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戦争はなくなるのかも。総力戦では反戦派が多数意見になる。民主国家ではGOしにくい。

ナポレオンまでは、戦争とは軍人だけのものであり、民間人からすると他人事だった。政治の一部に過ぎなかったのだ。

現代日本人の多数にとって、政治が他人事であるように、1800年頃までは、一般人には戦争は無関係だった。侵略されない限りは、だが。

しかし、どの国も民主主義ではなかったので、反戦の意識を持っていても、どのみちどうしようもなかった。

また、通信手段も交通手段もなかったので、戦闘は小規模なものであり、数10万人~数100万人を動員するような大戦争は起きなかった。そんな作戦は実行不可能だったのだ。

それに、国民が少ないので兵士も少なかった。また産業革命前だと、大した武器もなかった。

それに、戦争は国庫の収入を得るための、重要手段だった。侵略戦争のことだ。帝国主義とは、ぶっちゃけ略奪行為をかっこよく言っただけだ。

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ナポレオンから、状況は変わったらしい。民主主義国家による総力戦に変化した。一般人は戦闘に参加しなくても、経済的負担を強いられるようになった。また反戦の意見を言えるようにもなった。少なくとも建前では。

日本だと、日清、日露戦争は、これに該当する。しかし、通信手段と報道機関が貧弱であり、一般人は政治と戦争の(正確な)情報を知ることが困難であり、民意は反映されなかった。

WW2ぐらいになると、ラジオが登場して、かなりの情報が一般人に伝わるようになった。その一方で、ドイツや日本ではマスメディアを利用して、政権が世論を操るようになり、かえって大規模戦争が起こりやすい状況だったようだ。

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世界的に見ると、ベトナム戦争ぐらいから、一気に反戦思想が政治に影響するようになったらしい。ベトナムで米国が負けたのは、世論が戦争に反対したからだ。

この辺りからは、戦争大好きの米国でさえ、開戦は難しくなった。だからしばらくの間は、グレナダ、パナマなどで小競り合いをしているだけだった。これらは議会の承認なく行われた「小さい戦争」だ。

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その後、フォークランド、第一次イラク、中越戦争などがあったが、やはり大規模戦争には発展していない。第一次イラク(湾岸戦争)は多国籍軍の動員数は50万人を超え、大軍による作戦となったが、実際の戦闘は航空機だけでほとんど片がついたらしい。爆撃機と対戦車ヘリだ。
 米軍が勝って当たり前の戦闘であり、米軍の死傷者はほとんどいない。(注1)

注1:米軍の死者はわずかに113人だ。しかもそのうちの44名は友軍による誤射だった。

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米軍によるアフガニスタンと第2次イラク戦争は、戦争と言うよりは、長期の占領、治安維持作戦だ。金はかかるが死傷者は少ない。

ネットで情報が大量に広まるようになったので、もはや米国政府が軍人を死なせることができなくなったのだ。

また米政府は、現代を「対テロ戦争の時代」と呼ぶことがあるが、現実には、テロリズムはほとんど実害がない。9.11は米国史上最大のテロだが、死者はわずかに3000人だ。

ヒトラーは独軍の死者を280万人も出した。スターリンに至っては1500万人だ。この事を考えれば、テロの実害はないに等しい。

なお、米軍が9.11以降に軍事作戦に費やした費用は、驚くなかれ5.6兆ドルだ。大半はイラクとアフガニスタン。この金額は米国の1年分の国家予算とほぼ等しい。現代の戦争はあまりにも金がかかる。これも戦争が起こりにくくなった理由の一つだ。(注2)

注2:こういう一面もある。この5.6兆ドルの予算を戦争に費やしたために、米国の貧困層の人々が一体何人死んだだろうか?
 
米国の貧困層は6000万人ほどであり、彼らへの食糧支援の予算が年間で1000億ドルだ。そして、この金額は十分ではない。一方で、その50年分の費用が「対テロ戦争」に投じられた。その金があれば失わずに済んだ命は、到底3000人どころではない。

おそらくは、米国は数千人のテロ被害を防ぐために、数10万から数100万人の命を犠牲にしている。

人間とは合理的判断ができない生き物なのです。

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総じて、大規模戦闘は起こりにくくなっているようだ。戦争は総力戦にならざるを得ず、民主主義国では民意が同意しないと戦争を継続できない。情報が大量に拡散するようになり、政権が世論を操るのも難しくなった。

どうやら、人類は戦争を起こさなくなったようだ。もはや戦争は政治の手段としては機能しない。一般大衆がそれを許さないからだ。

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しかし、ここで大問題がある。国家が民主主義国とは限らないのだ。

独裁国家、専制国家は戦争を仕掛けてくる可能性が高い。

だから、結局の所、防衛力は必要だ。しかし大規模戦争はおそらく起きない。

現代の文明社会では、非民主主義国は巨大な経済力を持てない。

そして現代の軍事力とは、すなわち経済力だ。中国の経済力が幻想だと分かってしまった以上は、仮に開戦しても非常に短期で終了すると考えるのが妥当だろう。

中国に継戦能力はない。不測の事態で意図しない開戦となったり、習近平が勢いで開戦することはあり得る。しかし、持続はできない。彼らは負けるだろう。

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