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本日の一曲 vol.278 リスト バッハの名による幻想曲とフーガ (Franz Liszt: Fantasie und Fuge über das Thema B-A-C-H S529, 1870)

フランツ・リストさんの曲については、今回で4曲目になります。

今回の「バッハの名による幻想曲とフーガ」は、初稿は1856年、第2稿が1870年になり、演奏会や録音では第2稿が用いられることがほとんどです。また、ピアノだけではなく、オルガン版もあります。

「バッハの名による」の「バッハ」とは、もちろん、かの有名なヨハン・セバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach)さんのことですが、「バッハの名」というのは、「B」「A」「C」「H」の4つの文字のことで、これをドイツ語読みの音名に読み替えたものです。「ドレミの歌」と同じです。

日本の初等教育では、音名はイタリア語読みの「ドレミファソラシド」が使われていますが、音楽の現場ではドイツ語読みの音名が使われることがよくあります。

日本語のイタリア語読みでは、「ドレミファソラシド」
日本語では、「ハニホヘトイロハ」
英語では、「CDEFGABC」
ドイツ語では、「CDEFGAHC」
になります。そして、ドイツ語の場合、「B」はどこへ行ったかというとイタリア語読みの「シ♭」、英語の「B♭」になるわけです。日本語では、シャープは「嬰」、フラットは「変」をつけるので「変ロ」、日本語のイタリア語読みは「シシャープ」、英語の場合は「B flat」と読むわけです。ドイツ語読みの音名のどこが便利かと言いますと、「シシャープ」は単なる「B(ベー)」、「シ」は「H(ハー)」、#(シャープ)や♭(フラット)付きの音名は、たとえばドのシャープはチス(Cis)、レのフラットはデス(Des)などシャープは「is」、フラットは「es」をつけることで言うことができるのです。

そのドイツ語方式で行くと、「B」「A」「C」「H」は、「シ♭」「ラ」「ド」「シ」となるわけです。これを弾いてみると…(iPhoneのGarageBandなどで弾いてみてください)、少し不安になるような音列ですね。

リストさんは、ドレミの歌方式で、バッハの曲を作ったわけです。初版はリストさんの40代半ばの油の乗り切った時期、第2版はアラ還の時期に書かれています。まさにヴィルトゥオーゾ・タイプの曲で、リストさんのピアニストとしての面目躍如の曲だと思います。

アルフレッド・ブレンデル(Alfred Brendel)さんのピアノ演奏です。

ソ連の作曲家ドミトリ・ショスタコーヴィチ(Dmitri Shostakovich)さんは、自分の署名の音列として、ドレミのうた方式で、「D」「Es」「C」「H」、つまり「レ」「ミ♭」「ド」「シ」を使いました。ショスタコーヴィチさんの名前のドイツ語の綴りは「Dmitri Schostakowitsch」となるので、そのイニシャルは、「D.Sch」となり、「S」を「Es」に読み替えると、その音列になるというわけです。これも、実際に弾いてみると…やはりすこし不安になる音列ですね。

この署名は、たとえば交響曲第10番第3楽章に使われています。

話は戻りまして、オルガン版の方も紹介します。ヨアヒム・ダリッツ(Joachim Dalitz)さんのオルガン演奏です。

すこし先になりますが、来る8月31日、弊社のYoung Artist支援プロジェクト「塙未羽ピアノリサイタル」におきまして、塙未羽(ばんみはね)さんがこの曲を披露しますので、ぜひお越しになって演奏をお聴きになってください!

(by R)

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