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映画日誌’21-08:ある人質 生還までの398日

さかいりえ

trailer:

introduction:

2013年、シリアで過激派組織ISの人質となり398日ものあいだ拘束されるも、奇跡的に生還したデンマーク人写真家ダニエル・リューの救出劇を映画化。原作は、ジャーナリストのプク・ダムスゴーがダニエル・リューと関係者に取材して書き上げた「ISの人質 13カ月の拘束、そして生還」。『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』で世界的に知られるデンマーク出身のニールス・アルデン・オプレヴと、本作に出演している俳優アナス・W・ベアテルセンが共同で監督を務めた。『幸せな男、ペア』などに出演するデンマークの俳優エスベン・スメドが主演を務め、『ファンタスティック・フォー』のトビー・ケベルほか、デンマークを代表するキャストが共演。(2019年 デンマーク,スウェーデン,ノルウェー)

story:

24歳のダニエルはデンマークの代表チームに選ばれたエリート体操選手だったが、怪我でその道を断念し、ずっと夢だった写真家に転身する。彼は戦時下の日常を世界に伝えるため内戦中のシリアを訪れるが、非戦闘地域で過激派組織ISに拘束されてしまう。折しもシリアでは情勢が刻々と変化し、イスラム過激派の新興勢力が手を組んで資金調達のための誘拐ビジネスが活発化していたのだ。ダニエルの家族は巨額の身代金を要求されるが、デンマーク政府はテロリストと交渉しない方針を取り、家族は人質救出の専門家に協力を依頼する。家族が身代金の調達に苦慮しているあいだ、ダニエルは拷問と飢え、恐怖と不安に直面していた...

review:

シリアで内戦勃発の要因となった大規模な反政府デモが起きてから、10年が経つそうだ。21世紀最大の人道危機と言われているシリア内戦は、アサド政権と反体制派、クルド人勢力やトルコ支援勢力といった内戦当事者に加え、イスラム国(ISIS)の介入、それぞれを支援するアメリカとロシアの代理戦争など、宗教的、政治的思惑が複雑に絡み合い、終結の見通しは立っていない。シリアの内情は混乱を極め、40万人以上が命を落とし、国民の半数にあたる1000万人が家を失い、600万を超える人々が国外に逃れている。

シリアの現状を知ろうと開いてみた外務省のサイトによると、「シリア国内では、イスラム過激派(「イラク・レバントのイスラム国」(ISIL)や「シャーム解放機構」(HTS)等)、反政府武装勢力、クルド勢力及びシリア軍・治安当局等の勢力が入り乱れて衝突しており、全土で多数の死傷者が発生しています。首都ダマスカスやアレッポ、ラッカを含むシリア全域で日本人渡航者・滞在者に深刻な危険が及ぶ可能性が極めて高い状況が継続しています。(中略)また、イスラム過激派組織や犯罪集団等による誘拐・強盗等の凶悪犯罪が多発しており、極めて危険な状況です。」とのこと。

過激派組織による誘拐は、日本にいる我々にとっても他人事ではない。2012年、アレッポで日本人ジャーナリスト山本美香さんが取材中に銃撃を受け死亡。2015年、シリアでISILに拘束されていた後藤健二さん、湯川遥菜さんの映像がインターネット上に公開され、その後死亡したとされている。2015年にシリアで拉致され、2018年10月に解放されるまで3年以上にわたり拘束されていた日本人ジャーナリスト安田純平さんの解放は記憶に新しい。そうしたニュースが駆け巡るたび日本では自己責任論が巻き起こるが、現地で起こっている真実を世界中の人々に伝える使命感を背負って危険な紛争地域に赴くジャーナリストや写真家がいなければ、私たちは知る術もない。

と言うわけで、いま世界で何が起きているのかを知るべく観に行った。398日間にわたってシリアで過激派組織ISに拘束され、地獄の日々を過ごしたダニエル・リューの過酷な体験と、頑なにテロリストと交渉しない方針を貫くデンマーク政府、彼を救出するため奔走する家族の姿がスリリングに描かれる。ダニエルが現地で出会う他の人質たちとの描写も心に残る。が、よくできた再現ドラマの域を出ず。ISを内側から描くのであれば、彼らの怒りや憎悪がどこから来てどこに向けられたものなのか、なぜ人質ビジネスや見せしめの処刑をおこなうのか、そうした側面に触れてもよかったのではないかと思う。しかし、いまだイスラム国が健在であることを思い出し、シリアの人々の現状を認識できたことは有意義だった。

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