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2023/3/1 リリイ・シュシュのすべて

U-NEXTで岩井俊二監督の『リリイ・シュシュのすべて』という映画を観た。

結構な有名作だけど、中々手がつけられずダラダラと今日まで生きてきた。というのも、あらすじを読んだだけで鬱屈した青春時代のあれこれにイジメ、犯罪…とげんなりする要素てんこ盛りで絶対疲れるから観るのがずっと怖かったのだ。

だが、鑑賞後の感覚としては意外と悪くない。こんな陰鬱とした内容の映画に対してこういう感想を持つのが正しいかは分からないが、なんだかとても“気持ちが良かった“のだ。

勿論めちゃくちゃ疲れたし、自分の学生時代に嫌だった事とか全部思い出して最悪だったけど、それ以上に何かが癒やされたような気持ちになった。エンドロールが流れ出した時とかあまりの気持ち良さに「脳が溶ける!」って思ったな。

具体的にこういうシーンが…とかそういう事ではなく、映像と音楽と陰鬱とした空気感、若さ、田園風景、青空、その全てが僕の脳と溶け合い、丁度心地の良い状態にさせられた。

この感じは、外は晴れているのになんだか心が沈んでいて布団から出れずにいる休日の昼下がりの感じに似ている。布団を突き抜けて永遠に沈んでいくような感覚。

思えば岩井俊二監督の映画はどれも観るたびに郷愁感に駆られる事が多いが、その線で考えるとこの感覚もひとつの郷愁感と言えるのかもしれない。当時肌で感じ取っていた、どこか残酷でまだ幼いぬるま湯のような日々の。

それにしても、中学校という施設は何もかもが狂っていたな…とこういう映画を観るたびに思う。残酷で、冷たくて、暴力的で、この世界に絶望する子供を育てるにはあまりにもうってつけな場所だった。そんな地獄のような場所なのに、妙に平和で間抜けな部分もあり、そのギャップがめちゃくちゃ気持ち悪かったな。壮絶なイジメと同級生のしょうもないギャグが共存する世界。蓮見くんが吐くのも無理はない。

内容が内容だけに簡単に人に勧められるものでもないが、この映画が好きな人とはどこか分かり合える気がする。そんな映画でした。

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