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本日の一曲 vol.174 ザ・ビートルズ カム・トゥゲザー (The Beatles: Come Together, 1969. cf. You Can't Catch Me)

ビートルズのカム・トゥげザーは1969年にリリースされた「アビー・ロード(Abbey Road)」の1曲目に収録された曲で、そのリリース直後にシングル・カットもされ、そのB面は、ジョージ・ハリスン(George Harrison)さん作曲の名曲「サムシング(Something)」でした。

ビートルズの曲は、ジョージ・ハリスンさん、リンゴ・スター(Ringo Starr or Richard Starkey)さん作曲以外は、すべてジョン・レノン(John Lennon)さんとポール・マッカートニー(Paul McCartney)さんとの共作となっていて、「Lennon=McCartney」のクレジットになっていますが、どちらが作った曲か分かっている曲もあり、この「カム・トゥゲザー」はジョン・レノンさんが作った曲です。大体、リード・ヴォーカルをとっている方が作っていると思います。

この曲のレコーディング中から、ポール・マッカートニーさんは、この曲が彼らのアイドルであるチャック・ベリー(Chuck Berry)さんの「ユー・キャント・キャッチ・ミー」からアイディアを拝借していることにすぐに気づいたそうで、この曲のテンポを落とすことを提案したそうです。

カム・トゥゲザーの歌詞は、次のようになってます。

Here come old flat top
He come grooving up slowly
He got joo joo eyeball
He one holy roller
He got hair down to his knee
...

ユー・キャント・キャッチ・ミーの2回めのAメロの2フレーズ目が、

Here come a flat-top
He was moving up with me
Then come waving goodbye
in a little old souped-up jitney
...

となっていたわけです。そして、ワン・フレーズの最後に、歌詞の次の行の頭の部分が来る、というところが同じなのです。チャック・ベリーさんは、ビートルズのアイドルだったわけで、ビートルズの音楽の核にはチャック・ベリーさんの音楽があるので、ビートルズがリスペクトという意味でそのような曲作りをしたというのは、ビートルズの音楽の血であり、肉であるということなのでしょう。

しかし、先に曲を作った方に著作権という知的財産権がありますので、案の定、アビー・ロードのリリース直後、チャック・ベリーさんの版権を持っていたビッグ・セブン・ミュージックという会社のオーナーであるレヴィ・モリスさんがジョン・レノンさんを裁判で訴えてきたわけです。

この訴訟は、1973年にジョン・レノンさんが、ビッグ・セブン・ミュージックが持っている3曲を、ジョン・レノンさんがレコーディングするという条件で、和解しました。その曲が、まさに問題となった「ユー・キャント・キャッチ・ミー」と、「ヤ・ヤ」と「エンジェル・ベイビー」でした。つまり、ジョン・レノンさんがこれらの曲をリリースすることで、レコードが売れれば、その著作権料がビッグ・セブン・ミュージックに入ってくるわけで、だいたいウィン・ウィン(win-win)の解決になるわけです。

アーティストがそのリスペクトする他人の曲をカバーしてリリースするということは、その元の曲の著作権者が潤うということなので、そのアーティスト自身と、リスペクトするアーティストと一緒に潤うことができるというハッピーな関係を築ける、というわけです。

ヤ・ヤは、1974年リリースの「心の壁、愛の橋(Walls And Bridges)」と1975年リリースの「ロックンロール(Rock'n'Roll)」に、ユー・キャント・キャッチ・ミーは同じく「ロックンロール」に収録されました。

こうして聴いてみると、「心の壁、愛の橋」の方の「ヤ・ヤ」はあまりやる気がなかったように聴こえますね。

「エンジェル・ベイビー」は、「ロックンロール」と同時期に録音されたようですが、リリースは1986年リリースの「メンローヴ・アヴェニュー(Menlove Ave.)」でした。

ただし、ジョン・レノンさんは、エンジェル・ベイビーをすぐにリリースしなかったことから、ビッグ・セヴン・ミュージック側から再度訴えられ、ジョン・レノンさん側が違約金を払ったようです。

ちなみに、「ヤ・ヤ」のオリジナルは、リー・ドージー(Lee Dorsey, 1961)さんが歌い、「エンジェル・ベイビー」のオリジナルは、ロージー・アンド・ザ・オリジナルズ(Rosie & The Originals, 1960)が歌っていました。

(by R)


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