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読書レポート『増補新訂版 アンネの日記』

最近日本人の書いた本ばかり読んでるので、気分転換にアンネの日記を読みました。今更ですが…文学作品として凄いですぅ。時間も空間も超えて響く少女の純粋な声に心洗われました。

1990年代初版のアンネの残された日記のほぼ全文の版です。以前から気になっていたのですが500ページ以上あるのでなんとなく後回しになってました。いやぁ、泣きました・・・っていうか、今更ですが文学作品として凄すぎ!!

アンネの13歳の誕生日からスタートして2年弱の間綴られます。思春期の真っただ中の自意識過剰で想像力豊かな女の子が、隠れ家から一歩も出られない生活の中で綴ります。

一番多く描かれているのは両親や姉への不満です。思春期の子供らしい心理です。あと同居人たちとの精神的、物質的にぎりぎりの生活の様子。そのストレスからの激しいいがみ合い。狭い閉塞空間での出来事が様々なアングルから動画で見るようなタッチで描かれます。鬱屈とした生活がここまで多様に描けるのかと驚きます。ただリアルすぎて読むこっちまでストレスで気分悪くなりましたが。(苦笑)

後半になると雰囲気ががらりと変わってきます。きっかけは同居する同世代の男の子ペーターへの恋心の芽生え。まるで蕾だった彼女の内面が突然にほころび始めたようでした。初恋による気持ちの高まりは純粋で眩しいような美しさです。

アンネは間もなくペーターに距離を置き始めます。そのことで彼女の内面は落ち着きを取り戻すと同時に更に大輪の開花を思わせる広がりをみせ始めます。秘めた思いに対する孤独な葛藤が幼い精神を真っ直ぐに自分の内面に向かわせ突き抜けて脱皮する感じです。恋による精神の成長の瞬間をこんな風にリアルに描いた自画像は他にないのではないでしょうか。

日記終盤でアンネは自分の精神的成長を意識し、世界へ飛び立つことを夢見て次のように書きました。
『わたしの望みは、死んでからもなお生きつづけること!その意味で、神様がこの才能を与えてくださったことに感謝しています。このように自分を開花させ、文章を書き、自分のなかにあるすべてを、それによって表現できるだけの才能を!』

この後間もなくアンネは強制収容所に送られて亡くなります。彼女の夢は実現しましが、でも彼女はもっと生きたかったことを思うと涙(T . T)です。

強制収容所に送られてからのことは日記にはありません。フランクルの『夜と霧』のことを繋げて考えながらあの時代の悲劇に改めて思いを馳せました。

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ちほ