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ワルツ、猫か犬か?

猫も好きですが、スヌーパーな僕は完全に犬派です。

レーベルには「猫のワルツ(Valse du Chat)」と書いてありますが、調性は変ニ長調。

おや?

そうです、予想通りの「小犬のワルツ」なのです。
演奏者兼編曲者のルニエは、よほどの愛猫家だったんでしょうか。

いや、そんなはずはありません。

それは単なるミステイク。

昔のSPレコードには、タイトル表記ミスどころか、途中まで違う曲を演奏していて「(あっ!間違えたっ)」で再スタートしている様子までカットされずリリースされていたりと、とっても大らかなのです。

タイトル間違いなんて、よくある些細なことなのです。Sorry!

さて本盤、もちろん名演奏レコードです。ルニエは当時珍しく女流作曲家として地位を築き(セシル・シャミナードの苦労話を連想)、作編曲をしながら演奏家としても活躍、そして更には一流の門下生まで多く輩出した歴史的な音楽家です。

ハープ編曲の「小犬のワルツ」のSPレコードは珍盤です。
しかし、「猫のワルツ(34-3)」だったらもっと珍しいプログラムとなったんですけど、まあ予想通りでした。

さて、このレコードはSakuraphon CDの偏愛的アンソロジー「ショパン演奏の秘かな愉しみ」シリーズでお披露目したいと思います。
前作の第三弾「偉大なるショパンジー」は、とにかく現代的な演奏とはかけ離れた自由奔放過ぎる歴史的録音ばかりを選んで編んだもので、特に幻のレコードとしてマニア垂涎のレア盤も世界初収録してある全方向に向けた復刻CDです。
マニアに限らず、予備知識ゼロでも目一杯お愉しみ頂けるので、ショパン歴史的ピアニストの入門盤としても喜んで頂いております。

末筆になりますが、最後に演奏者の略歴です。アンリエット・ルニエ (1875-1956)はフランスのハーピスト兼作曲家。作曲をテオドール・デュボアやマスネなどに師事。門下に(同じ師匠をもつ同門でもあります)カルロス・サルセードなどを有する巨匠ですが余り日本では知られていないのでは?
これを機にどうぞお見知りおきを。

文責 : 夏目久生

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夏目久生(Sakuraphon)
皆様からいただいたサポートは、ピアノ歴史的録音復刻CD専門レーベル「Sakuraphon 」の制作費用に充てさせていただき、より多くの新譜をお届けしたいと思います。今後ともよろしくお願い申し上げます。