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ボクは今、誰かに暖かくて美味しいモノを伝えているだろうか?

今日の様な寒い夜は、焼酎のお湯割り梅干し入りを呑む。

焼酎のお湯割り梅干し入りを呑みたびに、以前勤めていた会社の営業部の部長だった「藤本さん」を思い出す。

こんな寒い時期に、毎年有楽町にあった大きなイベント会場で毎年行われていた某大手旅行代理店のイベントを当時勤めていた広告代理店がいつも任されていた。

そんなイベントのある日の打ち上げで、「藤本さん」は先輩のディレクター、営業部数人と自分を新橋のガード下の大きな店に連れて行ってくれたのだった。

いつも行くような新宿、渋谷の店には無いような雑多な大人の雰囲気に、自分は飲み込まれて行った。

勿論上司だった「藤本さん」にオーダーは任される訳で、初めて、焼酎のお湯割りの梅干し入りが出て来た。そして少しのおつまみ。

見様見真似で、となりに座るディレクターがやる様に、中に入っている梅干しを潰してそして冷えた身体にその、暖かい焼酎のお湯割り梅干し入りを身体の中に入れた。

はぁ〜、美味しい、暖まる…。

煙草の煙が立ち込めるその店の中でちょっとだけ、自分もそこにいる、年配の男性や女性の仲間入りが出来たような、嬉しい気持ちも、そのお酒の味の中から漂って来た。

私が20代半ば、「藤本さん」がおそらく今の私位の年齢より少し上だったのだろう。
当時私にとっては凄いおじさんだと思っていたが、若しかすると今の私の歳上の友人達位だったのかも知れないと何となく思っている。

時々「藤本さん」の事は夢でも思い出す。もし彼が今生きていたら、7〜80代位だろうか?夢の中の「藤本さん」はいつもにこやかでいつも優しい言葉を投げかけてくれる。

実際に「藤本さん」は、穏やかで優しく、海外生活も長くウィットに富んだ素敵な方だった。私が忙しすぎて、長期休暇を取る際、誰も知らないような南フランスの街に行く時も、あそこのレストランは美味しいから行ってご覧、なんて教えてくれるお洒落なおじさんだった。

寂しい事だが、この先「藤本さん」にお会いする事は無いような気がする。多分本当に無いのだろうと心の中では分かっている。

美味しいモノを教えてくれた、人生の先輩は他にも今も沢山いる。そして今この世から去ってしまったけど、確かに、いた。

美味しいシャンパンの選び方、安い赤ワインの美味しい飲み方、
安くて汚いお店の美味しいチキン、高いホテルから観るサンセット、

そして、
焼酎のお湯割り梅干し入り、
なとなど、

彼ら、彼女たちから教わった事はたくさんある。
その楽しみ方、それは自分のモノに対する価値観をどこに置くかという事、

焼酎のお湯割り梅干し入りなんて、今では別に年齢問わずよく呑まれているお酒の呑み方かもしれない。

でも、焼酎ばかりでは無くて、色んなモノをその時々の自分なりにチョイスして生活をしていく自分でいたいし、

ボクは今、誰かに暖かくて美味しいモノを伝えているだろうか?

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