/M2ZWLQ6RQP/episode/te/PVVG5MVMGG/

登場順に、
イアン・ブレマー(国際政治学者、アメリカ)
ユヴァル・ノア・ハラリ(歴史学者、イスラエル)
ジャック・アタリ(経済学者・思想家、フランス)
のうち、後に行くほど共感。
発言内容と私の感想を簡単にまとめてみました。
(あくまで私個人のまとめと感想で、文責は私にあります)

三人とも、「民主主義」と「市場経済」の崩壊の危機、という点に関しては共通。
私はアタリ氏に共感したので、忙しい方は後半からお読みください!

○イアン・ブレマー氏
「いまは『G0』(ジーゼロ)の時代。つまりG7でもG20でもない。今回、アメリカがリーダーシップを取れていない。9.11のときは皆ひとつになれた」
【感想】国際的な混迷をてぎわよく分析するも、例えば9.11のときのアメリカ政府の対応を全肯定する立ち位置に疑問。
「いまどうすればいいでしょうか」というインタビュアーの質問に、
「犬を飼いましょう」「孤独の中に閉じこもってはいけない」
という、前半のマクロな視点と後半のミクロな視点のギャップに疑問。

○ユヴァル・ノア・ハラリ氏
「科学に対する信頼の回復が大切。いまこそ教育が大切。例えば、人々が正しく手を洗ったか、警官と監視カメラを全国にくまなく配置して、正しく洗わなかった人を罰する、などというより、正しい手洗いが感染を防ぐことを周知させるほうがよほど効果的」
「政府と国民、双方向であるときに限って、私は監視を肯定する。政府が国民を監視するだけでなく、国民も政府がどう機能しているか知る権限を持つべき」
【感想】基本、そのとおりだと思うが、思索が「監視」という点に集中しているところに特異なもの(というかイスラエルの現況)を感じてしまった。

○ジャック・アタリ氏
※著書『危機とサバイバル』(原著は2009年に出版)のなかで、「今後10年以内にパンデミック発生の恐れがある」と予言

「これは1929年(世界大恐慌)以来の危機。2008年より深刻。経済成長はマイナス数十%におよぶ危険性がある。世界経済をけん引するアメリカが、ほとんど備えなしにこの事態に突入していることが大いに関係している」

「過去の例を見ると(例えば1918年の「スペイン風邪」の流行。本当は「アメリカ風邪」だったのだが←字幕に出てないけどこうつぶやいてた)、
パンデミックの最初のインパクトがおさまったときに皆が安心して外出してしまい、被害が拡大した。第二波以降にも注意を怠ってはならない。さもないと、本当に世界恐慌と長期不況をまねきかねない」

「さらに悪い予測として、パンデミックを口実に、独裁主義がおこなわれる危険性がある。すでにハンガリーで現実化している(※集会による感染の防止を理由に国会のシャットダウンがなされようとしたこと。この点はハラリ氏も指摘していた)。」

「だが、強い政府と民主主義は両立可能。第二次世界大戦中の英国のように」

利己主義、経済的な孤立におちいってはならない。たしかに(各国・各地域の)経済的な自立は重要だが、孤立は危ない。バランスの取れた(国際的)連帯が必要。
パンデミックという深刻な危機に直面した今こそ、『他者のために生きる』という人間の本質に立ち返らねばならない。
協力は競争よりも価値があり、人類は一つであることを理解すべき。
利他主義という理想への転換こそが、人類のサバイバルの鍵

「Think positive!」という前向きな発言を絶やさないアタリ氏。一見、お気楽な啓発本などと同列にされそうだが、その点について、

「楽観主義(オプティミズム)とポジティビズムは違います。
例えば、スポーツの試合を、観客として見ていて、自分の好きなチームが勝ってくれるだろうと考えるのがオプティミズム。
自分が試合に参加して、『いいプレイができれば勝てるだろう』と考えるのがポジティビズムです。

そういう意味では、日本もフランスも、この試合に勝てるだろうと信じています。自分たちの安全のために最善をつくし、世界規模で経済を変革させていくことができれば。そういう意味ではこれはチャンスです。生きるのに本当に必要なものに集中する経済への転換に向かうための」

――人々が買い占めに走ったり、国境を封鎖したりしている中で、利他主義を主張するあなたを「無私の聖人」と呼ぶ人もいるのでは?

「いえいえ。利他主義は最善の合理的利己主義に他なりません。(←字幕に出てないけど「最善の」と言ってた)
自らが感染の脅威にさらされないためには、他人の感染を確実に防ぐ必要があります。他国が感染していないことも、自国の利益になります。長期的に見れば、海外市場の繁栄は国益につながりますよね。利他的であることは、ひいては自分の利益となるのです

「今回の危機はおそらく数ヵ月でおさまるでしょう。私は医師ではないので、正確に何ヵ月とは予測できませんが。ただし、このままでは、長期的に見て(経済的)敗退はまぬかれ得ません。経済をまったく新しい方向に設定し直す必要があります。
戦時経済では、すべてを武器生産にシフトしますよね。そのように、医療機器、病院、住宅、水、食糧を集中的に生産する経済にシフトするのです。それが私たちに可能かはわかりませんが。将来、また同じ経済行動に戻ってしまうこともあるでしょう」

「人類の成長に恐慌や危機が必要だなどとは思っていません。むしろ、魔法ででも何でもいいからいまのパンデミックが終息してほしい。しかし、現状がこうである以上、良い方向に生かすしかありません。つまり利他的な経済や社会、『ポジティブな社会』『共感のサービス』に向かう方向に。
けれども人間は未来を想像するのが苦手だし、いやな過去ほどすぐ忘れてしまいます。のどもとをすぎると元の行動様式に戻ってしまうのです。そうならないよう祈っています。次の世代のために行動できることを

【感想】
「利他主義は最善の合理的利己主義」!
つまり、自分ファーストは、けっきょく自分の首を絞めるということ。

まず、買い占めはやめよう。
他人や他国をディスって何事かをなしたような気になるのもやめよう。
過去に信頼してきた人のそういう行動を見ると悲しい。

真の意味で、Think positive!


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