見出し画像

美少年

『ゴウン...ゴウン...

ピーーーー!!

ゼラ!ゼラ!ゼラ!ゼラ!』


これは私の〝美に取り憑かれた人生〟

の開幕でもあった。



美少年。

それは危うく神秘的な物語を秘めた存在である。

少年になりたい。

その叶わない願望に突き動かされ、

少年を装い、少年を表現する私の、

一部始終にあなたは立ち会っている。



美少年。

うっとりするような
柔らかさを持つ少年もいれば、

いつも虚空を睨みつけている少年もいる。

群れを成さず、ひとり涼しい顔をしていたり、

裏表を感じさせる怪しさをまとっている。

少年はどこか憂いを帯びていて、

突然いなくなってしまいそう。

無口で無愛想な少年も、

恐ろしいほどに弁が立つ少年も良い。

氷のように冷たい眼差しで、

炎のように燃える野心を隠し持っている。

繊細な心は何度も現実に打ち砕かれ、

純粋さはとんでもない残虐性を生み出し、

日常を切り捨て、

血飛沫を浴びる少年も美しい。

世界の全てを染めようとする様も、

欲望に狂い堕ちる様も、

何も叶わず散る様すらも美しい。

少年は哀しみに溺れ、

自分が正しいと信じ、

道を踏み外す危うさがある。

自分を護る仮面、

自分では溶かせない仮面、

救われない悲劇を生き、

死を感じさせる。

また、

激しく現実にぶつかり心を燃やす少年は、

確かな生を感じさせる。


私が特に好きなのは、

黒髪で切れ長の目をした少年。

常識を外れ、我が道をゆく危うい少年。

野心と欲望を抱え込んだ少年。


最初に出会ったのは、

『ライチ⭐︎光クラブ』のゼラ。

次に『笑う吸血鬼』の毛利耿之助。

古屋兎丸、丸尾末広から、

高畑華宵、山本タカト、

伊藤彦造、石原豪人など、

大正時代〜現代までの
様々な美少年絵師を知った。

その〝日本的〟な美しさに惹かれ、

浮世絵を見返し、

さらに日本美に気付かされる。


インプットされていった美少年像が
脳内で精製され、

自分の理想の顔が出来上がった。

自分の中から生まれる少年との出会いだ。

それはメイクやイラストに反映され、

作画:桜哉 の美少年となる。

あぁ、私はこれになりたい。

自身の理想の姿が生まれたと同時に、

新たな欲望が芽生えた瞬間である。

もうぼんやりとした記憶になってしまった。

一度だけ夢の中で美しい少年に出会った。

自分の理想に限りなく近い少年が、

実体となって話しかけてきた。

もう一度、夢で会いたい。


これは地元の獅子舞のお祭りの話。

獅子取りとして舞を披露する男の子達の中に、

1人、とんでもなく美しい男の子がいて、

目が離せなくなった。

化粧と衣装と舞い、

笛や太鼓の音色、

獅子舞の非日常感。

独特な空気感に包まれた彼は、

なんとも妖しく神秘的で、

完全に浮世離れしていた。

きっと化粧を落とすと、

衣装を脱ぐと、

ごく普通の中学生。

何回か、
ほんのりと雰囲気を醸し出す少年とすれ違い、

思わず振り返ったことがある。

彼だったのかはわからないが、

聞こえないはずの笛の音が
聞こえてくるような気がした。

同じ地区のどこかに住んでいる、

名も知らない幻の美少年。


〝美しい姿で死にたい〟

と思うようになったのはいつからだろうか。

結論、美少年にはなれない。

自身の一番好きな姿、

最も美しくなれる瞬間は、

少年に変身している時。

写真に収めて、加工した顔。

その空想的な自分に酔って生きているだけ。

性別も違えば年齢にも抗えない。

悔しい。

老いる体の時間を止めたい。

私は理想の完全な姿にはなれない。

叶わない願望を抱え表現するものは、

結局、芸術の領域を越えられないのだ。

でも芸術だからできることもある。

私の等身大の球体関節人形『はらわたくん』に、

理想の美を閉じ込めた。


そしてこれからも私は、

美少年を創造し、

まとい続ける。


これが、今までの私。

現在はこの感情に何かが加わったような
変化を感じている。

それが何なのかはまだわからない。


桜哉。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?