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さらぬわかれ

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村の1本の咲かない桜の木。 その木には、曰くがあり…。 8歳のまま成長を止め意識のない姉とその妹の話。 GREEのコミュニティで発表していた小説(2009/1/17~)の完全…
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#桜の木の幽霊

さらぬわかれ 85

栄子は、両親に気付かれないよう、そっと病院を立ち去った。

深夜の村は、昼間と違って、闇の中で魔物が蠢いていそうだった。

それでも、栄子は行かなくてはならなかった。
さくらの元へ。
大事な人達を失わない為に──

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さらぬわかれ 91

人影ははじめ、像を結んでいなかったが、ゆっくりと着物姿の男性へと変化していった。
男性の顔は、恒太や恒孝の面影があり、血縁であると分かった。

「こうの…しん様。」
さくらが、男性の人影に話し掛けた。

「え?」
山村家全員が驚きの声をあげた。

「急に着物の女の人と男の人が見えるようになったんだけど。栄子…あれって幽霊だよね?」
恒太がさくら達を指差した。

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