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白梅の薫る頃

これは「紫陽花の季節」に出てくる白梅の精霊【梅さと】の詩です。

愛しい貴方へ

私がこの世に在ったのは、
貴方に出会う為でした。

存在が違うと皆が言ったけど、
お互いの気持ちは同じでした。

貴方はとても私を愛しんでくれました。

いつか貴方は私以外の人と
結ばれると分かっていました。

貴方に会えない日々が続いて
私は守られている場所から出る事を
決めました。

消えてしまうと分かっていても、
貴方に会いたかったのです。

消えてしまった後、
人知れず貴方は泣いていました。

今はもう
貴方が美しいと言ってくれた髪も
抱き締める為の腕も持たない私。

貴方は庭に白梅を植えました。
私はその白梅に宿りました。

何度か春が巡り、
貴方は大切な人に出逢いました。

私は貴方の幸せを願って、
花を咲かせました。

二人は馥郁たる香りに、
顔を綻ばせてくれました。

もう泣いている貴方はいません。

貴方が笑顔でいる事が、私の願いです。

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