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本日の一曲 ハイドン・シリーズ 交響曲第45番 告別 (Sinfonia No.45 "Abschied", 1772)

交響曲第45番は、1772年の疾風怒濤期に作曲され、ハイドンさんの交響曲の中でとても人気のある曲で、この曲のエピソードほど、ハイドンさんのエピソードで知られているものはないと思います。

「エステルハージ候はハンガリーの片田舎の沼沢地に建てたエステルハーザ宮の壮麗なたたずまいに魅入られ、毎年、ここに滞在する期間が延長された。家族の同行が許されていなかった音楽家達にとって、それは絶望的であり、彼らは愛する楽長ハイドンに『救助』を求めたのである。ハイドンは楽員の悩みを察知し、交響曲の終楽章プレストを中断し、長いアダージョをつけた。そして演奏中、楽員は一人ずつ、譜面台に立てたローソクの灯を消して去って行き、後に二人のヴァイオリン奏者(その一人は作曲者自身)を残すという演出をして見せたのである。その真意を理解した侯爵は『よろしい、彼らが立ち去るのであれば、われわれも立ち去らなければなるまい』と言い、翌日、エステルハーザをあとにしたという。」(音楽之友社「名曲ガイド・シリーズ①交響曲㊤130頁)

交響曲第45番嬰ハ短調「告別」(Sinfonia No.45 fis moll "Abschied", Hob.I:45)
第1楽章 Allegro assai 疾風怒濤らしい4分の3拍子の短調の楽章で、当時の交響曲としては珍しい嬰ヘ短調の調性でした。
第2楽章 Adagio 「しゃっくり」のモチーフが反復されるアダージョの楽章です。ヴァイオリンには弱音器が付けられています。
第3楽章 Menuet & Trio. Allegretto 嬰ヘ長調のメヌエットとトリオです。おっとりとした雰囲気です。
第4楽章 Finale. Presto – Adagio 再び嬰ヘ短調に戻り、「騒々しい」プレストです。先のエピソードはこの後に第5楽章にしてもよかったアダージョのことです。いつものプレストで曲が終わるのかと思いきや、アダージョが始まり、一人一人とローソクを消しながら楽団員が退場していきます。最後のヴァイオリン2台による演奏は、ため息をつくように終わります。

バーゼルでのハイドン生誕300周年企画、ジョヴァンニ・アントニーニ(Giovanni Antonini)さん指揮イル・ジャルディーノ・アルモニコ(Il Giardino Armonico)による演奏です。最後の告別のところは、ローソクは消しませんが、一人一人退場していきます。

しかし、もしこの曲が演奏会で最後に演奏されたら、アンコールを要求してはいけません!最後の拍手もしないで黙って帰り道につきましょう。

石田泰尚さんがコンサートマスターを務める神奈川フィルハーモニーの演奏です。

おしまい。

追伸(2024/05/18)

宇野功芳推薦盤のブルーノ・ヴァイル(Bruno Weil)さん指揮ターフェルムジーク(Tafelmusik)の演奏です。

追伸(2024/06/14)

音楽之友社「新時代の名曲名盤500+100」での推薦盤です。ハイドン生誕300年記念企画のジョヴァンニ・アントニーニさん指揮イル・ジャルディーノ・アルモニコのCD音源です。既出のブルーノ・ヴァイル盤とプレイリストになっています。


(by R)


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