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短編小説

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読み物。君と僕の日々の物語。 どこからでもいけますが、古い方から順番がおすすめです。
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#創作

『星占いの話』

「今朝の占い、最下位だったんだよねー。  案の定、数学の小テストはあるし、  英語は当たるし…」 黒板の日直を書き直した君が、愚痴をこぼしながら、一つ前の席の椅子を引き、向かい合わせで腰をかけてきた。 「あの占い、結構当たってるよね。」 私はシャープペンの芯を、カチカチと送り出しながら、日誌を描きつつ、ちらりと君の手を見る。 丸い爪の、少し硬そうな日焼け色の手。 書く手を止めて、そばに自分の手を置いてみる。 (そんなに大きくない…のかな。) それ以上、顔を上げる勇気

『遠くて近い旧校舎の話』

朝練が終わり、先輩達が引き上げていくのを見送ってから、ようやく私達はそれぞれの教室へ向かうことができる。 "しきたり"とは、実に不可解且つ不便なものだと思う。 これを"伝統"とは呼びたくないなと、心の中でへの字口をしながら、 「あと10分だ!急ごっ!」 「あー、朝自習配るの遅れるー怒られるー」 「まだ間に合うよー、そっちのクラス近いじゃん!」 「ちょっと!シューズの袋、うちのカバンに  引っかかってる!と、取ってー!」 それぞれの事情がこぼれ落ちるのを耳にしつつ、体育館

『クラス替えの日の出来事』

仲の良い部活仲間と同じクラスになれはしたものの、いざ教室で席に着くと、話したことのない面々に囲まれた、番号順の窮屈な並びに、不安が募っていった。 すぐ前の子は…確か小学校が一緒だったかな。 右隣はずっと本読んでるし…後ろの子は、なんだろう?何か書き物をしている。 左隣は…机に突っ伏したまま寝ていて、顔もわからない。 (気まず過ぎる〜…今日はもうホームルームだけだし、私も何か書いてるふりしとこっと。) セカバンからデニム地の大きなペンケースを取り出し、配られたばかりの連絡