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さらぬわかれ

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村の1本の咲かない桜の木。 その木には、曰くがあり…。 8歳のまま成長を止め意識のない姉とその妹の話。 GREEのコミュニティで発表していた小説(2009/1/17~)の完全… もっと読む
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2021年12月の記事一覧

さらぬわかれ 56

「オジサン、誰?」
この村は小さいから、「祟りの子」と呼ばれている栄子を知らない人の方が珍しい。
逆に栄子だって住んでいる村人を把握している。
値段の高そうなスーツを着ている人間なんて、栄子がこの村に引っ越してきてからはじめて見た。
ニコニコしているけど、どこか胡散臭い雰囲気である。

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さらぬわかれ 57

「怖い顔をしないで。別に君をいじめようなんて思ってないからさ、ここの村人みたいに。」
恒孝は栄子が村人から疎外されていることを知っているようだ。

「僕はむしろ君の手伝いをしたいんだ。
君はお姉さんの『祟り』を何とかしたいのだろう?」
「何でそれを…。」
栄子はうっかり動揺してしまった。恒孝は栄子に揺さぶりをかけたのだ。

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さらぬわかれ 58

「ただ、条件がある。
うちの恒太に、この村を出て東京の高校を受験するように君から頼んでくれないか?」
恒孝の狙いは栄子ではなく恒太だった。

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さらぬわかれ 59

「こ…恒太。苦し!」
恒太に引っ張られ全力で走ったので、栄子は息が切れてしまった。
「ゴメン。」
栄子の声に我に返った恒太は、ようやく走るのを止めた。
しかし恒太は栄子の手を離そうとはしなかった。

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さらぬわかれ 60

恒太はしばらく「うーん。」と唸っていた。
幽霊の話という時点で、信用性に欠けている。
「…栄子は嘘が下手だし、きっと本当なんだろうな。」
栄子の話は、恒太に何とか納得してもらえたようだ。

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