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統合失調症

 統合失調症は、幻覚妄想といった本格的な症状を持つ進行性の病気であり、精神疾患の中でも重症感の強いものである。発病危険率は0.7~0.8%とされており、かなり大きな数字である。この数値は世界各地でほぼ同様であるとされ、文化や社会の型に依存しない、人類という種に共通の疾患であるということを示唆している。

 統合失調症の代表的な症状として、実際には存在しない話し声や会話が聞こえてくる幻聴や、根拠なく確信する被害妄想がある。これらを陽性症状あるいは、産出性症状という。陽性症状の内容として、自分の内面と外界の現実との区別が失われることが認められる。これを自我障害と呼ぶ。一方、感覚鈍麻、無為・自閉などといった症状を精神機能が低下するといった意味での陰性症状もある。これらの陽性症状と陰性症状をさまざまな組み合わせで生じながら、長い経過をたどっていくのが統合失調症である。

 統合失調症の症状や経過は多彩であるため、いくつかの病型に分類される。妄想型・破瓜型・緊張型はその代表的なものである。①妄想型:幻覚・妄想など陽性症状が本格的に発展する。②破瓜型:幻覚や被害妄想も認められるが、妄想型ほどでなく、陰性症状が徐々に進行して無為な生活に引きこもる。③緊張型:激しい興奮状態と混迷状態と呼ばれる無反応な状態とを繰り返す緊張病症候群が特徴。

 統合失調症の治療においては、薬物療法が特に重要であるとされている。今日まで多くの治療薬が開発され、予後は劇的に改善された。この作用機序について詳しく検討された結果、共通の特徴として脳内のドーパミン神経伝達を抑えることが分かってきた。このことから、統合失調症はドーパミン神経伝達が過剰になっているもと推測されている(ドーパミン仮説)が、発生機序については不明な部分が多い。遺伝などの先天的な条件が基礎となり、そこにストレスなどの後天的な要因が加わって発症に至るとする脆弱性ストレスモデルが、共通理解として受け入れられている。

 

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