本日の一曲 vol.341 ボストン ドント・ルック・バック (Boston: Don't Look Back, 1978)
かつて、ヤードバーズ(Yardbirds)出身の3人のギタリスト、エリック・クラプトン(Eric Clapton)さん、ジェフ・ベック(Jeff Beck)さん、ジミー・ペイジ(Jimmy Page)さんが「ギタリスト三羽烏(さんばがらす)」などと呼ばれ、ジミ・ヘンドリックス(Jimi Hendrix)さんやディープ・パープル(Deep Purple)のリッチー・ブラックモア(Ritchie Blackmore)さんなどとともにギタリストがもてはやされた時代が1960年代末から1970年代初頭にありました。
ほぼこの5人のギタリストのスタイルがロックにおけるエレキ・ギター(エレクトリック・ギター)の規範と言ってよかったと思います。
1970年代後半にロックのエレキ・ギターに革命を起こしたのが、エドワード・ヴァン・ヘイレン(Edward Van Halen)さんと本日ご紹介するボストンのトム・ショルツ(Tom Scholz)さんだったのではないかと思います。この2人のギター・サウンドは、現代のスタンダードになりました。簡単に言うと、ギターの音が、ギターを直にアンプにつないで出せる音ではなくなったということです。
スラッシュ(Slash)さんがエドワード・ヴァン・ヘイレンさんについて語ったインタビューをご覧ください(英語ですので翻訳アプリなどをご使用ください)。
エドワード・ヴァン・ヘイレンさんについては、ご紹介したことがありました。
本日ご紹介する「ボストン」ですが、このバンドは、トム・ショルツさんのワンマン・バンドだといってよいかと思います。トムさんの本業は、ミュージシャンであるというよりも、エンジニアであると言ったほうがよいかもしれません。トムさんは、1947年3月10日、オハイオのトレドで生まれ、マサチューセッツ工科大学(MIT)で学んだ後、ボラロイド社のエンジニアとして働いていました。音楽については、自宅にスタジオを作り、そこで「ボストン・サウンド」を追求していたのです。
もともとの演奏はすべてトム・ショルツさんがやっており、レコード会社がバンドとしての体裁を整えるためにメンバーを集めたという経緯です(ただ、さすがにボーカルだけは、ブラッド・デルプ(Brad Delp)さん抜きでは、ボストン・サウンドは仕上がらなかったのですが…)。トム・ショルツさんが創り出したギター・サウンドは、基本は、ギブソンのレスポールを使った歪んだ音だったのですが、分厚くてきめが細かく、単音のメロディーを弾くと豊かな旋律が歌われるといった感じで、まさにギタリスト冥利に尽きるサウンドでした。
本日ご紹介するのは、大ヒットしたファーストアルバム「幻想飛行(Boston, 1976)」から2年後にリリースされたセカンドアルバム「ドント・ルック・バック(Don't Look Back)」の1曲目のタイトル・チューンです。トム・シュルツさんの単音のメロディー弾きがとても印象的な曲です。
トム・シュルツさんは、デビューアルバム「幻想飛行」の後、セカンドアルバムの制作にじっくり取り組んでいたのですが、トムさんいわく、「レコード会社に急かされてリリースした」ということで、必ずしも出来栄えは本意ではなかったようであったにもかかわらず、トムさんの創り出すギターサウンドは完璧と言っていいほどの出来栄えでした。
その後、ボストンは、1986年にサード・アルバム「サード・ステージ(Third Stage)」、1994年に4枚目の「ウォーク・オン(Walk On)」、1997年のベスト盤「グレイテスト・ヒッツ(Greatest Hits)」をはさみ、2002年に5枚目の「コーポレイト・アメリカ(Corporate America)」と、数年ごとにポツポツとアルバムをリリースしていました。トム・シュルツさんは、その傍ら、会社を設立してギターのエフェクターを発明販売したり、現在では、慈善活動に力を入れているようです。
ただ、残念なことに、2007年3月9日、それまでボストンの声を支えてきたボーカルのブラッド・デルプさんが亡くなってしまい、それ以降、ボーカルはトミー・デカーロ(Tommy DeCarlo)さんが務めています。
(by R)
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