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紫陽花の花言葉 3

兄と俺は、母親が違う。兄の母親【透子とうこ】は一族の当主で、古い家柄を守る為に父【彬良あきら】と結婚した。当時、一族の若者は女性しかいなくて、有能な父を婿に迎えたのだ。しかし、兄の母親は、6月30日に兄【夏越なごし】を産み落とすと、亡くなってしまった。

父は、兄の母親の一周忌が過ぎると、俺の母親【律花りっか】と再婚した。兄の母親と俺の母親は従姉妹だった。一族はどうしても父を離したくなかったし、俺の母は父を手に入れたかったのだ。再婚した翌年4月4日、俺【清明せいめい】が産まれた。

俺を一族の跡継ぎにしたかった母は、兄の存在が疎ましくなった。兄を離れに住まわせ、世話係に育てさせ、自分は執拗に厳しく当たり散らし、俺には兄と関わらせなかった。兄は、一族の行事に参加することも禁止された。兄にとって、俺の母親は恐れの対象でしかなかった。

不可解だったのは、父の態度だった。父は、母が兄に冷たい仕打ちをするのを止めなかったのだ。父にとっては、実の息子に違いないのに。

実家にいた頃の兄は、失望の眼差しで、遠くから父を見ていた。

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