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ふたりが教えてくれたこと『ののはな通信』読書感想文

こんにちは。note企画 #読書の秋2021 が始まりましたね。この機会に今週読んだ三浦しをんさんの『ののはな通信』について感想を書かせていただきたいと思います。どうぞ宜しくお願いします。

『ののはな通信』 著者 /三浦 しをん

はじめに 〜どんなお話?〜

『ののはな通信』は2人の女性が高校生から40代くらいまで続けた手紙のやりとりで構成された書簡形式の作品です。

ののは常識的でクール、はなは自由で天真爛漫。
ふたりはミッション系の女子高校で出会い、果敢な時期にお互いに戸惑いながらも特別な感情を抱きます。燃えるような時期を過ごした後それぞれの人生は別に進み、再開。手紙やメールでの連絡は途中切れながらもその後長い間続きました。

一人称で書かれた小説とは異なり、地の文がありません。手紙を読み2人の気持ちや出来事を想像します。運命に翻弄されながら考え、強く生きるふたりの姿が印象的でした。

単行本も文庫版も表紙は可愛らしくて内側である中身は外側と異なることが、彼女達そのものでした。


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ふたりが教えてくれたこと

『ののはな通信』ではまだSNSが無い昭和の頃、同じ高校に通う2人が手紙を送り気持ちを伝えます。今の胸の内を相手にただ伝えたくて、知って欲しくて。時に互いに同時に書くほどそこには言葉が溢れていました。

昭和を知る40代の私にはそれは懐かしいやりとりで、微笑ましくもある風景。さらに彼女たちは親友以上の関係でもあるからその絆は海よりも深い。
約25年に渡る波乱万丈な大人になる日々を手紙を通して想像し、2人の未来はどうか幸せでありますようにと願いながらページをめくりました。

やがて予想もしない結末を読み終え一晩経って今気付くのは、ふたりは人生に必要なことを教えてくれたのではないかということです。

手紙を書くように知り考え想像すること。
思考と想像を駆使して相手を想うこと。
そしてなにより、考え続けること。

これらはののが手紙の中で記したメッセージ。
想像し考えることを忘れずにいれば、何事も自分ゴトになり景色は変わってくるのだと気付かせてくれました。

さらにふたりのように、“過ごした特別な時間”や“何かに心から夢中になったこと”があれば、それが心の蝋燭の芯になる。誰かを本気で愛したことも、あの時頑張った部活も、アーティストを真剣に応援した時間もみんな宝物。物質的なモノは有事に無くなってしまうけれど、これら内側にあるものはその道の先を歩く光や温もりになるのだと思います。


SNSですぐ連絡が取れる今も、Twitterを開けば「地震大丈夫?」という言葉がトレンドに入ります。
現代においても誰かを心配する気持ちは無くなっていないことが可視化されています。そんな連絡がすぐに出来る時代にこそ、忘れてはならない大切なことをこの作品から教えてもらいました。


ののさん、はなさん。
大事な手紙を読ませてくれてありがとう。

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おわりに

圧巻の濃厚な448ページでした。(単行本)
家族も入り込めないふたりだけが知っている気持ちが手紙やメールの中に閉じ込められていました。
今は彼女たちの人生を表すのには、このボリュームが必要だったんだなとひしひしと感じています。

#読書の秋2021  は、11月30日まで開催中とのことなので、引き続き参加したいです。


今回の『ののはな通信』文庫化の際、解説を書かれたのは辻村深月さん。その辻村深月さんの短編が入っているアンソロジーがnote課題図書にありましたので読んでみたいと思います。


お読みいただきありがとうございました。














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