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「見る」と「観る」の使い分け (連載:外から見る日本語第1回目)

バンクーバーの習い事教室STEP AHEAD LEARNINGです。

当教室にて、まもなく日本語講師養成講座(初級編)が開講されるのでそれを記念して、日本語教師歴25年になる講師の矢野修三先生に 「連載:外から見る日本語」を執筆していただくことになりました。

長い長い日本語教師歴を通して感じた日本語のフシギを短いエッセイ形式でお届けします。

日本語を教えることに興味がある人も、単なる雑学としても、だれでも楽しめる内容となっております。

それでは はじまり はじまり。



久しぶりに日本語上級者数名と同窓会を行なった。その中の一人、K君は学生時代、選手だったようで、サッカー大好き人間。

 去年カタールで開かれたワールドカップの話をすると、大はしゃぎ。いろいろな話題に花が咲いた。カナダは決勝トーナメントには出られなかったが、日本は堂々進出。「サムライ ブルー」として、大会を大いに盛り上げた。

 そのK君から「テレビにくぎ付けになりました」との発言があり、この表現とても格好いいですね、である。さすが上級者。ところで英語では、と聞くと、日本語のように決まった言い方はないですが、「I was glued to the TV」かな・・・。なるほど、英語もなかなか格好いい!

 さらに、こんな質問が、テレビを「見る」と「観る」の違いである。これは上級レベルの生徒からよく受ける質問だが、この違い、漢字の意味が分からないと、確かに難しい。

 日本語教育では先ず「見る」を教え、中級で「観」を導入する。「観賞」や「観光」などである。そこで、「見る」は自然に目に、「観る」は意識して目を向けるニュアンスを教えたく、こんな例文を、「見る」は「食事をしながら、テレビを見る」で、「観る」は「じっくりテレビドラマを観る」、である。我々日本人は何となく身についているので、劇場での芝居や映画などはやはり「観る」のほうがふさわしいと感じる人が多いのでは。


 でも、ややこしいことが、もちろん「見」も「観」も常用漢字(国が定めた、よく使われる漢字)であるが、なぜか「観」は音読み(中国式読み方)の「カン」だけで、訓読み(日本式読み方)の「み(る)」は入っておらず、不思議である。常用外なので、公式な文書に「映画を観る」はダメ。もちろん、個人のメールやブログなどには全く問題ないのだが・・・。日本語教師としても説明に困る。ぜひ「観」の訓読み「み(る)」も常用内に入れてもらいたい。


 軽く一杯飲みながら、こんな話をしていたら、大事なシュートの場面を見逃してしまったんですが、この場合は「見逃した」よりは「観逃した」のほうがいいですね。すると他の生徒も、美しい女性に「見とれた」よりも、じっと見ていたので、「観とれた」のほうが・・・。うーん、いかにも上級者ならではの鋭くておもろい発想。びっくりである。


 最後に、将来W杯の決勝戦で日本とカナダが戦うことになったら、どっちを応援するか、と意地悪な質問をしたら、そんなこと「朝日が西から出る」くらいあり得ないと・・・、軽く、見事にかわされてしまった。「You got me.」(参った)。サッカーのおかげで大いに盛り上がり、教師冥利に尽きる思いのひと時であった。 



いかがでしたでしょうか?

普段何気なく使っていた「見る」と「観る」の使い分け、言われてみれば「そうかも!」と納得しませんか?

本エッセイを執筆された矢野修三先生が、4月16日からバンクーバーの弊社STEP AHEAD LEARNING のオフィスにて、0から日本語教師を目指したい人向けに日本語教師養成講座(初級編)を開講します。

オンラインからも受講可能!
(上記日付はバンクーバー時間となります)

最初の1日は無料とオリエンテーションになっているので、興味がある人は奮ってご参加下さい!

詳細はこちらから。




本エッセイは執筆者である矢野修三先生から許可を頂いて転載しております。

執筆者プロフィール:
矢野アカデミー元校長
矢野修三先生

矢野アカデミーのサイト:


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