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本日の一曲 19世紀までのクラシック音楽

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連載「本日の一曲」のうち、19世紀以前のクラシック音楽をまとめました。
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本日の一曲 vol.255 バッハ フーガの技法 (Johann Sebastian Bach: Die Kunst der Fuge d moll BWV1080, 1751)

バッハのフーガの技法は、バッハの晩年に作曲が開始され、楽器の指定もなく書き進められて、バッハの死により未完となってしまった作品ですが、「クラシック音楽の最高傑作」とも呼ばれたりします。 「フーガの技法」とは曲名であり、テクニックなどの名前ではありません。CDのトラックの表記にも「Contrapunctus(コントラプンクトゥス、対位)」と聞き慣れない言葉が書かれていて、とっつきにくい感じがします。 20世紀のバッハ音楽の最大の演奏者グレン・グールド(Glenn Gould

本日の一曲 vol.246 シューマン ピアノ・ソナタ第1番嬰ヘ短調 (Robert Schumann: Piano Sonate No.1 Fis moll Op.11, 1835)

ロベルト・シューマンさんは、1810年6月8日、ドイツ・ザクセン州のツヴィッカウの裕福な家庭に生まれ、10代まで文学や音楽に親しむ生活を送りましたが、1828年の18歳のとき、親の希望でライプツィヒ法科大学に進学しました。しかし、シューマンさん自身が法律よりも音楽の道に進みたかったこと、ピアノ教師フリードリヒ・ヴィーク(Friedrich Wieck)先生との出会い、ベートーヴェン交響曲全曲演奏会、バッハのカンタータ、ロッシーニのオペラなどに触れ、さらに、ニコロ・パガニーニ(

本日の一曲 vol.241 リスト 死の舞踏 (Franz Liszt: Totentanz, 1849)

フランツ・リストさんの「死の舞踏」は、ピアノとオーケストラのための作品であり、2曲のピアノ協奏曲と並んで演奏会で取り上げられる曲です。 作曲のきっかけは、1838年から翌1839年にイタリアを旅行した際、ピサのカンボ・サント墓地にある壁画「死の勝利」を見て、着想を得たそうです。 リストさんが見た壁画「死の勝利」とは、前述のページにある14世紀に描かれたブオナミコ・バッファルマッコ(Buonamico Buffalmacco)さんのフレスコ画「死の勝利(Trinfo del

本日の一曲 vol.237 フルトヴェングラー ブルックナー 交響曲第8番 (Anton Bruckner: Symphony No.8 c moll, 1892 performed by Furtwängler & BPO)

アントン・ブルックナーさんは、1824年9月4日、オーストリア・リンツ近郊のアンスフェルデンで生まれ(乙女座)、1896年10月11日、ウィーンで72歳の生涯を終えました。現代で親しまれているのは、全部で11曲の交響曲と大規模な合唱曲数曲程度ですが、クラシック音楽のファンにとって、ブルックナーの作品はとても大きな位置を締めていると思います。 現代のブルックナーの交響曲の演奏は、遅いテンポで悠然と演奏するのがスタンダードになっていると思いますが、本日ご紹介するウィルヘルム・フ

本日の一曲 vol.230 フィールド ノクターン集 (John Field: Nocturnes, 19C)

ジョン・フィールドは、1782年7月26日にアイルランド・ダブリンで生まれ、1837年1月23日に54歳でモスクワで亡くなったアイルランドの作曲家・ピアニストです。ショパンで有名になった「ノクターン(夜想曲)」の創始者として広く知られています。 ピアニストとしては、ソナチネで有名なムツィオ・クレメンティ(Muzio Clementi)の弟子であり、クレメンティさんがピアノの製造業をしていたことから、クレメンティのピアノのセールスマンだったという話もあります。 フィールドさ

本日の一曲 vol.225 ショルティ モーツァルト 交響曲第41番 ジュピター (Mozart: Symphony No.41 "Jupiter" K.551, performed by Georg Solti & Chamber Orchestra of Europe)

モーツァルトのジュピターは、モーツァルトの最後の交響曲で、番号は41番、ケッヘル番号は551、1788年、モーツァルト32歳、死の3年前の作品です。 ジュピターは、ほぼ同時期に作曲された後期3大交響曲と言われる39番 K.543、40番 K.550、41番の最後を飾る交響曲です。宇野功芳さんによれば、39番は「玲瓏」、40番は「哀愁」、41番は「壮麗」という言葉で表現されています。 モーツァルトの時期による作風は、だいたいオペラと同期していると考えてよいかと思います。モー

本日の一曲 vol.222 クレンペラー メンデルスゾーン スコットランド (Felix Mendelssohn: Symphony No.3 "Scottish", 1842 performed by Otto Klemperer & PO)

フェリックス・メンデルスゾーンさんの交響曲は、全部で5曲あります。 第1番 ハ短調 Op.11 1824年作曲 第2番 「讃歌」(シンフォニアと10曲)Op.52 1840年作曲・初演 第3番 イ短調「スコットランド」Op.56 1831、1842年作曲 1842年初演 第4番 イ長調「イタリア」Op.90 1831~1833年作曲 1833年初演 第5番 ニ短調「宗教改革」Op.107 1830年作曲 1832年初演 作曲順としては、第1番→第5番→第4番→第2

本日の一曲 vol.218 スーク 4つの小品 (Joseph Suk: 4 Pieces for Violin and Piano, 1900)

作曲者のヨセフ・スク(Josef Suk)さんは、1874年1月4日にボヘミア(現在のチェコ共和国)に生まれ、20世紀前半まで活躍した作曲家・ヴァイオリニストです。そのお孫さんもヴァイオリニストのヨゼフ・スーク(Josef Suk)さんで、同じ名前ですが、Wikipediaの日本語表記は、前記のとおり、すこし違っています。 ヨセフ・スクさんは、ドヴォルザークさんのお弟子さんで、しかも、1898年、ドヴォルザークさんの娘さんであるオティーリエさんと結婚しましたので、ドヴォルザ

本日の一曲 vol.212 リヒャルト・シュトラウス ツァラトゥストラはこう言った (Richard Strauss: Also sprach Zarathustra, 1896)

使用例リヒャルト・シュトラウスの「ツァラトゥストラはこう言った」は、ともかく冒頭部分ばかりが有名です。ご存知、スタンリー・キューブリック監督、1968年公開の「2001年宇宙の旅」の冒頭などで有名な使用例がありました。 また、日本の戦前の「日本ニュース」で使われた例もありました。 ニーチェこの「ツァラトゥストラはこう言った」は、同名の哲学者フリードリヒ・ニーチェの難解な哲学書をシュトラウスさんが読んで得たインスピレーションから作曲したもので、その哲学書を具体化した音楽で

本日の一曲 vol.204 リスト 灰色の雲 (Franz Liszt: Nuages gris, 1881)

フランツ・リストは、1811年10月22日、ハンガリーで生まれ、1822年に11歳でピアニスト・デビューを果たした後、ピアニスト、作曲家として活躍し、1886年7月31日にドイツのバイロイトで亡くなりました。リストさんは、1837年にマリー・タグー伯爵夫人(Marie d'Agoult)との間に娘コジマ(Cosima)を儲けますが、コジマさんは、1870年に再婚して、リストさんより1歳半年下のリヒャルト・ワーグナー(Richard Wagner)の2番めの妻となり、1883年

本日の一曲 vol.201 ホロヴィッツ チャイコフスキー ピアノ協奏曲 (Peter Tchaikovsky: Piano Concerto, 1875. by Vladimir Horowitz & Arturo Toscanini, 1943)

チャイコフスキーのピアノ協奏曲は、もともと大ピアニストで、チャイコフスキーさんが敬愛していたニコライ・ルビンシテイン(Nikolai Rubinshtein)さんに献呈するべく作曲されていたのですが、思いの外、草稿を知ったニコライさんから最大限に貶されたため、結局、ハンス・フォン・ビューロー(Hans von Bülow)さんに献呈された曲です。第1楽章の壮大な冒頭部分は特に有名な部分かと思います。ピアニストの重要なレパートリーの一曲です。 本日ご紹介するのは、ウラディミー

本日の一曲 vol.199 ルービンシュタイン ベートーヴェン 皇帝 (Ludwig van Beethoven: Piano Concerto No.5 "Emperor" by Arthur Rubinstein)

”アーサー”・ルービンシュタインさんは、1887年1月28日にポーランドで生まれ、ピアニストして神童の誉れ高く、1976年に引退するまで80年以上のキャリアを誇り、1982年12月20日にジュネーヴで95歳で亡くなり、その遺灰はエルサレムに葬られました。体格は小さかったようですが、その演奏する姿は、大風格を備え、まさに大人(たいじん)でした。 1947年公開のアメリカ映画「カーネギー・ホール(Carnegie Hall)」では当時の演奏する姿が収められています。ここではフレ

本日の一曲 vol.197 ヴィヴァルディ 夏の嵐 再 (Vivaldi: Le quattro stagioni, L'Estate III, 1718-1720)

弊社の「本日の一曲」で最初に取り上げたのが、ヴィヴァルディの四季から夏の第3楽章「夏の嵐」でした。 ヴィヴァルディの四季は、ヴァイオリニストにとって重要なレパートリーであり、たくさんのヴァイオリニストが弾いています。 そこで、「夏の嵐」について、どの演奏が適切なのか、皆さんの好みなのか、アンケートをとってみたいと思います。以下、サンプルの演奏の動画をピックアップしてみます。 まず、「本日の一曲」で最初に取り上げた樫本大進さんの演奏。 アンネ・ゾフィー・ムターさんの演奏

本日の一曲 vol.187 エリー・ネイ シューベルト さすらい人幻想曲 (Franz Schubert: Wanderer Fantasy, 1822. Performed by Elly Ney)

シューベルトの「さすらい人幻想曲」は、自身の歌曲「さすらい人」からモチーフが引用されているため、そのような題名で呼ばれる曲で、有名な未完成交響曲を作曲しているときに作曲された曲ですが、シューベルトさん自身が作曲したにもかかわらず、ご自身でうまく弾けなかったという逸話を残す曲です。4楽章からなる曲ですが、楽章間は切れ目なく演奏されます。 さて、演奏しているエリー・ネイさんは、1882年に生まれ、1968年に亡くなったドイツのピアニストです。エリーさんは、ピアニストとしてデビュ