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映画日誌’20-47:ニューヨーク 親切なロシア料理店

trailer:

introduction:

ドグマ95作品『幸せになるためのイタリア語講座』で注目されたデンマーク出身の女性監督ロネ・シェルフィグによる人間ドラマ。ニューヨーク・マンハッタンにある老舗ロシア料理店に集う人々の交流を描く。『ルビー・スパークス』などのゾーイ・カザン、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』などのアンドレア・ライズボロー、『預言者』などのタハール・ラヒムのほか、名優ビル・ナイ、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズなどが出演する。2019年・第69回ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品。(2019年 デンマーク,カナダ,スウェーデン,フランス,ドイツ,イギリス,アメリカ)

story:

ニューヨーク・マンハッタンで創業100年を超える老舗ロシア料理店「ウィンター・パレス」。だが、現在のオーナーであるティモフェイは商売に興味がなく、かつての栄華は過去のものとなっていた。経営を立て直すため雇われたマネージャーのマークは刑務所を出所したばかり、常連の看護師アリスは恋人に裏切られて以来、他人のためだけに生きる変わり者。訳ありの過去を抱えた人物ばかり集まるこの店に、夫から逃げてきた無一文のクララが、2人の子供を抱えて転がり込んでくるが...

review:

邦題から、ほんわかしたドラマを想像すると肩透かしを喰らう。夫のモラハラとDVから無一文で逃げ出した子連れの女性が、ロシア料理店で暖かい人たちの助けを借りて人生再建するかと思いきや、なかなかロシア料理店に辿り着かないのである・・・。ニューヨークも東京も、大都市には暗部がある。キラキラと光輝く分だけ、陰ができる。極寒のニューヨークで生きるホームレスや、シェルターに身を寄せる人々のシビアな現状が映し出されて、なかなかにしんどい。だが、訳ありの人々が身を隠すことが出来るのも、大都市の隙間だ。

そして、都会の底辺で生きている人々に、そっと手を差し伸べる人々もいる。邦題は主題がぼやけてしまっているが、原題は "The Kindness of Strangers" だ。堕ちてしまうギリギリのところにいながら、”見知らぬ人の親切” によって、どうにかして生きる希望をつないでいく。ロシア料理店〈ウィンター・パレス〉に集う ”訳有り” の人々が、自分を赦し、過去を受け入れ、人生を取り戻す姿を描いた群像劇でもある。構成や脚本が練られていて、いい映画だった。でもロシア料理店はこの物語の軸じゃないから、別にタイトルに付けなくて良かったねぇ・・・。

クララを演じたゾーイ・カザンも素敵だったけど、恋人に裏切られて以来、救急病棟の激務の傍らで他人のためだけに生きる変わり者のアリスを演じたアンドレア・ライズボロー、仕事をすぐクビになる少々アホっぽいジェフを演じたケイレブ・ランドリー・ジョーンズも良かった。どこかで見たと思ったら、『ノーカントリー』や『スリー・ビルボード』に出ている俳優さんだった。ジェイ・バルチェルが演じた弁護士もキャラクターが立っていたし、2人の息子も可愛くて良かった。

しかし何と言っても、ロシア料理店の設定くらい物語に必要がなさそうなビル・ナイおじさんである。多分いなくても物語の進行に差し障りがないくらい存在が軽いのだが、ビル・ナイが出ているだけで、映画がどっしりするのずるい。あと、何だか面白げになる。大したことしてないのに、何なら映画の印象の半分くらいがビル・ナイである。みんな、ビル・ナイおじさんに会いに行くといいよ。

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