私にとっての上高地
上高地、神降地
ここにはやっぱり神様がいる。
「こんなに綺麗な川、初めて見た!」
と、観光できている風の女性が言う。
(そうでしょ、そうでしょ)
と隣りにいる私は、心の中で思う。
川だけじゃない、
山も木々も足元に咲く植物や、サルまでもみんなきれいだ。
そして、雨も
台風10号が迷走している29.30.31日
私は、息子と上高地でキャンプをする予定で有給を取っていた。
台風が発生した当初は、キャンプの日までには、台風は行ってしまうから問題ないよ。
と、気にしていなかったが、
ダラダラと進む台風に、キャンプの予定が危うくなった。
毎日アルペン号のバスを予約しているが、キャンセルすればすでにキャンセル料がかかる(毎日アルペンのバスは、ツアーバスなのでキャンセル料はお高く、8日前からキャンセル料がかかる)ならば、ギリギリまで様子を見る事にした。
流石にテント泊は不安があって、ケビンに泊まることにして、予約をとった。
そして、夜行バスで出発する当日、
30日の上高地の天気は曇り予報、31日は曇りのち雨。
デーキャンプが出来そうだね!
と呑気な母に、
息子から、
『普通に考えたら台風来てる時に山に行くのなんて信じられないと思ってるので、ちょっとでも危なそうなら行きたくないんだけど😞』
と、LINEが来た。
間髪入れず、
『友達といく約束だったとしたら俺は絶対キャンセルしてるよ😞』
と送られてきた。
その通り、友達を誘っていたら、もうとっくに中止にしていたと思う。
息子だから、お母さんに付き合ってくれるよね?なんて甘えていた。
手厳しいLINEに、心をぐさりとつかれ、
出発当日になって、ケビンをキャンセルした。
では、この有給、どう使う?どう過ごす?他に行ける山域はある?
問答を繰り返したが、
私が行きたいのは上高地だった。
初めて行ってから魅了され、毎年行っている上高地、今年もあの景色に会いたかった。
そして、何より「てんきとくらす」のサイトで、上高地は登山に適した『A』なのだ。
息子のバスだけキャンセルして、
私は一人、上高地に行く事にした。
キャンプではなく、山小屋泊で。
山登りではなく、上高地散策で。
新宿の都庁駐車場からバスは出発する。
3列シートと4列シート2台のバスがここから出発するが、到着したのは3列シート1台。
キャンセルが相当あったとみえて、3列シートにアップグレードして(予約時3列シートは満席で取れなかった)新宿を出発した。なんてラッキー🤞
出発したバスの外は終始静かで、
台風が来ているとは思えなかった。5時過ぎに到着した上高地も、雲は残っているが、風もなく静かな朝を迎えている。
雨が降って無ければ、明神から徳沢まで歩こうと決めていた。
しかし、この時間にバスを降りる人達はガチ登山の格好だ。刺激を受け、焼岳登っちゃう?なんて、一瞬思う。そのくらい気持ちのいい天気だ。
持ってきたおにぎりを食べて、
身支度を整えて、歩き出す。
とすぐに迎えてくれるサルの親子。
一心不乱にシナノ笹の芽を食べている。
朝もや立ち上る梓川は、今日も青々とした水が、洋々と流れる、綺麗だ。
河童橋は、まだ人がまばらだ。
その向こうに見える穂高連峰は、モヤが出たり消えたりしながら、その険しい稜線を見せ、圧倒的な大きさで、迫ってくる。
静寂の岳沢湿原では、マガモとオシドリ達が食事中だ。静かな呼吸を続ける大きな自然の中で、安心してエサをむさぼる姿が愛らしく、相当長い時間ここにいた。
明神に続く道も静かだ。
明神池は帰りに寄ることにして、明神館の前で、コーヒーを入れる。
明神岳も優勢な姿を見せている。
さらに小1時間歩くと、芝生が綺麗な徳沢に到着した、時間はたっぷりあるので、ここでゆっくりする。
山から降りてきた人、これから山へ向かう人、ここは登山の交差点の様だ。
たくさんの人が入れ替わり、立ち替わりやってきては出発していく。
「どこの山に登っんだろう?」
「この人達はどこの山へ行くのだろう?」
こんなに風もなく天気がいいなら、山に登れたかも?欲が出る。
でも、こんなに人が少なくて静かな上高地も中々味わえないだろう。
のんびり来た道を、戻る。
穂高神社の奥宮で、今日来れた事の感謝を伝え、
入ってみたいと思っていたカフェ
「カフェドコイショ」でフルーティなビールを頂く。
今回泊まるのは、いつか泊まってみたいと思っていた「西糸屋山荘」さん
男女別相部屋、お風呂があって、ラウンジでコーヒーや紅茶が飲めて、11000円は、昨今の山小屋料金(13000〜14000円)と比べるドとてもリーズナブル
2段ベット4つと4畳半の和室のあるお部屋は、清潔で心地よい。
夕食の時間まで、河童橋近辺を散歩する。
穂高連峰は、太陽に照らされて、緑の木々をキラキラさせ、山肌の白を際立たせている。
梓川のブルーと川沿いに揺れるケショウヤナギの美しさ、どれをとっても、ここにはやっぱり神様がいらっしゃる、と思わせる。
「あー、きれい!」
何度もつぶやく。
今年の東京の異常な暑さで、
私は少し熱中症気味で、常に身体に熱がこもった状態だった。
深呼吸しても、熱を帯びた空気は重く苦しく、呼吸ができない!という感覚があった。
ここ上高地に来て、久しぶりに呼吸をしている。深呼吸が出来る。
気持ちいい、生き返った。
神様、ありがとう。
こんなにゆっくり、上高地を散策したのは初めてだ。
多くの人の努力で、この素晴らしい自然が守られている。
微力ながら、この素晴らしい自然が守られる様、将来にも引き継がれる様、協力していきたい。
そして、一緒に行く予定だった息子にも、この自然の美しいさとダイナミックさを、写真だけじゃなくて、肌で感じさせてあげたい。
「えー、こんなに天気がいいなら、行けば良かった」
と、悔しがっている息子。
また来年行来ましょう。
いつまでも、いつまでも、
この自然が、素晴らしいままであります様に。
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