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本日の一曲 19世紀までのクラシック音楽

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連載「本日の一曲」のうち、19世紀以前のクラシック音楽をまとめました。
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本日の一曲 vol.332 ピアノ・トリオ集補遺 ハイドン ピアノ三重奏曲第40番 (Franz Joseph Haydn: Piano Trio No.40 Hob.XV:26, 1795)

フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732-1809)さんのピアノ三重奏曲第38番(Hob.XV:24)・第39番(Hob.XV:25)・第40番(Hob.XV:26)の3曲は、ハイドンさんの2回目のロンドン・ツアー(1794~1795)の最後の数週間に作曲されたもので、当時のハイドンさんの恋人だった在英のレベッカ・シュローター(Rebecca Schröter, 1751-1826)さんに献呈されたものです。 レベッカさんは、ピアニストであったヨハン・サミュエル・シュローター

本日の一曲 vol.331 ヴィオッティ ヴァイオリン協奏曲第23番 (Giovanni Battista Viotti: Violin Concerto No.23, 1792)

ジョヴァンニ・バッティスタ・ヴィオッティ(Giovanni Battista Viotti)さんは、1755年5月12日、現在のイタリアにあったサルデーニャ王国のフォンタネット・ポー(トリノの北東約40キロ)で生まれ、先日ご紹介したフリッツ・クライスラー(Fritz Kreisler)さんの「前奏曲とアレグロ(Praeludium and Allegro)」の作曲者とされていたガエターノ・プニャーニ(Gaetano Pugnani)さんの弟子になり、ヴァイオリンや指揮法などの

本日の一曲 vol.322 テンシュテットのワルキューレ第1幕 (Richard Wagner: Die Walküre Act 1, 1870 cond. Klaus Tennstedt)

「ワルキューレ」は、リヒャルト・ワグナー(Richard Wagner)さんの4部作「ニーベルングの指環(Der Ring des Nibelungen)」の第1夜の作品です。「ニーベルングの指環」については、以前ご紹介したことがありました。 この「ニーベルングの指環」のうち、第1夜「ワルキューレ」の第1幕は、「指環」の中でもドラマティックな構成になっていること、全体で約1時間であること、歌手が3人しか出てこないこと、などから、演奏会形式で取り上げられることがあり、レコード

本日の一曲 vol.320 ヴィヴァルディ 6つのヴァイオリン協奏曲 作品12 第1番 (Antonio Vivaldi: Sei concerti Op.12 No.1, 1729)

ヴァイオリン学習者が学習する2曲目のヴィヴァルディは、このト短調(g moll)の協奏曲です。これは1729年に出版された「6つの協奏曲集」の中の1曲ですが、この協奏曲集の構成は以下のとおりです。 協奏曲第1番ト短調(RV317) 協奏曲第2番ニ短調(RV244) 協奏曲第3番ニ長調(RV124) 協奏曲第4番ハ長調(RV173) 協奏曲第5番変ロ長調(RV379) 協奏曲第6番変ロ長調(RV361) スズキメソードでは第5巻に収録されていますサラ・チャン(Sarah C

本日の一曲 vol.317 ヴィヴァルディ オーボエ協奏曲ニ短調 (Antonio Vivaldi: Oboe Concerto RV454, 1723)

本日ご紹介するオーボエ協奏曲は、アントニオ・ヴィヴァルディさんの1725年に出版されたヴァイオリン曲集「和声と創意の試み( Il cimento dell'armonia e dell'inventione)」の中に収録された協奏曲第9番ニ短調をオーボエに置き換えたものです。 「和声と創意の試み」はヴィヴァルディさんの作品の中でも最も有名な「四季(Four Seasons)」が収録されているもので、構成は以下のとおりです。 協奏曲第1番ホ長調(RV269)「四季」「春」

本日の一曲 vol.315 ヴィヴァルディ 合奏協奏曲集 調和の霊感 作品3 第6番 イ短調 (Antonio Vivaldi: Concerti L'estro ar,onico" Op.3-6, 1711)

アントニオ・ヴィヴァルディさんの合奏協奏曲集「調和の霊感」作品番号3は、イタリアにあったトスカーナ大公国のメディチ家コジモ3世大公の長子のフェルディナンド・デ・メディチ大公子に献呈されたものです。 「調和の霊感」は1番から12番までの協奏曲からなっており、全部を演奏すると80分くらいになる上、「協奏曲」と名付けられていますが、様々なスタイルの協奏曲があるため、通しの録音ということになると、アンサンブル団体によるものが主流になります。 以下の協奏曲から構成されています。 第

本日の一曲 vol.314 クライバーのカルメン (Georges Bizet: Carmen, 1875. cond. Carlos Kleiber, 1978)

1978年12月にウィーン国立歌劇場で上演されたビゼー作曲の「カルメン」です。20世紀に残された最高のオペラ遺産です。約2時間34分の長丁場ですが、実際のオペラを鑑賞するように幕間に休憩を入れてご覧になるとちょうどよいかと思います。 序曲からして「闘牛士のテーマ」から始まりますので、どなたでもご存知のメロディーから始まり、難しい曲は一切なく、親しみやすく、かつ、ドラマチックな進行で最後まで突き進みます。 ざっくりとしたあらすじは、盗賊の魔性の女カルメンに振り回されてしまっ

本日の一曲 vol.278 リスト バッハの名による幻想曲とフーガ (Franz Liszt: Fantasie und Fuge über das Thema B-A-C-H S529, 1870)

フランツ・リストさんの曲については、今回で4曲目になります。 今回の「バッハの名による幻想曲とフーガ」は、初稿は1856年、第2稿が1870年になり、演奏会や録音では第2稿が用いられることがほとんどです。また、ピアノだけではなく、オルガン版もあります。 「バッハの名による」の「バッハ」とは、もちろん、かの有名なヨハン・セバスティアン・バッハ(Johann Sebastian Bach)さんのことですが、「バッハの名」というのは、「B」「A」「C」「H」の4つの文字のことで

本日の一曲 vol.255 バッハ フーガの技法 (Johann Sebastian Bach: Die Kunst der Fuge d moll BWV1080, 1751)

バッハのフーガの技法は、バッハの晩年に作曲が開始され、楽器の指定もなく書き進められて、バッハの死により未完となってしまった作品ですが、「クラシック音楽の最高傑作」とも呼ばれたりします。 「フーガの技法」とは曲名であり、テクニックなどの名前ではありません。CDのトラックの表記にも「Contrapunctus(コントラプンクトゥス、対位)」と聞き慣れない言葉が書かれていて、とっつきにくい感じがします。 20世紀のバッハ音楽の最大の演奏者グレン・グールド(Glenn Gould

本日の一曲 vol.246 シューマン ピアノ・ソナタ第1番嬰ヘ短調 (Robert Schumann: Piano Sonate No.1 Fis moll Op.11, 1835)

ロベルト・シューマンさんは、1810年6月8日、ドイツ・ザクセン州のツヴィッカウの裕福な家庭に生まれ、10代まで文学や音楽に親しむ生活を送りましたが、1828年の18歳のとき、親の希望でライプツィヒ法科大学に進学しました。しかし、シューマンさん自身が法律よりも音楽の道に進みたかったこと、ピアノ教師フリードリヒ・ヴィーク(Friedrich Wieck)先生との出会い、ベートーヴェン交響曲全曲演奏会、バッハのカンタータ、ロッシーニのオペラなどに触れ、さらに、ニコロ・パガニーニ(

本日の一曲 vol.241 リスト 死の舞踏 (Franz Liszt: Totentanz, 1849)

フランツ・リストさんの「死の舞踏」は、ピアノとオーケストラのための作品であり、2曲のピアノ協奏曲と並んで演奏会で取り上げられる曲です。 作曲のきっかけは、1838年から翌1839年にイタリアを旅行した際、ピサのカンボ・サント墓地にある壁画「死の勝利」を見て、着想を得たそうです。 リストさんが見た壁画「死の勝利」とは、前述のページにある14世紀に描かれたブオナミコ・バッファルマッコ(Buonamico Buffalmacco)さんのフレスコ画「死の勝利(Trinfo del

本日の一曲 vol.237 フルトヴェングラー ブルックナー 交響曲第8番 (Anton Bruckner: Symphony No.8 c moll, 1892 performed by Furtwängler & BPO)

アントン・ブルックナーさんは、1824年9月4日、オーストリア・リンツ近郊のアンスフェルデンで生まれ(乙女座)、1896年10月11日、ウィーンで72歳の生涯を終えました。現代で親しまれているのは、全部で11曲の交響曲と大規模な合唱曲数曲程度ですが、クラシック音楽のファンにとって、ブルックナーの作品はとても大きな位置を締めていると思います。 現代のブルックナーの交響曲の演奏は、遅いテンポで悠然と演奏するのがスタンダードになっていると思いますが、本日ご紹介するウィルヘルム・フ

本日の一曲 vol.230 フィールド ノクターン集 (John Field: Nocturnes, 19C)

ジョン・フィールドは、1782年7月26日にアイルランド・ダブリンで生まれ、1837年1月23日に54歳でモスクワで亡くなったアイルランドの作曲家・ピアニストです。ショパンで有名になった「ノクターン(夜想曲)」の創始者として広く知られています。 ピアニストとしては、ソナチネで有名なムツィオ・クレメンティ(Muzio Clementi)の弟子であり、クレメンティさんがピアノの製造業をしていたことから、クレメンティのピアノのセールスマンだったという話もあります。 フィールドさ

本日の一曲 vol.225 ショルティ モーツァルト 交響曲第41番 ジュピター (Mozart: Symphony No.41 "Jupiter" K.551, performed by Georg Solti & Chamber Orchestra of Europe)

モーツァルトのジュピターは、モーツァルトの最後の交響曲で、番号は41番、ケッヘル番号は551、1788年、モーツァルト32歳、死の3年前の作品です。 ジュピターは、ほぼ同時期に作曲された後期3大交響曲と言われる39番 K.543、40番 K.550、41番の最後を飾る交響曲です。宇野功芳さんによれば、39番は「玲瓏」、40番は「哀愁」、41番は「壮麗」という言葉で表現されています。 モーツァルトの時期による作風は、だいたいオペラと同期していると考えてよいかと思います。モー