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『ムギと王さま』読んだ本 ご紹介!

りまのも僕も本が大好き。ただビックリするぐらい好むジャンルが違います。そんな僕達ですが、共通して好きなのが絵本・童話です。彼女の本棚にあった絵本を読んで数十年ぶりに児童書に触れ、心を動かされている自分に驚きました。その後も絵本や童話を読むにつれて、僕はそれまで書いていた小説をやめ、童話を書くようになるほどの影響を受けました。今回ご紹介する本も彼女に借りた本です。

エリナー・ファージョン著『ムギと王さま』
原タイトルは The Little Bookroom 「本の小部屋」素敵な響きですね。作者自身の前書きによると、彼女の家は書斎や食堂、子供部屋など本がいっぱいだったそうです。またそれらの部屋の本棚に入りきらなかった本が詰め込まれ、積み上げられた「本の小部屋」というほこりっぽいこの部屋があり、子供時代のエリナーは読書に耽ったそうです。この部屋で読書し、空想していたことが、後の作家としての下地になったことは間違いないですね。

収録作品は14編。ごく短い作品もあれば、構成のしっかりした少し長めの話もあり、童話のような昔話のような、既視感があるようだけど、それとは別の話という印象を受けました。70年ほど前に自選短編集として出版された作品とは思えない、古さを感じさせない作品集でした。

僕はどちらかと言えば起承転結のある話を好みます。本書はそれに当たらない話もありますが、ふわふわした夢の続きのような話であっても、ひねりやユーモアが効いてたり、ラストシーンが心に残ったり、面白かったですね。
以下印象に残った作品に触れていきます。

「金魚」
月と結婚して太陽より偉くなりたいと願う金魚の話です。これは面白かった。最後に金魚は世界を手に入れますが、それは……という話。

「小さな仕立屋さん」
シンデレラストーリーですが、王子様と結婚してめでたし、めでたしではないところが好みですね。「レモン色の子犬」も似た系統の話ですが、二話とも主人公の純粋さが好きです。後者の主人公・ジョーが書いたラブレター、人柄が出てて良いです。

《ねんねこはおどる》(本書では「こ」が小さいです)
ひいおばあさんとひ孫の、今風に言えばヤングケアラーなのですが、心の温まる話です。子守歌がかわいいのです。最後はよかったね、といいたくなるような、読後感のいいお話です。

「10円ぶん」
この話が一番好きです。主人公ジョニーが十円玉を拾ったことから始まる冒険の物語。外国ですから円ってことはないですが、この訳語は日本人読者をお小遣いをもらっていた時代へと引き戻してくれるようです。
僕がジョニーと同じ年齢の頃でも、もはや10円では少ないですが、親からもらった硬貨を握りしめて駄菓子屋へ走った思い出につながります。彼は駅で、今でいうガチャガチャの機械で板チョコを買おうとするのですが、間違えて切符を買ってしまう。もう泣くしかない状況。それが彼の成長を思わせる記述で締め括られるラストシーンにつながるなんて、素敵だなと思いました。

大人が読んでも面白いですし、子供時代に読んでいても、きっといい読書体験になっただろうという本です。子供への読み聞かせにもいいと思います。
エリナー・ファージョンの本国イギリスでは、彼女の名を冠した児童文学賞があるそうです。もし僕がイギリスに住んでいたら、この賞を目指したかもしれませんね。

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