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9月24日のマザコン64 老人ホーム探しを始める その1

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「親の入る施設を探す」というのは、考えるだけで気が滅入る作業であるが、今や平均寿命が男女とも世界最長になってしまった日本では、誰もが避けて通れない道だと言える。
しかし介護に関係する仕事でもしていない限り、いざそういう局面に入った時に我々はなにをどれからどうやって始めればいいのかまったくわからない。

私は各所に相談に行き、ようやく「有料老人ホームの見学に行く」という段階まで辿り着いた。
有料老人ホームはあくまでいくつもある「高齢者向け施設」のうちのひとつの属性だが、「老人ホームに見学に行く」というのはどのような作業なのか? 見学に行ったらどうなってなにを話せばいいのか? なにを基準に入居先を選べばいいのか? そして入居を希望したらすぐに入居はできるものなのか?

そのあたりを、私がここで我が家の経験や感想を書くことで、読む人にいくらか情報や雰囲気を伝えられたらと思う。
「そろそろうちも施設探しの時期に来ているが老人ホームの探し方がわからない」あるいは「将来その時が来るかもしれないので予習しておきたい」、という方は引き続きこの日記を読んでみて欲しい。
これは多くの人が必要とする情報だと思うのと、毎回読んでくれている人にとってはいつもより説明が多めで退屈になるかもしれないということで、今回からしばらく無料記事にしてみる。
もちろん「少しくらいお金を払ってもいい記事だなあ」と思ってもらえたら、いつもの110円くらいサポートしていただけると大変助かる。


さて、前回の続き。

父の介護について相談しに行った民間の相談施設で、グループが運営している老人ホームの見学予約を取ってくれた。
いよいよ私は初めて、老人ホームという場所にしっかり足を踏み入れることになる。
私のおじいちゃんおばあちゃんは、みんな自宅から病院に入ってやがて亡くなるというパターンだった気がするので、老人ホームという場所を主体的に訪れるのは人生で初である。

ちなみに今回は相談所の方に予約を取ってもらったが、この後の経験を踏まえて述べると、「老人ホームの見学」は誰でもすぐにできる(民間のホームの場合)。
施設探しの流れを簡単に書いてみると、1.ネットで「有料老人ホーム 浜松」などで検索し、近隣の施設を探す 2.施設のホームページからパンフレットを取り寄せる(ネット環境がなければ電話したり直接訪問してもパンフレットはもらえるはず) 3.入居候補にしたいと思ったら、電話をして見学を申し込む 4.日時を決めて訪問し、施設内を案内してもらい説明を受ける 5.他にもいくつか見学に行って、どこにするか決める
となる。2は省略も可。

なお、「有料(民間の)老人ホーム」と「サービス付き高齢者向け住宅」については私が経験者なので間違いなくこの方法で大丈夫だが、その他の施設はもしかしたら違う手順になるかもしれない。
高齢者向けの施設は他にも「特別養護老人ホーム」や「介護老人保健施設」や「デイサービス」や「グループホーム」や「ショートステイ」など、用途別にいろいろな種類がある。
そのあたりの施設の違いについてはこのnoteでたびたび書いているので他の記事を読んでいただくか(110円だけど)、無料で手っ取り早く確実に知るにはお住まいの地域の「地域包括支援センター」に行くと丁寧に教えてくれる。
まあまずは、誰かしらの介護が始まりそうな時期が来たら地域包括支援センターに相談に行こう。それが第一歩である。私も施設探しの前にいろいろと教えてもらいに行った(パート52の時)。

なお、民間の施設である有料老人ホームも「介護付き有料老人ホーム」と「住宅型有料老人ホーム」に分かれるのだが、その違いについては少し先に書こうと思う。その4で書く。
個人的には、あんまり大きく違うものだとは感じなかったのだけど。

見学の申し込み方は簡単で、電話をして「家族の入居先を探しているんですが、そちらの施設を見学させていただくことはできますか?」と尋ねればよい。
私が探したのは「有料老人ホーム」と「サービス付き高齢者向け住宅」だが、見学を断られることは一度もなかった。すぐ「日時はいつがご希望ですか?」と聞かれて、あっさり予約が取れる。
特に民間施設の場合は「入居してくれるお客さんを探す」というのも職員さんの仕事のうちで、どちらかと言うと歓迎される雰囲気であった。一度見学に行くとその後で「入居はご検討いただけましたか?」と営業の電話がかかって来たりもする。
万が一「人手が足りないから無理です」とか見学を断られるようなところがあったとしたら、そんな人が足りていない施設は入居先候補からすぐに外した方がよいと思う。


では話を戻して、相談所を出た私は、Googleのナビを頼りに車で10分ほどのところにある「介護付き有料老人ホーム」へ向かった。そして周辺を4周ほどぐるぐると回ってから到着した(ナビを見ても迷ったのだ)。

木々に囲まれた、小ぎれいな団地のような建物である。
玄関を入ってすぐ受付があるので、名前と、見学に来た旨を告げる。
まず来客用の用紙を記入。氏名や住所、来訪時間などを書いてさらに、体調がどうとかコロナ対策的なチェック箇所もあって、これはコロナ禍だから書くのかそれとも平時でも面会用紙は必須なのかはよくわからない。

スリッパに履き替えて来客用スペースで待っていると、女性の職員さんがいろいろ書類を持って来て、ご挨拶。丁寧に名刺をいただく。
まず言われたのが、「申し訳ないのですが、今、感染対策の関係上、居住者とスタッフ以外はこれ以上先にはお入りいただくことができないんですよ……」ということ。

ガーーーーーーーン!!!
入れないのっ!!!!

………そうなのである。
病院がそうだったように、老人ホームもまたコロナ禍においては「ハイリスク群が集まる場所」であるため、感染を防ぐために徹底的な規制が行われているのであった。
受付前にロビーがあって、その先が食堂や居住エリアなのだがそちらは見学者も面会者も一切立ち入りができないらしい。

と、いうことはだよ。
今後父の生命力次第では何年も、もしかしたら10年以上とか住むことになるかもしれない住居を、我々は部屋も見ずに住むかどうかを決めなければいけないということになる。
出張で借りるウィークリーマンションならまだしも、しっかり住む予定の家を内見もせず契約しなきゃいけないなんて……。
いけないというか、そんなことができるのだろうか? ここが良い場所かどうかをどうやって判断すれば良いのだ? しかも選択を失敗した場合は自分だけ後悔する自業自得ではなく、私のミスで被害を受けるのは父なのだ。
この判断を一人で背負わされるのは、とても重い。

これはコロナ禍という特殊状況下の例なので、読者の方が何年か後に施設探しをする場合はその時には平常になっていることを願う。
部屋を見ずに部屋を探す(しかも自分ではなく他人の)というのは通常の部屋探しより何倍も神経を使うし、親の施設探しをしなければいけないくらい切羽詰まった状況でその神経を使うのは精神的負担が大きすぎる。
私なんて母親も精神病棟に入院してるんだぞ! 相談する家族も誰もいないんだ……。

ただ、これは施設ごとに対応は違った。
さすがに部屋も見ずに入居先を決めるなんて無理だろう、というところを職員さんもわかっていて、普通の面会者は立ち入り禁止だが、見学者に限り静かに建物内をひと通り見せてくれる施設もあった。
部屋まで見られた施設と見られなかった施設は、半々くらいだったと思う。
とにかく無条件で立ち入り禁止のところもあれば、割とあっさり全部案内してくれるところもあれば、「今はみんなデイサービスに出かけてるからご案内できますよ」と見せてくれたり「今の時間はみんな戻って来ちゃってるから、すみませんが部屋までは行けません……」と言われたり。
昼間の決まった時間は入居者は全員別棟にあるデイサービスに移動する、という決まりになっている施設もあり、そういうところは居住区に誰もいないタイミングだったら見学させてくれたりする。なので、見学の申し込みをする時にそれも一緒に聞いてみる(時間帯によっては見学は可能なのか)のもいいかもしれない。


便宜上、初めて行ったこの施設を「施設A」として話を進めたいと思う。
今後BCDEFといろいろ出て来るが、訪れた順番とか件数をアルファベットで表すだけなので、読んでいる人は「Aはどんなところで、Bはどうだったっけ」みたいに覚える必要は一切ない。

部屋を見られないため、この施設Aではパンフレットを元にした担当職員さんのお話を聞いて、どんな施設なのかということを把握しなければならない。
重要なことはほとんどパンフレットに記載があるのだが、それをなぞりつつ不明な点を質問したりしながら、説明を聞いてメモを取る。

まず部屋について。
室数は全部で29室。つまり最大で29人が入居できるということだ。
それがなんの判断材料になるかはよくわからないが、感覚的に、ひとつの施設の入居人数はあまり多くない方が良いという気はする。玄関とかロビーとか食堂とかエレベーターとか、共用設備もひとつだとしたら大人数で使うのは不便だろうから。(少なくともこの後も含めて玄関が2つある施設などなかったし)
あとは職員さんの人数との兼ね合いであろう。ほとんどの施設は、サイトを見れば常勤スタッフが何人いるかという情報が掲載されている。部屋数を確認したら、後でスタッフさんの数も調べて人数的に十分かどうかチェックしてみるとよい。もちろん入居者一人あたりのスタッフ数が多い方が手厚い介護が受けられるということに普通に考えるとなる。
よく考えたら室数もサイトに載っていることが多いので、これは見学に来る前に計算できそうだ。

施設Aの部屋は個室でトイレと洗面台と収納が2つつき、広さが18.9平方メートル。
部屋の広さは大きな判断材料になると思ったのだが、あとあと他のところも見学に行ってみると、8~9割方の老人ホームが同じ18平方メートルであった。これはおそらく、「老人ホームの個室は18平方メートル以上の広さがなければならない」みたいな決まりがあって、どこの施設もその最低ライン(費用対効果の最高ライン)で設計しているので同じ広さになるのだろう。違うかもしれないけど。
ベッドは介護用のベッドをレンタルすることになるので、月にベッド代で3040円かかる。

入浴は週に2回だけ。
老人ホームでは入浴は介助付きということになるので、とても毎日なんて入れないようだ。別料金を払えば入浴回数を増やすこともできるが、1回につき2750円かかるということ。回転寿司をけっこうたくさん食べられる金額で、風呂に1回……。
お風呂くらい介助なしで入れるという人もいるのだろうが、高齢者は入浴時の事故が多く、施設にいる時にお風呂で溺死したなんてことになったら施設側は大変な責任を負うことになるので、入浴の時には介助者が必ず一緒にいなければいけないようだ。といっても、入浴する人が自立した人の場合は浴室内までついて行くわけではなく、ガラス戸一枚隔てた更衣室で見守る、というくらいらしいが。

施設Aは、浜松市の有料老人ホームの中ではグレードの高いところであり、入居費用は月額が25万8千円(食費込み)。最初に支払う一時金のようなものは、ここではないとのことだった。
私は他の施設も資料請求して家に続々とパンフレットが届いているため、他施設と比べるとここの利用料金はかなり高額だというのはわかる。ただ、グレードが高いと言っても私は玄関口しか見学ができていないため、視覚的にはどこがどのように高いのかよくわからない……。
この月額には「介護保険が適用される介護サービスの利用料」というものが含まれていて、一般の人は1割負担なのだが、うちは何度も述べたように相続の関係でたまたま去年だけ1年限りで現役なみの収入があったため、3割負担であり、そうすると入居費用月額が29万5千円になる。くっ、入院代だけでなく、こんなところにまで影響(とんでもない悪影響)が……。

それに加えてベッドのレンタル料が月3040円。車椅子もレンタルする場合は月1900円。洗濯をする(依頼する)場合は洗濯ネットひとつの量で450円。
そして電気代は使用量に応じて実費、その他に床屋さんが来てくれる時の散髪代や、訪問診療による診察代や薬代つまり医療費が別途かかる。

もろもろ合わせると、うちの場合は3割負担が続くあと1年くらいは、月に30万円はゆうに超えるな……。
予算的には厳しいを超えて、無理である。来年1割負担になっても厳しすぎる。だって、何年入居が続くか、誰にもわからないのだから。
1年くらいなら金額的に耐えられるとしても、10年続きそうな場合は破産するので途中でもっと安いところへ引っ越さなければいけなくなる。でもそれは「より年を取ってからグレードの低い住居に移る」ということなので、おそらく父本人にとってもそして家族としても、心理的に受け入れがたいことだ。
ならばもう病気で余命がわかっているような状況でもない限りは、予算的に「無理をする必要がある」施設は避けるべきであろう。

……長くなって来たので、次回に続く。


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