さらぬわかれ 88

「…栄子。」
栄子の名前を呼んだのは、亡霊ではなく、恒太本人だった。

しかし、肉体の主導権はまだ亡霊の方にあるらしく、刀を持つ手は栄子に斬り掛かろうとしている。

「栄子に…危害を…加えるなんて、許さない!!」
恒太は亡霊に抗うように、自分の足に刀を向けた。
そして、雄叫びを上げながら、左大腿に刀を突き刺した。

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