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マシュマロ回答編「おすすめのアリアor歌曲は?」

皆さん、こんにちは。
個人VtuberのSakuyaと申します。

本日はいただいたマシュマロに回答していこうと思います。
動画にしたものは下記よりご覧ください。

さて、質問はこちらです。

マシュマロありがとうございます。
こちらの質問の何だか素敵なところは、「ロシア語の声楽作品」が1番最初に来ているところですね。質問順に従って回答して参りたいと思います。

(1)ロシア語の声楽作品
リムスキー=コルサコフのオペラ「雪の娘」より、終幕の合唱曲「ヤリーロ讃歌」を紹介させていただきます。

まず、このオペラは「雪娘」(スネグーラチカ)という民話が元になっています。
スネグーラチカはジェド・マロース(ロシア版サンタクロース)の孫娘で、ロシアでは親しまれているキャラクターだそうです。

オペラ版はリムスキー=コルサコフ本人が台本を書いています。
1873年にアレクサンドル・オストロフスキーによって戯曲化された内容が元になっているとのことです。

【ストーリー】
冬の精(ジェド・マロース)の父と、春の精(「春の美」)の母を持つ雪の娘「スネグーラチカ」は大変清らかで美しく、人々にも愛されて暮らしています。
しかし彼女はあまり愛というものに関してピンときていないためにちょっとしたトラブルが起きてしまい、スネグーラチカも愛というものについて探し求めるようになります。

最終的に彼女なりに結論が出るのですが、切ない結果になってしまいます。
一連の出来事が終わった後に人々が太陽神を讃える合唱曲を歌います。
この曲が、11⁄4拍子という特殊な拍子で、土着的ながらも神秘的な雰囲気を感じられます。
北国の人々にとって、愛というのは温度の高いものなのだろうと作品を通して感じられるような気がします。

(2)イタリア語オペラのアリア
こちらはオペラ・アリアと指定がしっかりございますのでアリアで回答したいと思います。

やっぱりオペラといえばイタリア語、というイメージもあるので、一曲に絞るのがすごく難しかったのですが、今回はこちらを選びました。
理由は後ほどお話ししたいと思います。

ヘンデルのオペラ「アルチーナ」より、アルチーナのアリア「Ah! mio cor」(私の心の人よ)をおすすめしたいと思います。

タイトル・ロールであるアルチーナは強い魔力を持つ魔女で、
男性を魔力でコントロールをして、飽きると魔力でその男性を動物や植物などに変えて無人島に住まわせ、街づくり(?)をしています。

色々あった末にアルチーナは初めて人間側に自分が利用されるというか、捨てられてしまう側に立つことになり、そのシーンでこのアリアを歌います。
このアリアは歌詞も濃厚で、非常に激しい怒りや悲しみを歌っています。
ヘンデルのオペラの特徴で怒りや悲しみのシーンを敢えて長調(明るい響き)で表現する手法がこの曲でも取り入れられていて、それがアルチーナの気位の高さとマッチしているというのが素敵なポイントです。

裏切りに対する怒りや悲しみが抑えられないけど、偉大な魔女(自称)としての矜持も捨てられない、そんな哀れさを感じます。
古今東西、悪い女の人の哀れなシーンというのはやはり一種のカタルシスがあると思います。
その後もアルチーナは結構冷酷なことをするのでなかなか共感できるようなキャラクターではないのですが、それでもやはり私たちは彼女に魅了されるしかないのだということをこのアリアで思い知らされます。

長いアリアなのですが、ダ・カーポ・アリアという一部分が「イタリア古典歌曲集」にも収録されており、声楽の初学者でもこの名シーンを歌うことができます。
発声や表現を学ぶにはとても良い曲でもありますので、その理由もあって選出させていただきました。

ただこのオペラは色々な事情で、現代での上演がちょっと難しい点がいくつかあります。そのお話はまた別の機会にさせていただきたいと思います。

(3)フランス語のオペラのアリア
イタリア語のオペラをバロック・オペラから選出したので、こちらもバロックオペラから選びたいと思います。

こちらはアリアと呼んで良いのか色々見解があるかと思いますが、
リュリ「アティス」から3幕「眠り」を挙げさせていただきます。

「アティス」は青年の名前です。普通の人間ではあるのですが、人々の心・運命を動かしてしまうほどの美貌の持ち主。近親者や王様、はたまた女神様まで彼の魅力に取り憑かれ、嫉妬や羨望に巻き込まれた末についには取り返しのつかない悲劇が起きてしまいます。

フランスのオペラには、後世に「カルメン」や「マノン」など人々の運命を変えてしまうヒロイン(ファム・ファタール)の存在がありますが、その男性版とも言えるでしょう。

リュリはこの時代のフランス・オペラの様式を作った人でもあります。
当時、オペラといえばイタリアが本場で、イタリア以外の国でもオペラはイタリア語で書かれるべき、という考え方がありました。
またイタリア式のオペラでは「カストラート」という特殊な男性歌手が大人気でした。

ただ、フランスではイタリア式とは全く違ったオペラの様式が成立しました。

  • カストラートが重用されない

  • レチタティーヴォ(語り)とアリア(独唱)で分断されていない

  • (その理由でこちらを選出していいものか悩みました)

  • バレエが特徴的に盛り込まれている

  • フランス語で書かれている

  • 「ベルカント唱法」、オペラ歌手的な歌い方にこだわらない

    リュリは当時の王・ルイ14世の好みを徹底して研究した上でこの様式を完成させたといわれています。

バレエはオペラに普通につきものじゃないの?と思うかも知れませんが、
この時代のフランスオペラは、バレリーナの登場はもちろん、歌手が簡単な振り付けで踊ったり、ポージングをしたりしているところが特徴的です。
また伴奏を担当する人も舞台衣装を着用して舞台上に立っていたりして、まるでバロック絵画が動いているようなところもとても素敵なので、機会がありましたら是非触れてみてください。

(4)ドイツリート
ドイツリートとは、ドイツ語で書かれた詩に歌をつけたものです。
お恥ずかしながら、こちらは全く知見のない分野でしたので、
この機会に中学校音楽などの教科書でもお馴染みのシューベルト「魔王」を改めて聞いてみました。

まず、この「魔王」のピアノ伴奏はたくさんの役割を持っています。
ト短調でテンポが早い3連符のオクターブ奏法の前奏がスタートした瞬間から「天気は良くないのだろうな」とか「夜なんだろうな」ということが何となく伝わります。オペラでいえば大道具とか照明の役割を伴奏が一気に引き受けていて、それを表現できているという点がすごいです。

また歌の面では、バリトン歌手が「熱にうなされる子ども」「心配する父親」「狡猾に死に誘う魔王」の3役を演じて歌っています。

伴奏と歌というシンプルな形式で、また短い時間でこのように濃密なドラマを歌うことができるリートは奥深そうで、とても興味深いなと感じました。
今後もっと調べてみたいと思いましたので、そのようなきっかけをいただいたことに感謝いたします。


今回は以上となります。
今後質問をいただきましたら、またこのように回答させていただくかも知れませんので、是非是非、マシュマロお待ちしております。
またお会いしましょう。






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