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名探偵ボディビルディング【毎週ショートショートnote】

20XX年現在。世の中はAIによる犯罪が増えていた。
何せ、人間なら直前で倫理感や罪悪感で留まるであろうシチュエーションで躊躇うことなく遂行するのだ。命乞いも意味を成さない。

AIによって人類は考えるという事を手放した。AIが作ったニュースに踊らされ、政治家や著名人の醜聞が起こるたび、短絡的に一般人がAIに完全犯罪を行うよう命じるから、現在は法律やドラマ、声優、スポーツまでAIによるものに取って代わられた。無名の人間も安心していられない。ちょっと因縁をつけられただけで、命の危険にさらされてしまう。

探偵は命の危険を回避するため、肉体を鍛え上げたわけである。名付けて「名探偵ボディビルディング」。完全犯罪の綻びを筋肉によって一刀両断し、犯人をきちんと自分の罪を諭させるのであった──

「っていうのはどうよ」
小説家は安物の万年筆で殴り書きしたあらすじを編集者に渡した。

「今の技術のAIでも、もっとマシな設定を作ってくれますよ」



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