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ショートショート、瞬間の切り取りが多いです。 お花や空の写真を眺めるだけでも…楽しんでいただけますと幸いです。
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#空

『静かに燃えて』

夏の大会が終わり 先輩達から私達へ 世代交代した翌日 練習帰りに 仲間と見上げた夕焼けは 強い朱色が連なり したたかな炎に見えた 必勝への意気込みも 引退まで一年を切った焦りも 全部全部 受け止めて 空は静かに燃えていた #詩 #散文 #空 #部活 #夕焼け

『叶わずとも』

蝉、ずっと鳴いてるね 時間は限りのあるもので 永遠などない事に 気づき始めた十四の夏 大人になろうとして 何もできない自分を これでもかと思い知る まだ 土の中にいてもいいんじゃない? 急ぎ沈む夕日が 焦らないでと足元を照らす 誰も信じたくないのに 君だけは信じたくて ぬるい風の中 二人で空を眺めていた #詩 #散文 #夕焼け #写真 #空 #夏 #青春

『もう少しだけ』

素直になれていたら 思いやることができたなら もっと長く そばにいられたのかな "他のいい人と幸せになってね" お前がそう言うのはわかっていたのに 試した僕に刻まれた罪は ケロイドのように消えないままで もう少しだけ 欲張りで わがままでいて欲しかった #詩 #散文 #恋愛 #空

『日曜日の終わりに』

明日は 君に会える #詩 #散文 #空 #夕焼け

『続・空』

別れ道で君を見送り 僕はひとり 空を見上げた 微かな唸り声を上げる北風は 怪しい雲を運んでいる 週末は会えない だからもう一度 遠ざかる君に目を向ける 街灯に反射する カバンの留め具 揺れる髪をおさえた横顔は 同じ空を見上げていた #詩 #散文 #空

『空』

明日は晴れかな。 これから雨みたいだけど。 昼は蒸し暑かったね。 夕方になったら、 涼しくて気持ちいい風になった。 白と青 深く 浅く 夕暮れと夜の 狭間の青空 あなたとわたし 別れた道の先で 同じ空を見上げていた #詩 #散文 #空 #写真

『夏至』

「あーついなぁ。」 「あーついねぇ。」 体育終わりの 僅かな休み時間 君が下敷きで仰ぐ風は ベコベコと小気味良いリズムで ほのかに香る 汗拭きシートのシトラスに 夏休みの足音を感じる 黒板横のカレンダーを 眺めた君が ぽつりと呟く 「今日、夏至なんだね。」 「南中高度。」 「言いたいだけっしょ。」 頬杖を付いたまま 半笑いで言い返されて 少し悔しい うつ伏せの体を起こして 君の薄い右頬へ 人差し指で 優しく反撃を試みる 「げしっ。」 「…言いたいだけっ

『知らない空』

今にも降り出しそうな風が 半袖のブラウスをひやりと撫でる なんとなく今日は ミルクの甘さで温まりたい 「一緒に飲む?」 狭い路地で 蓋を開ける 先に飲んだ君の吐息は 柔らかな笑みと溶け合って 私の一口目をさらに甘くする 車が来たのか 思いがけず 肩を抱き寄せられた 君越しに見えた知らない空に 不安と期待が入り混じる ふわりと漂う 同じ香りを頼りに 目の前の胸元に 頭を預ける 君の優しさが 白く じんわりと 私を包み込んでくれた #詩 #散文 #イラスト #恋

『闇に紛れて』

好きで好きでたまらなくて 声が聞きたくて 触れてみたくて 君という形の端々から そんな気持ちが溢れていて それは時に鬱陶しい程に いつでも君が探してる 僕のことを探してる 疑うことなど まるでなかった 遠く青い春の頃 一昨日の晩 梅雨の走りの蒸し暑さに 淀む駅の階段で 君の小さな背中を見つけた もう一度 声が聞きたくて 触れてみたくて いつでも僕が探してた 君のことを探してた 重たくなった身と心では 駆け出しても追いつけず 上がった息と吹き出す汗は 気付くの

『揺らぎ』

「たまにさ、雲でお日様が隠れて、  暗くなる瞬間ってあるじゃん?」 「うん。」 「風も少し冷たくなるような  気がして。」 「あー。  やけにスーッと感じるような。」 「そうそう。」 「でさ、なんとなく顔上げたらさ…」 君の言葉の途中で、 その瞬間は唐突にやってきた。 顔を見合わせ、揃って空を仰ぐ。 隠れたはずの太陽は、 オーロラ色の雲を纏って、 私たちをやり込めた。 「うわっ…  直接見てないはずなのに…。」 「うっ…またやられた。  な?暗いわりに、思

『コントラスト』

抜けるように青い空。 「おはよー。」 クリーム色の歩道橋から、 君が手を振る。 「おはよう。」 右手を上げ返事をし、 橋の下をくぐる。 足取り軽く降りてくる音を抜かして、 一足先に下で待つ。 真っさらなワイシャツと 君の笑顔。 キラキラ眩しくて、 切なかった。 #詩 #散文 #空 #写真

『無力な涙』

雨はちゃんと土に染みて 静かに川となり 海に辿り着いて いつかは空に還るのだろう 私の涙はただ頬を 伝ってシャツに にじむだけ 拭ってくれた君の手の ぬくもりはもう 思い出せない きっとあの日の雨と一緒に 空に還っていったのだろう #詩 #写真 #空 #雨 #散文

『揺れる色』

三限あとの休み時間 誰かが窓を開けている 大きく膨らむ 日に焼けたカーテン 「黄緑色が柔らかそう」 頬杖の君は寝ぼけ眼で 陽の当たる柵の向こうを見つめる 座席の間を吹き抜ける薫風 捲れた英語のノートを抑えて 君の眺めた色を追う #詩 #散文 #新緑 #空 #写真

『見上げてみれば曇天の』

にわか雨でもありそうな 蒸し暑さだけが気の早い 黄緑色の新芽は遠く 薄黒い雲に重なって 風の匂いが喉にかかる 真新しさと気怠さと 皐月の狭間 迷子の足取り #詩 #散文 #花 #バラ #空 #写真