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皮膚科(アトピー性皮膚炎ほか)の名医20人を特別公開

いまや国民病となっているアレルギー疾患について『国民のための名医ランキング』で紹介されている戸倉新樹先生にお話を伺いました。戸倉先生は、皮膚リンパ腫からアトピー性皮膚炎、乾癬ほか専門が広範囲、手術経験も豊富です。先生は、「アトピー性皮膚炎は、2018年に10年ぶりの新薬デュピルマブが発売され、以後5年で7つの新薬が登場し、アレルギー性皮膚炎治療の未来は明るい」と語っていらっしゃいました。



名医にインタビュー 戸倉新樹 医師

とくら・よしき 日本皮膚科学会副理事長、日本研究皮膚科学会理事長、日本皮膚免疫アレルギー学会理事長を歴任。専門分野は皮膚アレルギー、アトピー性皮膚炎、皮膚リンフォーマ、乾癬、光線過敏症など全ての皮膚疾患を診る。

中東遠アレルギー疾患研究センター長/浜松医科大学 名誉教授

各科連携のアレルギー疾患研究センター

編集部:戸倉先生が所属されている病院の、アレルギー疾患研究センターについて教えてください。
戸倉先生:診療の建物が特別にある訳ではなく、バーチャルな組織として活動しています。呼吸器内科、小児科、皮膚科、耳鼻科、眼科、総合内科(漢方)の6つがバーチャルにつながっています。
センターで中心的になっている科は皮膚科ですが、小児科も食物アレルギーを中心に多くのアレルギーの患者さんを診ており、食物負荷試験などもよく実施しています。症状が特化していれば各科に直接行ってもらいます。振り分けが難しい症状の場合は私が判断します。
アレルギー性疾患の症状が様々であることから、皮膚科、小児科、眼科、耳鼻咽喉科、消化器内科、呼吸器内科といった各科が連携するアレルギーセンターの設立の流れは他の病院でもあります。
ここの皮膚科は広い領域を扱うので所属医師が4人~5人います。普通、皮膚科医は炎症性疾患(アトピー性皮膚炎、乾癬)と悪性腫瘍(皮膚がん)を診る皮膚科医とに分かれますが、ここの皮膚科では全部の皮膚疾患を診るのがコンセプトです。
我々の病院ではアトピー性皮膚炎の紹介患者さんがたくさん来られるので、数多く診ています。重症な患者さんが多いです。『EASI』というスコアで重症度を評価します。私に紹介される患者さんの90%はスコアが16以上の重症な方です。

炎症性皮膚疾患から皮膚腫瘍まで広く診療

編集部:手術数が非常に多いですね。
戸倉先生:昨年は37例の全身麻酔手術がありました。大学病院の皮膚科でも全身麻酔を37例やっているところは珍しいです。全部の皮膚疾患を診るのは私のコンセプトです。私は40歳代の頃,浜松医大皮膚科の腫瘍グループにも関わっていました。手術をやることは重要です。手術から薬物療法まで一貫して悪性腫瘍を扱うことが基本となるからです。
実は皮膚の炎症性疾患と皮膚がんの見極めは、結構難しいのです。誤診してしまうと大変なことになります。ここで研修する若い先生にも、炎症から腫瘍まで広く診療する能力を身に付けてもらいたいと思います。

アトピー性皮膚炎の治療に朗報! 初の生物学的製剤の登場

編集部:アトピー性皮膚炎の新しい薬について教えてください。

『国民のための名医ランキング2024~2026年版』50頁より

戸倉先生:病気の病態が明らかになってきて新薬開発が進み、特に中等症以上の患者に対する治療は大きく変化しました。
2018年、アトピー性皮膚炎治療薬としては初の生物学的製剤であるデュピルマブが使用開始となり、2019年には自己注射も可能となりました。生物学的製剤とは、遺伝子工学などを用いて作製された特定の物質をターゲットとした分子標的薬です。
今まで様々な種類の生物学的製剤が開発され、リウマチ性疾患などを対象として広く用いられるようになってきました。既存の治療ではコントロールが難しかった種々の難治性炎症性疾患に対して優れた効果を示します。
それ以前は効く薬が本当に少なかったのです。アトピー性皮膚炎の既存治療で十分な効果が得られない患者さんに、体内で過剰に起こっている異常な免疫反応を抑える「シクロスポリン」という薬がありますが、副反応の問題がありました。
アトピー性皮膚炎の治療としては良いとは言えない時代が長く続き、いかに外用薬を塗るか、いかにかないかということにかかっていました。それを教育入院で指導していました。
今でも外用療法が大切なのは変わりませんが、新規治療薬が登場し、新たな生物学的製剤もいくつか治験が行われています。
デュピルマブは、一般の開業医でも皮膚科学会に登録すれば使えるようになりました。ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬を含めて、それらのうちどれかを使うというのがポイントだと思います。

『国民のための名医ランキング2024~2026年版』48頁より

新内服薬ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬

編集部:ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬とはどういう薬ですか。
戸倉先生:アトピー性皮膚炎の発症には、複数のサイトカイン(体内の生理活性たんぱく質)が関わることが知られており、JAK阻害薬はこれらのサイトカインのシグナル伝達経路を阻害することから、元は関節リウマチをはじめとする疾患に使われ、アトピー性皮膚炎にも効果を示します。
JAK阻害薬は、2020年にバリシチニブが、2021年にはウパダシチニブ、アブロシチニブがアトピー性皮膚炎に使えるようになり、現在3剤が使用可能となっています。
問題は薬価が高いことです。3割負担で一カ月、4万数千円です。その半額の薬もあります。
編集部:それはどれくらいの期間、投与するのですか。
戸倉先生:続ける期間に決まりはありません。しかし、一生続けるのは非現実的で経済的に負担も大きいので、良くなったらやめる患者さんもいます。一カ月から二カ月で再評価し、継続するかを検討します。良くなったら漸減ぜんげん(次第に減らすこと)、あるいは他剤変更する場合もあります。
アトピー性皮膚炎は悪い状態がずっと続いている患者さんがいますので、どこかでリセットしなければなりません。そういう意味では良い薬だと思います。多くの自治体では高校生以下には、『乳幼児医療費助成』があります。ですから、高校卒業までにコントロールしてしまうという考えがあります。アトピー性皮膚炎を今後全く出ないようにするのは難しいですが、社会的な生活を無理なくできるようになることが目標です。

アトピー性皮膚炎の原因は何か?遺伝子バリアント、掻破そうは行動

編集部:アトピー性皮膚炎の原因は何でしょうか。
戸倉先生:皮膚のバリアがやられることで、たんぱく質の抗原が皮膚を通じて侵入することが一番の問題です。なぜ、皮膚のバリアがやられるかというと、一番知られているのは「フィラグリン」という角層構成たんぱく質があり、それが欠乏することで起きます。なぜ、フィラグリンが足らなくなるかというと遺伝子バリアントです。つまり体質ということになります。フィラグリンの遺伝子はお父さんとお母さんから一対をもらっていますが、どちらか、あるいは稀に両方に変異がありアトピー性皮膚炎になっているケースがあります。遺伝ですね。そういう方は手の皺がはっきりと見えます。

編集部:アトピー性皮膚炎の患者さんをたくさん診て来られたと思いますが、行動的な特徴はありますか。
戸倉先生:あります。アトピー性皮膚炎の方は手荒れになります。大人なら主婦湿疹(手湿疹)です。もちろん、バリアがやられているから、手の湿疹になるわけですが、なりやすい人となりにくい人がいます。潔癖症の方はなりやすいです。ちょっと手が汚れるとすぐに石鹸で洗う。一日に20~30回、手を洗う。そうすると脂分が抜けて、手荒れになり、そこから湿疹になっていきます。
あとは「く」という行為がアトピー性皮膚炎を悪くしてしまいます。もちろん、痒いから掻くのですが、「嗜癖行動しへきこうどう」と言って癖になっている方がいます。癖を治すことはなかなか難しいです。
でも、掻くことは気持ちが良いですね。ある意味、ガス抜きになっています。それを全く止めるとストレスのガス抜きにならないということになります。よく「何かに熱中していると痒くならないです」という方がいます。自分の気持ちを他のことに集中できれば良いのでしょう。

熱傷には熱傷センター受診が良い

編集部:熱傷は皮膚科ですか、形成外科ですか。
戸倉先生:どちらの科も軽傷の熱傷は診ます。しかし重症熱傷は全身状態の管理が必要になりますので、熱傷センターがある施設が適当となります。皮膚科が熱傷センターをコントロールしているところはあるし、形成外科がやっているところもあります。究極的には熱傷は全身的な問題が生じることもあります。気道熱傷という問題も起きますので、ICUが充実していないと診ることができません。狭い範囲の熱傷なら良いですが、全身状態が低下すると救命救急になります。

どうして今こうなっているのか、納得のいく説明をしてくれるかどうか

編集部:患者さんへのアドバイスはありますか。
戸倉先生:やはり、良い医者を探して行くしかないと思います。私は遠いところから患者さんが来られると、少し身構えて丁寧な診察を行っています。例えば慢性蕁麻疹まんせいじんましんの原因は簡単には説明できませんが、少し時間をかけてお話しします。医師によって一番違うのは説明です。どうして自分はこの病気になって今に至るかということ。あとは、アトピー性皮膚炎に関しては現時点で5種類、乾癬に関しては10種類以上の薬が出ています。それを使いこなせるかです。しかも患者さんのニーズに応えて満足度を上げる必要があります。(インタビュー終了)


『国民のための名医ランキング』より名医の紹介

なぜ、『国民のための名医ランキング』なのか

『国民のための名医ランキング』は、これまでに2016年版、2018年版、2021~23年版、2024~26年版を出版しています。出版当初は「医師にランキングなんて」という批判の声もありました。しかし、どんなに遠くても日本一の医師の所に足を運ぶのか、出来る限り近くで探したいのか、その選択は一人一人違います。選択を一人一人にゆだねたいという思いで、一つの参考になればと思いランキング形式にしました。主治医を選ぶことは人生を選ぶこと、その方の人生観に直結しています。皆さまが自分の納得のいく主治医に巡り合えますよう、心から願っています。

『最新版 国民のための名医ランキング2024~2026年版』掲載の皮膚科医師をランキング順に紹介します。(ランキング部門9名、有益情報部門11人)本書には、詳しい治療実績や先生の顔写真等を掲載していますので、ご参照ください。

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