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『青の記憶』

『青の記憶』

車のおもちゃ、洋服、空、海。
僕は青色が好きだった。

青に合う色は、白だけだと思っていた。
空の雲も、海の砂浜も、
ブレザーの中のワイシャツも、
みんな白だったから。

いつものように僕は、
真っ白な画用紙に、
青い絵の具で空を描く。

不意に隣に現れた君が、
カラフルなパレットを差し出してきた。

黄緑、茶色、オレンジに水色。

君の視線を追って、なんとなく僕は
桃色をひとすくい、筆に取る。

君も同じように、その色を拾う。

心の端には、まだ抵抗がある。
それでも君の瞳の先を信じてみたくて、
乾き切らない青の上に、
そっと、筆を置いてみた。

薄く滲んで紫の円が生まれた。

やっぱり思い通りにならないじゃないか。
僕のため息を先読みしていたかのように、
君がそこに、静かに色を重ねる。

紫の中に、ほんのりと薄紅色の花が咲く。

君の頬と同じ、優しい色。
白いと思っていた君の肌は、
思っていたよりもずっと明るい肌色で、
柔らかそうな唇は、
あたたかく美しい赤色で。

僕は青色が好きだった。

あの日、
君の重ねてくれた色も好きだった。


#言葉の添え木 「青の記憶」
#詩 #イラスト #青 #色

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