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釣られた魚は自ら餌を取りに行く


 25歳の時に2年ほど付き合っていた10歳歳上の人と結婚した。職場恋愛の末の結婚だった。

 付き合っていた時、10歳歳下の私に彼ははっきり目に見える形で優しかった。サプライズで花をくれたり、ご飯を毎回つくってくれたり、電話で私が仕事で落ち込んだ話をしながら泣いた時は車で深夜約40分離れた場所からわざわざ駆けつけてくれた。

 それまであまりいい恋愛をしてこなかった私にはすごく新鮮に感じられたし、大事にされているようで嬉しかった。多少、価値観の違いを感じても「10も違えばそりゃ違うだろう」と思えたから特に大きな喧嘩もなかった。

 彼の年齢も年齢だったので結婚を意識するのもそう時間はかからなかった。
 お酒をのみながら、それとなく結婚の意思を
確認され(主人はバレていないつもりだったらしいがバレバレだった)その年の私の誕生日にバラの花束と指輪を渡しながらプロポーズしてもらった。

 ここまではいたって順調。問題が起きたのは一緒に暮らしてからだった。

主人が夜寝ない。

 疲れて帰ってきてもビールを飲みながらゲームをしたり、テレビを見たり、毎日夜更かしをしている。
 休み前とか時々ならよくあることだと思うが
毎日毎日3時4時まで起きていて、そのくせ朝なかなか起きられない。リビングで寝落ちしたままギリギリまで寝て、朝食も食べずに仕事へ行く。


 結婚する前、休みの前の日は必ずうちに泊まっていた。連休はあまりなかったから週の半分位はうちにいた。そんな半同棲みたいな生活をしていた頃は寝る前はベッドで今日あったことや仕事の愚痴なんかを話して、そのまま日をまたぐ頃に一緒に寝て、朝は少し弱かったけど朝食ができる頃には起きて一緒に食べていたのに。

 今になって考えたら私の家で過ごしていた時間は彼にとって「生活」ではなかったのだろう。たぶんお出かけとかお泊まりとか、そういう「イベント」だったんだと思う。半同棲なんて思っていたのは私だけだったのだ。


 私は「失敗した」と思った。この人のことはおおよそ分かったつもりになっていたが、釣った魚には餌をやらないタイプだったらしい。義理の両親と同居であったし、仕事も部署が変わってまだ慣れなかったし、今までみたいに話をしてすっきりしたら彼の体温を感じながら眠りにつきたかった。そうしたら次の日も1日頑張れると思っていたのに。こんなの詐欺みたいじゃないか。
と、思うくらいには私にとって大事なことだった。


 私は今までの生活を取り戻すべく、どうにかして彼を変えようと頑張った。怒ってみたり、甘えてみたり、諭してみたり、ちょっと放っておいてみたり。
 結論、彼は変わらなかった。結婚前あんなに優しかった彼はどこにいったのだろうと思った。

 そんな私たち夫婦だが、私が彼の夜更かしに加わる形でうまくいっている。ベッドで話していたことをリビングでテレビを見ながら話している。温もりが欲しい時にはリビングで私も一緒に寝落ちする。そもそも時間が経つにつれて1人で寝るのも特に寂しくなくなった。釣られた魚は自分で餌をとれるようになったということだ。
 念のために言うと主人は今も分かりにくいけれど優しい。それが分かるようになったから釣られた魚は自分で餌を取りに行こうと思ったわけなのだから。


最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
ジューンブライドなので結婚の話を書いてみました。
主人は今も夜更かし真っ最中です。


うさぎ

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