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『九百人のお祖母さん』読んだ本 ご紹介!

レイフェル・アロイシャス・ラファティ著
『九百人のお祖母さん』ハヤカワ文庫SF

りまのに「何か本を貸して」と頼んで借りた本です。でも実は僕はSFがあまり得意ではありません。サイエンスフィクションなら理系まったくだめな文系人間なので理解不能になりますし、スペースファンタジーなら〇〇系第〇惑星って言われただけで興味を失います。でも藤子・F・不二雄先生が言われたように、すこし・ふしぎな物語なら割とすんなり読めるのです。この本はサイエンス、宇宙の要素もありますので、少しとっつきにくい話もありましたが、奇妙な味わいに興味を引かれました。60年ほど昔に出た本とは思えない発想の話、表紙にラファティの法螺とありますが、まさに21編の法螺話です。短編ですが、そこそこ長いものもあり、本も500ページ以上の厚みがあります。一編ずつメモを取りながら読みましたが、そのすべてを書いてしまうと無駄に長いレビューになりますので、印象深いところだけ紹介したいと思います。

時の流れに変化が起きる「時の六本指」「スローチューズデーナイト」、前者はオチが見えてしまいますが、いいなぁ、こういう力が欲しいなぁと思いながら読みました。後者も面白かった。速さを求められる時代。人生がスピードアップすると、こんなに喜劇になるのですね。
カミロイ人と地球人の邂逅を描いた連作「カミロイ人の初等教育」「カミロイ人の行政組織と慣習」地球人よりはるかに優れたカミロイ人のさりげない皮肉が妙にツボにはまりました。後者の最後で贈られたことわざが笑えます。
役に立たないもの、消したいものを消すという点が共通する「ブタっ腹のかあちゃん」「七日間の恐怖」前者は関西弁の語り口でテンポがよく、オチのブラックっぽさも好みでした。これは秀作と思います。後者もタイトルに恐怖とありますが、喜劇です。最後の少女クラリッサのセリフが笑えます。
他にも多くの人間を知っているにも関わらず、主人公の孤独が感じられる「一切衆生」、コンピュータを駆使して歴史の改変に挑んだり、消された歴史を探る集団を主人公にした三編の連作の熊(本当は熊ではないけど)による人間狩り「スナッフルズ」、罪を犯した人間を悔い改めさせるために派遣された星には罪そのものがないという「蛇の名」など面白かったです。
人を吊るす、切断するなど過激な表現やブラックな場面もありますが、笑いのオブラートに包まれてるせいか、ほとんど気にならないです。最後に触れた「蛇の名」のラストもリアルだと怖いはずが、笑いました。

法螺の類語に大風呂敷という言葉があります。僕は広げるだけ広げてオチがない話は好きではありません。起承転結とまでは言わないまでも、風呂敷が括らないと物が運べないのと同じで、何かすっきりしないのです。ベルトのないズボンを穿いて、ずり落ちるのを気にしながら外に出ているような感じに近いでしょうか。でも本書はオチのないような話でも、それほど気にならなかったです。語り口にユーモアがあって面白いのも理由の一つですが、法螺は法螺です。夢の類ですから、整合性を求めても仕方ないと思ったからかもしれません。

この作者はどんな風に作品を書いていたんでしょうね。あらすじをまとめたメモを読み返しても、まったく面白さが感じられないのです。あらすじと本編の間に相当な飛躍があり、このアドリブ感が魅力なのかなぁと思いました。

※『九百人のお祖母さん』は現在入手が難しいです。

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